今回は「エアシリンダの伸び側の速度制御ができない原因」についての記事です。
エアシリンダは速度を調整して使用するのが基本ですが、時として速度調整ができないトラブルに遭遇するときがあります。その中でも今回は「伸び側の速度」についてのお話です。
記事の目次
エアシリンダの伸び側の速度制御ができない原因
速度制御ができない
通常エアシリンダはスピードコントローラー(速度制御弁)によって、エアーの流量調整をおこない動作速度を決定しています。速度は使用される状況/条件によって設定されるのですが、「速度調整ができない」トラブルが起きることがあります。
出典:SMC 標準形エアシリンダ(角形カバー) カタログ
以前私が経験した速度調整ができない状況は、
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長期間使用しているエアシリンダ
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伸び側が顕著に速度調整できない(速い)
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シリンダが縮む(戻り)動作の時にロッドからエアが漏れている
このような状況でした。
伸び側の速度制御ができない原因
今回の場合は、ロッドからエアーが漏れていることが伸び側の速度制御できない原因です。
エアシリンダのエア漏れ
エアシリンダの速度制御はメーターアウト制御が基本であるので、速度調整ができないと言うことは「エアーの排気側」に問題があることになります。
排気側にどのような問題があるか考えてみますと、
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エアーの流量が制限できない・・・スピードコントローラー(速度制御弁)が壊れている
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背圧がかからない・・・エアー(圧力)が抜けている
この2点が思いつきます。どちらもありえるのですが、今回のポイントは「伸び側が顕著に速度調整できない」と「シリンダのロッドからエアーが漏れている」です。
ロッドからエアーが漏れているのは決定的ですが、エアー漏れが感じられなくても、伸び側だけ速度調整ができない場合にはロッドのエアー漏れが疑わしくなります。
なぜロッドからエアーが漏れると速度制御できないのか?
なぜ速度制御できないのか?
それは、いくらスピードコントローラーの流量を絞ってもロッドからエアーが漏れているので背圧が上がらない為です。
エアシリンダの背圧
これは縮み側(戻り側)にも影響がありますが、伸び側ほどではありません。
縮み(戻り)の場合はロッド側からエアーを供給しますが、そのエアーが漏れ続けてもエアーは供給され続けるので、新品の時に比べれば速度も出力も低下していますが伸び側ほどの傾向が出ません。ですが、ロッドからのエアー漏れは縮み動作の時に顕著になります。
エアーが漏れたシリンダはどうすればいいのか?
エアーが漏れたシリンダは寿命なので「交換」か「オーバーホール」が必要になります。自然に治ることはありません。
もし早急に対応できない場合にはシリンダにグリスを注入することで延命することができる場合があります。あくまでも延命なので、交換かオーバーホールは必要ですからどちらかの対応が必要となります。
参考
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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エアシリンダのエアー漏れは寿命【グリーススプレーで延命する】
続きを見る
ポイントまとめ
それでは、伸び側の速度制御ができない原因について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- ロッドからエアーが漏れていると速度制御できなくなる
- シリンダはエアーが漏れたら交換です
以上2つのポイントです。
エアーが漏れていれば問題解決の大きなヒントとなりますが、なかなか原因がつかめない場合には「空気の圧縮性」を念頭において考えると良いと思います。圧縮性について理解ができていれば「なぜそうなるのか?」原因を突き止められると思います。
参考
エアシリンダの速度制御については下記の記事で解説しています。ご覧ください。
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エアシリンダの速度制御はメーターアウトが基本【圧縮性の制御方法】
続きを見る
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メーターイン制御とメータアウト制御の調整方法【シリンダの飛び出し対策】
続きを見る
関連記事:【空気圧/油圧】
以上です。