今回は「止めねじの種類と使い分け」についての記事です。
止めねじは回転部品の固定や、治具の位置調整などに使用される身近なねじです。私は普段、くぼみ先の止めねじを使用することが多いのですが、調べてみますと先端の形状には種類があって使い分けが必要のようです。私も含めてもしかしたら、止めねじの先端の形状を気にせずに使っている人もいるかもしれませんね。
そこで今回の記事では、機械装置には欠かせない止めねじについて基礎情報をまとめておこうと思います。
記事の目次
止めねじの材質と形状の種類
止めねじの材質
止めねじの材質は「鋼」「ステンレス」「非鉄金属」があり、使い分けは、使用する部品の材質に合わせるのが基本です。
例えば「鋼には鋼の止めねじ」「ステンレスにはステンレスの止めねじ」「樹脂には樹脂の止めねじ」です。もし、意図的に異種素材の組合せで使用する場合は注意したいことがあるので紹介します。
止めねじ
異種素材の注意点はこちら
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腐食
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ねじ山の強度と樹脂の変形
部品と止めねじが異種金属だと、腐食が発生することがあるので、詳しくは下記の記事をご覧ください。
金属と樹脂の組合せで止めねじを締付けると、強度が低いねじ山(樹脂側)が損傷してなめてしまうことがります。それ以外にも、部品が樹脂で止めねじが金属の場合は、ちょっとした締め加減で樹脂部品が変形してしまうこともあります。これは、樹脂の止めねじで締めつけても同じことが言えますが、金属の止めねじで締めた方が顕著です。
なので、締付け過ぎは禁物で意識的に弱めの力で締め付けないといけません。弱めの力だとねじが緩む可能性がありますが、そこは、ねじの緩み止め剤でフォローします。詳しくは下記の記事をご覧ください。
止めねじの頭部の形状
止めねじの頭部の形状はJISで規格化された3種類があります。
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四角止めねじ
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すりわり付き止めねじ
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六角穴付き止めねじ
止めねじの頭部の形状
四角止めねじは、頭部が四角形になっていてプラグ(栓)のような形状をしています。専用工具やスパナやでねじを回転させますが、手でつかんで回転させることも可能です。固定用、調整用のねじとして使用します。
すりわりとは、頭部に一本の溝が入っていてマイナスドライバーでねじを回転させる形状のことです。なので、すりわり付き止めねじは、強い力で締め付けることには不向きです。その代わりに、繊細に簡単に回転させることが出来るので、「調整用のねじ」として最適です。
六角穴付き止めねじは最も流通している止めねじで、六角レンチで回すために六角形の溝があります。止めねじの中では強い力で締め付けることができるタイプで、深い穴でもねじを回すことが出来ます。そのため、部品の固定用には必ずと言っていいほど六角穴付き止めねじを選択します。
止めねじの先端形状
止めねじの先端形状はJISで規格化されているモノと規格化されていないモノがあります。
JISで規格化された止めねじはこちらの4種です
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棒先
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平先
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くぼみ先
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とがり先
*四角止めねじには「丸先」が規格化されていますが、今回は省略します。
規格化されていないけど、特殊な用途に便利な止めねじもあります
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ボールローラ/ボールスクリュー/クランピングスクリュー
*規格化されていない止めねじは、この他にも各メーカーさんからラインナップされております
それでは、ここで紹介した先端形状について、もう少し掘り下げてまとめておきます。
先端形状の特徴と使い方
棒先
棒先は先端が円筒形の突起になっているタイプです。
棒先の止めねじ
特徴と使い方
- 先端が平なので相手部品に傷が付かない
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相手部品の穴、溝、キー溝にはめこんで使用する
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溝にはまり込むので軸方向、回転方向のズレ止めとして有効
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突起の先端は平面なので部品を押さえつけて固定するのには弱い
平先
平先はねじの先端が平になっています。
平先の止めねじ
特徴と使い方
- 先端が平なので相手部品に傷が付かない(付きにくい)
- 部品を分解/組付けする部分や再調整する部分に有効
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突起の先端は平面なので部品を押さえつけて固定するのには弱い
- 回転軸を部分的に面削すると、部品の角度が出やすく再現性がある
くぼみ先
くぼみ先はねじの先端が円形にくぼんでいる止めねじのことで、止めねじの中で一番流通していて、最も使用されているスタンダードなタイプです。
くぼみ先の止めねじ
特徴と使い方
- 止めねじ先端が食い込むので、相手部品に円形の傷が付く
- 相手に傷をつけたくない場合は、セットピースを使用する
- 回転軸を部分的に面削すると、部品の角度が出やすく再現性がある
- スプロケット、プーリー、歯車、軸受け、などの回転部品の固定に最適
- 相手部品に傷が付くので調整ねじとしては不向きで、分解もしずらくなる
セットピースについては、下記の記事で詳しく解説しています。
とがり先
とがり先は、ねじの先端が尖っている止めねじのことです。
とがり先の止めねじ
特徴と使い方
- くぼみや溝に使用すると、軸方向、回転方向のズレに強い
- 焼入れがされていない生材や軟質材に使用することで先端が食い込む
- 組立完了後に円錐や溝の位置を割出して加工すると、部品の再現性がある
- 円錐のくぼみや溝の加工がしてあると、部品の再現性があるが、それ以上の調整はできない
- くぼみや溝がない硬い材料に使用すると、先端が食い込まないので部品の固定にはならない
ボールローラ/ボールスクリュー/クランピングスクリュー
各メーカーさんで呼び名に違いがありますが、ボールローラ/ボールスクリュー/クランピングスクリューと呼ばれる止めねじは、先端にボール(球)が搭載されているタイプです。
外見が全く同じボールプランジャーと呼ばれるモノもありますが、こちらは別物です。ねじの内部にバネが仕込んであり、バネレートに応じた強さでボールを押し付けるので、溝付き部品の位置の割だしなどに使用します。
ボールローラ/ボールスクリュー/クランピングスクリュー
特徴と使い方
- 先端のボールは、円形ボール、平面ボール、ギザギザボール、などがある
- 円形ボールは点当たりなので相手部品に傷が付かない(付きにくい)
- 相手部品の角度が斜めでも、確実に接触して調整/固定が出来る
- 点接触のため複数の止めねじ組合わせることで部品の位置決め/調整が容易で確実な固定になる
参考に、鍋屋バイテック会社さんの紹介動画を載せておきます。
ポイントまとめ
それでは、止めねじの種類と使い分けについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 止めねじの材質は「鋼」「ステンレス」「非鉄金属」がある
- 頭部の形状には「四角止めねじ」「すりわり付き止めねじ」「六角穴付き止めねじ」がある
- 先端の形状は「棒先」「平先」「くぼみ先」「とがり先」が規格化されている
- 材質は部品の材質と同種を使用し、先端形状は使用目的によって使分ける
以上4つのポイントです。
*止めねじの購入はこちらから
*おすすめの六角レンチはこちらです
参考
*止めねじの緩み対策についてはこちらの記事で紹介しています
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ホーローセットがゆるみ易い原因【止めねじやイモネジのゆるみ止め対策】
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関連記事:【締結要素】
以上です。