今回は「非接触駆動のコンベヤにはマグトランを使用する」についての記事です。
コンベヤは生産ラインには欠かせない搬送機械なので、使用される環境や構造は多種多様です。なかでも、クリーン性が求められる環境では摩耗や発塵が課題となります。
そんな時におすすめなのがマグトランです。マグトランは非接触で駆動伝達できる製品でクリーン環境に最適なのです。
そこで今回の記事では、マグトランの特徴や注意点についてまとめておこうと思います。
記事の目次
非接触駆動のコンベヤにはマグトランを使用する
コンベヤの動力伝達方法
ワークの搬送に欠かせないコンベヤは様々な製造現場使用されているため、コンベヤの材質、構造、搬送方式、駆動方式などその形態に限りはありません。
なかでも搬送の要となるモータの回転力をワークに伝達する「駆動方式」について考えてみても、やはりその種類は多いです。
一般的なコンベヤの駆動方式にはこのようなタイプがあります。
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ベルト
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チェーン
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歯車(ギア)
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ローラーにモーター直付け
参考
*ベルトの種類についてはこちらの記事をご覧ください
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ベルトの種類と特徴【タイミングベルトとVベルトと平ベルト】
続きを見る
いかがでしょうか?皆さんの身近にあるコンベアの駆動方式はこのようなタイプではないでしょうか?
ところが、このような一般的な駆動方式にはちょっとした問題(課題)があります。
こんな問題です。
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摩耗する
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潤滑剤が必要
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粉塵が発生する
なぜこんな問題が起きるのか?と言いますと、、、
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個体が接触している部分には摩擦が発生しているから
摩擦が発生していると言うことは、潤滑剤が必要であり、潤滑しても摩耗してしまえば粉塵が発生し部品の交換が必要になってしまうのです。
参考
*摩耗についてはこちらの記事をご覧ください
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摩耗の問題と形態【故障や寿命が短くなる原因】
続きを見る
つまり、メンテナンス性やクリーン性を重視した場合、ベルト、チェーン、歯車などの一般的な駆動方式は不向きと言えます。
非接触の駆動伝達にはマグトラン
コンベアの駆動に摩擦が発生しない方式におすすめの駆動伝達部品があります。
おすすめの駆動伝達部品はコレです
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非接触磁力歯車・・・マグトラン
非接触磁力歯車とは、株式会社エフ・イー・シーさんから販売されている「マグトラン」と言う商品で、磁力を利用することで非接触で駆動を伝達することができる歯車です。歯車と言っても、歯山はないですし接触もしていません。
つまりマグトランを使用することで、ベルト、チェーン、歯車で問題であったメンテナンス性やクリーン性は大幅に改善できることになります。
上記のコンベアのモデルはミスミさんのマグトラン(非接触磁力歯車)の使用例です。
このように、モーターからの駆動メインシャフトの回転力をマグトランを介してウレタンローラーに非接触で伝達することができます。
ただし、注意点としてはモーターと駆動メインシャフト間の駆動伝達にはベルトや歯車を使用した駆動方式が基本となる点です。駆動のメインシャフトは各搬送ローラーに動力を分配しなければならいので駆動負荷が大きくマグトランではスリップや駆動誤差が生じてしまう可能性があります。
マグトランの特徴と取付け注意点
マグトランの特徴
マグトランの特徴とデメリットをまとめますと、このようになります。
マグトランの特徴
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静音
- 非接触
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低発塵
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摩耗しない
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水中や真空で使用できる
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クリーン環境に使用できる
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最高使用可能温度は標準型60℃、耐熱型150℃
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過負荷の場合は空転(スリップ)するので破損しない
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スパイラルギアタイプ、平ギアタイプ、かさ歯車タイプ、カップリングタイプ、がある
デメリット
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摩擦駆動よりも動力伝達力は低い
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加速、減速の負荷が大きいと空転する
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周囲の磁気に影響されたり、影響を及ぼす
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大きな負荷の伝達は回転ズレが起きるので不向き
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高回転は不向き(無負荷で4,000rpmまで問題なく追従する)
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磁気の影響を受けそうな部品や電子機器は50mm以上離して使用すること
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マグトランの取付け周囲には非磁性体のステンレス、アルミ、樹脂を使用する
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マグトランとマグトランのすき間の調整が重要で空転するトラブルが起きやすい
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鉄に代表される磁石に引っ付く(磁性体)材料や粉塵がマグトランに引っ付いてしまう
マグトランの取扱いと取付け注意点
マグトランは強力なネオジウム磁石であり、磁力によって回転するので一般的な駆動方式と違い取扱いと取付けには特有の注意点があります。
出典:株式会社エフ・イー・シー マグトラン カタログ
取扱いの注意点
取扱いの注意点はコレです。
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マグトランの表面に打痕や傷をつけない・・・回転不良や錆の原因となる
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金属部品や電子機器の近くに置かない・・・磁力が悪影響を及ぼすことがある
マグトランの取り扱いの基本は、専用トレイで保管することです。専用トレイは購入したときに梱包されているトレイですが、マグトランが何かに引っ付いてしまったり、傷が付かないように保管できます。
取扱いが不適切だと、上記の注意点に挙げたようなトラブルが起きてしまうので、組付け直前までトレイで保管し周囲に金属部品や電子機器を置かないようにしましょう。
取付けの注意点
取付けの注意点はコレです。
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マグトランとマグトランのすき間・・・すき間は0.5mmが基本。広いと伝達トルク低下
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マグトランとマグトランの芯ずれ・・・直交タイプは芯ずれに敏感で回転しなくなる
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マグトランの組間違い(平行タイプと直交タイプ)・・・相性が違うと空転してしまう
マグトランは磁力によって駆動を伝達するので、マグトランとマグトランの位置関係は非常に重要になります。マグトランを適切に回転させるためには、部品精度と組付け精度には注意が必要で、「ただ部品を取付けるだけ」では空転してしまうことがあるので精度出しが欠かせません。その他、メンテナンスなどで取り外して復旧したときに、ごみが噛みこんでいたりマグトランのシャフトが曲がっていたりして精度が狂い空転してしまうこともあります。
マグトランには回転方向に種類があるので、例えば平行タイプと直交タイプを組合わせてしまうと思うように回転しません。新規で組立てる場合は、取り間違って組付けてしまうことがあるので、もしすき間や芯ずれの調整を行っても回転しない場合は、マグトランのタイプ(種類)があっているか?疑ってみてください。
マグトランのポイントまとめ
それでは、マグトランについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- メンテナンス性やクリーン性を重視した駆動方式はマグトラン(非接触磁力歯車)がおすすめ
- マグトランは非接触なので摩耗もなく低発塵だが、伝達力はベルト、チェーン、歯車よりも劣る
- 取付けはマグトランとマグトランのすき間と芯の精度に注意が必要
以上3つのポイントが大切です。参考にしてください。
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関連記事:【搬送要素】
以上です。