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【空気圧/油圧】 【直線運動の要素】

シリンダの本体とロッドの固定方法の種類と特徴【エアーと油圧とロボのアクチュエータ取付金具】

2023年12月31日

 

今回は「シリンダの本体とロッドの固定方法」についての記事です。

設備関係でシリンダと言えば「エアシリンダ」「油圧シリンダ」「ロボシリンダ(エレシリンダ)」などがありますね。そもそもシリンダは直線運動をするアクチュエータのことですが、「ただ直線的に動いているだけ」って思われがちですね。とは言え、それは正しい設計、正しい組立が出来てこその話しな訳で、、、、そこで今回は原点回帰してシリンダの固定方法についてまとめておこうと思います。

 

シリンダの本体とロッドの固定方法の種類と特徴

シリンダ本体の固定方法

エアシリンダや油圧シリンダやロボシリンダ(エレシリンダ)などの直線運動をするアクチュエータ本体の固定方法について、代表的な方法を紹介します。

 

代表的なシリンダ本体の固定方法

  • フート形
  • ロッド側フランジ形
  • ヘッド側フランジ形
  • クレビス形(アイ形)
  • トラニオン形

 

出典:SMC 空気圧技術 シリンダの取付け金具

エアシリンダの固定方法一覧

 

特徴をざっくりまとめておきます

 

フート形の特徴

フート形の特徴

  • 取付面と負荷(ロッド)が平行になる場合に適している
  • ロングストロークシリンダを固定する場合に適している
  • ボルトにせん断力がかかるリスクあります
  • 2個のフートの取付面は一致させて組付ける必要あります

 

出典: 甲南電機株式会社  エアシリンダ総合技術資料

フート形の取付け方法

 

フート形と呼ばれる固定方法はL形の取付金具を使用して固定する方法です。

フート形は取付面と負荷(ロッド)が平行になる場合に適している方法ですが、フートの固定ボルトにせん断力がかかる可能性があるので高負荷で使用する場合や振動で固定ボルトが緩みやすい場合などは考慮する必要があります。

せん断の対策としてはフートをピン止めする、フートをブロック当て止めにする、などがあります。シリンダメーカーのオプション品のフートにはピン穴が開いているタイプもあるので活用できます。

組付けるポイントとしては、L形の取付金具を2個使用するため、定盤や実際に取り付ける面に密着させてお互いの取付面を一致させてからシリンダに取付固定することです。もし、取付面がねじれた状態でシリンダを部品に固定するとシリンダ本体にねじれが発生し「動きが悪い」と言ったトラブルが発生します。

 

ロッド側フランジ形の特徴

ロッド側フランジ形の特徴

  • 取付面と負荷(ロッド)が直角になる場合に適している
  • 上下方向(吊り上げ)や水平方向など幅広く使用可能
  • 取付方法によってはボルトに張力がかる
  • フランジの裏面を部品に固定する方法が望ましい

 

出典: 甲南電機株式会社  エアシリンダ総合技術資料

フランジ形の取付け方法

 

フランジは角形や丸形の形状で相手部品と固定するための部品です。このフランジをシリンダ本体のロッド側に取付け相手部品に固定する方法がロッドフランジ形です。

この方法の一番の特徴は負荷を吊り上げる、引っ張る、動作に適していることですが、注意点としてフランジの表面と裏面のどちらを部品に取り付けるのか?によって耐えられる負荷が違うことです。

フランジの表面を部品に取り付けた場合、負荷によってボルトに張力が発生するので高負荷の場合はボルトが破断する可能性があります。その逆に、フランジの裏面を部品に取り付けた場合は、負荷をフランジの面で受けることになるのでボルトに張力が発生しません。

 

ヘッド側フランジ形の特徴

ヘッド側フランジ形の特徴

  • 上下方向(押上動作)に適している
  • 取付面と負荷(ロッド)が直角になる場合に適している
  • 座屈に弱いのでショートストロークに適している
  • ボルトに張力がかからないので高負荷に向いている

 

出典: 甲南電機株式会社  エアシリンダ総合技術資料

フランジ形の取付け方法

 

ヘッドフランジはシリンダ本体のヘッド側(反ロッド側)にフランジを取付ける方法です。

この取付方法は座屈荷重が小さくなるため、座屈に弱い欠点があります。そのため、ストローク量が長くなるほど不利になります。ショートストロークのシリンダに採用するのが無難ですが、詳しくはカタログの機器選定一覧を参照するか計算によって検討する必要があります。

また、ヘッド側フランジ形はボルトに張力がかからない取付方式となるので、負荷をフランジ面で受けることになり座屈を考慮すれば高負荷で使用可能です。

 

補足情報

  • 座屈とは、シリンダの出力に対してシリンダ本体がこらえきれづに曲がること
  • ショートストロークとは、シリンダの直径よりもストローク量が少ないタイプ
  • スクエアストロークとは、シリンダの直径とストローク量が同じタイプ
  • ロングストロークとは、シリンダの直径よりもストローク量が多いタイプ

 

クレビス形(アイ形)

クレビス形(アイ形)

  • 揺動に適している
  • 取付金具の揺動方向以外の調芯機能はない
  • 組付け時に可動部の耐摩耗を考慮する

 

出典: 甲南電機株式会社  エアシリンダ総合技術資料

クレビス形の取付け方法

 

クレビス形(アイ形)は、軸を取り付けるための穴が開いている金具をシリンダのヘッド側に取付け、また相手部品に軸を固定する穴付き部品を取り付け、お互いを軸で連結する方式です。

クレビス形のメリットは揺動に適していることですが、一方で揺動方向以外の芯だしが必要であったり、可動部である軸にブッシュ(軸受け)やグリス潤滑などの摩擦対策が必要になります。

また、揺動による本体の可動範囲(干渉)に注意が必要です。

 

補足情報

  • 揺動とは、動作中に円弧運動や角度変化が発生する動きのことです。

 

トラニオン形の特徴

トラニオン形の特徴

  • 揺動に適している
  • ロングストロークに適している
  • 揺動方向以外に調芯機能はない
  • 軸と受けの金具は摩擦対策必要

 

出典: 甲南電機株式会社  エアシリンダ総合技術資料

トラニオン形の取付け方法

 

トラニオンはシリンダ本体から可動するためのピンが飛び出している形状で、相手部品と連結されます。軸にはブッシュ(軸受け)やグリス潤滑などの摩擦対策が必要になります。トラニオンの位置はシリンダ本体のヘッド側、中間、ロッド側など様々あり、中間が一般的によく見かけるタイプです。

この方法の一番の特徴は揺動に適しているということですが、クレビス形と違い軸とロッド先端の位置の違いから本体の振れ量を抑えることができます。また、ロングストロークの場合は部品精度や組付け精度によって芯のずれ量が多くなりがちですが、揺動の範囲内で芯ずれを吸収する効果もあります。

逆に注意したいこともあります。1つ目は揺動方向以外の芯ずれには調芯機能がないので芯だしを行う必要があります。2つ目は軸と受け金具には摩擦が発生するので、ブッシュ(軸受け)であったりグリス潤滑などの対策が必要です。

 

ロッド先端の固定方法

では次に、シリンダのロッド先端の固定方法について市販されている代表的な部品を紹介します。

 

ロッド先端の固定方法

  • ナックルジョイント
  • フローティングジョイント
  • ロッドエンド(ピロボール)

 

ロッド先端は、横荷重や偏心荷重によってシリンダ本体のロッド側のシールやブッシュが摩耗して早期にエア漏れや動作不良を引き起こす可能性があります。

そのため、組付け時の芯出し作業はもちろんのこと、先端に芯ずれ吸収機能を持った先端金具を採用するのが一般的です。

 

ナックルジョイント

ナックルジョイントはナックル側(凸側)とクレビス側(凹側)の2種類の部品を軸で連結する構成になっています。

組合せ部分のナックル側(凸側)はマイナス公差でクレビス側(凹側)はプラス公差となっているので、組合わせた時の軸方向の遊び(ガタ)はおおよそ1mm以下です。反軸方向には遊びはほぼないので、芯ずれの吸収は期待できません。ただ、角度のズレに関しては可動方向に限って吸収することは可能です。

 

出典:SMC フート金具、フランジ金具 1山ナックルジョイント 2山ナックルジョイント
SMCの取付け金具カタログ

 

フローティングジョイント

フローティングジョイントと呼ばれる部品には種類があります。*メーカーによって呼び名に違いがあります。

  • 偏芯を吸収するタイプ
  • 偏芯と偏角を吸収するタイプ

 

出典:SMC 簡易ジョイント

SMCの簡易ジョイント

 

偏芯を吸収するタイプは形状違いの種類があり「簡易ジョイント」や「フランジ型」などがありますが、この部品は2種類の金具で構成されていて、組み合わさる部分には遊びがあるので偏芯吸収ができます。許容偏芯量(芯ずれ)はおおよそ±1mm~±2.0mm程度で、偏角の吸収はできません。

 

出典:SMC フローティングジョイント JCシリーズ

 

SMCのフローティングジョイント

 

偏芯と偏角を吸収するタイプが一般的にフローティングジョイントを指していることが多いです。特徴は、ロッドを中心としてフレキシブルに可動するため偏角に対応、さらにその部分には遊びがあるので偏芯に対応しています。許容偏芯量はおおよそ0.5mm~2.0mm、許容偏角±5度以下程度です。

 

 

ロッドエンド(ピロボール)

ロッドエンドは通称ピロと呼ばれる球面すべり軸受けを採用しており、偏角の吸収に特化した部品です。

許容できる角度はおおよそ「13°~30°」であるので、揺動動作や動作させたいユニットとシリンダがオフセットした配置などに適しています。

 

出典:SMC ロッドエンド(ピストンロッド先端金具)

SMCのロッドエンド

 

ポイントまとめ

シリンダの本体の固定方法、ロッド先端の固定方法、にはいろいろな種類があります。

設計段階で負荷の大きさ、取付けスペース、動作方式、メンテナンス性、など様々な条件を考慮して決定されるものなので、現場側の人がシリンダの固定について理解が浅い事があります。

組付けるだけならそれでも良いのかもしれませんが、トラブルが発生したときの対応や現場で改善するときには役立つ知識です。うる覚えでもいいので覚えておきましょう。

 

参考

シリンダの取付面の平面度が悪いと動作不良を起こします、下記の記事が参考になります。

要チェック
ガイド付きシリンダの動作不良
ガイド付きエアシリンダが動かない原因【シリンダブラケットの歪み】

続きを見る

 

*フート形の購入はこちらから

 

*ロッド側フランジ形の購入はこちらから

 

*ヘッド側フランジ形の購入はこちらから

 

* クレビス形(アイ形)の購入はこちらから

 

*トラニオン形の購入はこちらから

 

*ナックルジョイントの購入はこちらから

 

*ロッドエンド(ピロボール)の購入はこちらから

 

関連記事:【直線運動の要素】

以上です。

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