今回は「プランマブロックの特徴とベアリングの組付け取外しの方法」についての記事です。
先日初めてプランマブロックと呼ばれる軸受け取り扱いました。初めは見た目がピローブロックに似ているので、ピローブロックだと思っていたのですが、実際は全然違いました。
例えば、軸受箱が二分割であったり、軸受けがテーパー穴になっていたり、溝ナットが使用されていたり、、、、などなど。初めて尽くしでした。
そこで今回の記事では、プランマブロックについて知っておくべき情報をまとめておこうと思います。
記事の目次
プランマブロックの特徴とベアリングの組付け取外しの方法
プランマブロックとピローブロック
プラマンブロックとは、回転しながら軸の調心と荷重の負荷ができる軸受のことです。「JIS B 1551」で規格化されています。
見た目(外観)がピローブロックと類似しているので見間違えることがあります。
出典:jtekt Koyoプランマブロック カタログ
出典:FYH株式会社 総合カタログ ピローブロック 構造
プランマブロックとピローブロックの見分け方は2つあります。
1つ目は、ピローブロックは軸受箱が一体形になっているが、プランマブロックは軸受箱が上下に二分割になっている、または、左右に二分割になっています。
2つ目は、ピローブロックの多くのタイプはグリスが密封されたシールタイプの転がり軸受け(ベアリング)が軸受箱に入っていますが(例外もあるようです)、プランマブロックは潤滑剤を給油して使用する開放形の転がり軸受けが使用されており、別途オイルシール、または、ラビリンスシールが取り付けられています。
参考
* ピローブロックについてはこちらの記事でまとめています
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ピローブロックとグリース給油の注意【転がり軸受ユニット】
続きを見る
プランマブロックの特徴
プランマブロックの特徴
- 軸の調心ができる
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負荷容量が大きい
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軸の熱膨張が吸収できる
- 軸受箱の材質に種類がある
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軸受け(ベアリング)、オイルシールのみの交換が可能
ピローブロックと同様に、調心性があるので軸の偏心やたわみを吸収することができ、ピローブロックよりも負荷容量が大きいです。
プランマブロックは一つの軸に2個使用しますが、片側を固定側、もう一方を自由側(半固定側)とし、固定側のみ軸受箱内に位置決め輪を入れます。その目的は、固定側の軸受箱内で転がり軸受けがスラスト方向に遊ばないようにし、自由側で転がり軸受けがスラスト方向に許容できるようにするためです。その結果、軸が熱膨張したときに自由側に伸びることで軸と軸受けのストレスを緩和させることが出来ます。偏心やたわみの吸収の役目も兼ねています。
軸受箱の材質は、ねずみ鋳鉄(FC材)、球状黒鉛鋳鉄(FCD材)、炭素鋼鋳鋼(SC材)の3種類があります。
軸受箱は2分割なので、部品交換するときに軸受箱と位置決め輪は再使用し、軸受け(ベアリング)とオイルシールまたはラビリンスシールのみの交換ができます。
参考
* ラビリンスシールについてはこちらの記事で紹介しています
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ラビリンスシールの構造と特徴【迷路の流路で圧損させて漏れを防ぐ】
続きを見る
軸受けの組付け方
プランマブロックの軸受けはユニットの状態で軸に組付けることもできますが、新品購入時のユニットの状態では部品の組付け方向が間違っていることがあるので、一度バラシて一つ一つの部品を組付けてた方が良いです。
転がり軸受けのユニット
軸受箱の中に入っている転がり軸受けのユニット
組付けのポイントをまとめておきます
- グリスを詰める
- アダプタと軸受けのはめ合いはテーパ穴
- アダプタと溝ナットは歯付き座金と合わせる
- 溝ナットの向きは面取り側が歯付き座金側
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溝ナットを締付けたら座金の歯を折り曲げてロックする
組付けのポイント
それぞれのポイントを解説していきます。
1点目「グリスを詰める」について。
プランマブロックの転がり軸受けは開放形なので、組付ける前にあらかじめ作業者がグリス封入する必要があります。手のひらを使って念入りに押し込みます。詳しくは下記の記事をご覧ください。
2点目「アダプタと軸受けのはめ合いはテーパ穴」について。
アダプタと軸受けのはめ合い部分はお互いにテーパ穴になっているので、組付けには向きがあります。テーパの向きが正しければアダプタのねじ部分が軸受けから飛び出します。
テーパ穴の組合せ
3点目「アダプタと溝ナットは歯付き座金と合わせる」について
歯付き座金は歯が若干折れている方をナット側にして内側にある歯をアダプタの溝に合わせます。歯の折れている向きを軸受け側にすると回転したときに軸受けに干渉します。
次に、歯付き座金と溝ナットの位置ですが、ナットを締付けたときに座金の歯とナットの溝を合わせる必要があります。ナットを締めたときに歯とのズレがあれば、さらに締めこむ、または、少し緩める、によって歯と合わせます。
歯付き座金の歯の位置
座金とアダプタの位置
座金とナットの位置
4点目「溝ナットの向きは面取り側が歯付き座金側」について
溝ナットの側面の形状は面取りしてある側と面取りしていない側があり、組付けの向きは面取り側が歯付き座金側となります。ここで組付け間違いをしてしまうことがあるので要注意です。
ナットの面取りの向き
5点目「溝ナットを締付けたら座金の歯を折り曲げてロックする」について
溝ナットは歯付き座金と位置を合わせて締め付けをおこない、締め付け完了後に歯をポンチで叩き折り曲げます。
歯付き座金の内側はアダプタに、外側はナットに、固定されるのでこれによってナットが緩むことがありません。
歯を折り曲げてロックする
軸受けの取外し方
軸受けの取外しにはアダプターとベアリングはテーパ穴のはめ合いになっていることを考慮しなければなりません。
取外しのポイント
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テーパが食い込む方向に軸受けは抜けない
軸受けはテーパーのカシメによって軸に固定されているので、丸ごとASSYで取外すことはできません。一つ一つ部品を取外していきます。
軸受けはベアリングプーラー、または、タガネ、で抜くことが出来るのですが、抜く方向には注意が必要です。
軸受けが抜ける方向
例えばですが、軸受けが抜ける方向が軸の先端であればプーラーで引っ張れば抜けますが、軸受けが食い込む方向が軸の先端の場合にはプーラーで引っ張ると食い込むだけなので抜くことはできません。
そのため、軸受けが食い込む方向に取外したい場合には、まず初めに軸受けが抜ける方向にタガネとハンマーで叩いて抜き、次にホルダーを外し、最後に軸受けを取外す、と言う流れになります。
ポイントまとめ
それでは、プランマブロックについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- プランマブロックは回転しながら軸の調心と荷重の負荷ができる軸受
- ピローブロックよりも負荷容量が大きい
- 軸受け(ベアリング)、オイルシールのみの交換が可能
- アダプターとベアリングはテーパ穴のはめ合いになっているので要注意
以上4つのポイントです。
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関連記事:【回転運動の要素】
以上です。