今回は「手作業でベアリングにグリスを入れる方法」についての記事です。
ベアリングと言えば、シールタイプのベアリングを使用することが多いと思います。しかし、ベアリングの中にはシールなしのベアリングと言うものがあり、そのタイプはグリスが充填されていないので、潤滑方法を考慮する必要があります。
潤滑にはオイルかグリスのどちらかとなりますが、今回はグリスの潤滑を前提として、シールなしベアリングにグリスを充填する方法を紹介しようと思います。
記事の目次
ベアリングとグリスの必要性
シールなしのベアリングやテーパーベアリングなどの、グリスが封入されていないベアリングにはオイルやグリスの潤滑が必要です。
テーパーベアリング
潤滑が必要な理由は下記の引用で確認してください。
引用:NTN 転がり軸受総合カタログ 潤滑
11. 1 潤滑の目的
(中略)
(1)摩擦及び摩耗の軽減 (2)摩擦熱の排出 (3)軸受寿命の延長 (4)さび止め (5)異物の浸入防止
とあります。非常に大切ですね。
それでは、グリスの充填方法について説明します。
グリスの充填方法
ベアリングのグリス充填には、おすすめのやり方があります。
おすすめの方法
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グリスを手のひらでベアリングに押し込む
それだけ?と思われたかもしれませんが、手のひらが有効的な理由があるのです。
手のひらでグリスを充填する理由
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指より手のひらの方が押す力が強い
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指で詰めようとすると指のすき間からグリスが漏れてしまう
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手のひらは面積が大きいのでグリスを詰める時にグリスが逃げない
ですから、指でグリスを詰めることは非常に効率が悪いので、手のひらを使ってグリスを押し込むのです。
ベアリングにグリスを充填してみる
では実際に、ベアリングにグリスを充填してみましょう。
下記の画像で確認してください。
手のひらでグリスを押し込む
*クリック拡大
このように、ベアリングのすき間に手のひらを押し付けて、しっかりと内部にグリスを押し込むようにグリスを充填します。
充填前と充填後の重量
グリスの充填具合を、簡易的な秤で測ってみました。
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充填前・・・470g
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充填後・・・480g
約10gグリスが充填されました。数値で見ると、グリスが充填されたんだと実感しますね。
ベアリングの充填量
再使用のベアリングにグリスを充填する
ベアリングのグリスの充填は、何も新品のときだけではありません。定期的なメンテナンスで、中古のベアリングにグリスを充填し直すこともよくある作業です。
そもそも、ベアリングはグリスの潤滑が損なわれない限り、たやすく摩耗したりしません。つまり、定期的にグリスを新品に充填し直すことでベアリングの寿命は飛躍的に向上するのです。
充填のポイント
再使用のベアリングに、グリスを充填する方法はベアリングを洗浄するか?しなかいか?の2通りのやり方があります。
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洗浄する・・・古いグリスを灯油や洗浄油で洗い流してから新品グリスを充填する
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洗浄しない・・・新品のグリスを手のひらで押し込んで汚れたグリスを外へ排出させて充填する
出典:KIKAIYA パーツウォッシャー
推奨する方法は、洗浄するやり方です。
洗浄することで、ベアリングの異常の確認、新品のグリスに完全に入れ替えられる、といったメリットがあります。ただし、グリスの洗浄はパーツクリーナーで簡単に除去できるわけではないのでパーツウォッシャー などを使って灯油や洗浄油をかけ流しながら洗い流す必要があるので、作業環境が整っていないとできない作業です。
洗浄しない方法は、現場作業ではよく行われる手法です。
古く汚れたグリスは、ウエスで拭き取った後に新品のグリスを押し込んで汚れたグリスを排出させます。その際には、新品グリスと混ざらないように丁寧に除去し、そしてさらに新品のグリスを詰めます。この繰り返しで、新品グリスに入れ替えることができます
どちらのやり方でも良いのですが、環境が整っていれば、洗浄してグリスを詰める方法としたいところです。
まとめ
今回は、ベアリングにグリスを充填する方法についてまとめてみました。簡単な作業ですが、「グリスは手のひらで押し込む」を覚えておきましょう。
*ベアリングのグリスのスタンダードはリチウムグリスです。
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以上です。