今回は「溝ゲージのすき間で摩耗判断」についての記事です。
よくある設備の維持管理にVベルト、Vプーリーの点検や調整交換があります。このうち、Vプーリーの摩耗判断として目視判断が一般的な方法となっていますが、目視判断は作業者によって判断に差がありますし、良いのか悪いのか迷ってしまうこともあるので、なかなか難しいです。
と言うことで、より正確に適切な判断ができる方法を考えてみますと、「溝ゲージ」と呼ばれるV溝の摩耗具合を数値化する治具を使用する方法があります。そこで今回の記事では「溝ゲージ」の使い方からVプーリーの種類についてまとめておこうと思います。
記事の目次
溝ゲージのすき間で摩耗判断
Vプーリーの摩耗判断は難しい
VベルトとVプーリーに適切な摩擦を発生させるためには「張り」と「面粗さ」が重要で、省エネを考えると効率よく伝動させるために日ごろのメンテナンスが欠かせません。メンテに必要な摩耗判断について下記の記事で紹介していますが、その中でVプーリーの摩耗の判断方法は「目視」判断と説明しました。
Vプーリーの目視判断は2つです
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プーリーの側面が光っていないか?表面がつるつるしていないか?
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プーリーの底面のメッキや塗装が剥がれていないか?
*詳しくは下記の記事をご覧ください。
Vベルトとプーリーの摩耗判断
目視判断、、、、実はこれは結構難しことです。
目視判断の難しさ
- 経験や感覚で判断するので作業者によって差がある
正直な話し、「目視判断」って作業者からしたら「不安」でしかないです。交換時期なのに「交換しない」判断をして、スリップが発生したら「音」が出ますし「効率ロス」ですし、最悪「火災」が起きます。逆に、まだまだ使えるのに交換したら「コストアップ」になってしまいます。
とは言え、目視判断を完全に排除することは難しいので、目視判断に基準を設けた数値管理を付け足すとVプーリーの摩耗判断に自信が持てそうです。
Vプーリーの見た目判断
溝ゲージのすき間で摩耗判断する
Vプーリーの目視以外の摩耗判断にはこんな方法があります。
目視以外の判断方法
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溝ゲージ・・・Vプーリーの溝に「専用ゲージ」を当てて数値で判断する
出典:鍋屋バイテック会社 溝ゲージ カタログ
使い方は簡単で、溝ゲージをVプーリーに当てて「すき間」を「すき間ゲージ」などで測定するだけです。ただ単に摩耗具合を目視判断するだけではないので、自信が持てると思います。
判断方法はコレです
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溝ゲージとVプーリーの斜め部分のすき間が規定値以上あったら交換
すき間が大きかったら沢山摩耗しているので、交換しましょうってことです。
*鍋屋さんのゲージは0.8mm以上のすき間があったら交換となっています。
と、ここで注意したいポイントがあるのでお知らせしておきます。
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Vプーリーの形状は規格化されていて種類がある
- Vプーリーの大きさを示す「有効呼び径」によって谷の角度に違いがある
なので、①プーリーの種類(JIS規格、ISO規格)に合ったゲージを選定する、②規格に適合したゲージの中で、さらに有効呼び径に合ったゲージを選定し使用する、ってことになります。
このポイントは超重要です。Vプーリーの規格に合っていない溝ゲージを使用すると、「間違った判断」をしてしまうので、測定前にVプーリーの種類を調べておかなければなりません。
Vプーリーの規格と見分け方
Vプーリーの規格
Vプーリーの溝の形状には種類がありますが、私が調べたところ一般的に使用率の高いVプーリー以外の溝ゲージは販売されていません。
なので、溝ゲージがないVプーリーは、記事冒頭で言っています通り目視判断となってしまいます。
*溝ゲージの販売は「鍋屋バイテック株式会社」「フジツール株式会社」の2社で調査しました。
一般用Vプーリー(JIS B 1854)の規格
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M・・・販売確認できず
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A・・・溝ゲージあり
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B・・・溝ゲージあり
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C・・・溝ゲージあり
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D・・・溝ゲージあり
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E・・・販売確認できず
細幅Vプーリー(JIS B 1855)の規格 *通称ウェッジ プーリー
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3V・・・溝ゲージあり
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5V・・・溝ゲージあり
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8V・・・溝ゲージあり
ISO形細幅Vプーリー(ISO4183)の規格
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SPA・・・溝ゲージあり
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SPB・・・溝ゲージあり
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SPC・・・販売確認できず
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SPZ・・・溝ゲージあり
このほかにもVプーリーの規格があるようです。
Vプーリーの見分け方
Vプーリーの規格の見分け方についてまとめておきます。
簡単な見分け方はコレです
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Vプーリー側面に「型番」の刻印がある。ただし刻印なしのモノもある
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取り付けてあるVベルトに記載されている「型番」で見分けることができる
Vプーリーの側面に「型番」の刻印ないモノもありますが、刻印があれば一番確実な判断と言えます。
Vベルトの型番でも判断できますが、ISO形細幅Vプーリー(ISO4183)は一般用VベルトのM、A、B、Cや細幅Vベルトの3V、5Vなどが使用できるので「ベルトの型式≠プーリー型式」となります。なので、ベルトの型番を鵜呑みにすると溝ゲージの選定を誤る可能性があります。
もし、見た目でVプーリーの種類が不明な場合はコレです
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Vプーリーの形状を自分で測定する
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設備のカタログで確認するか、製造メーカーに問い合わせる
どうしてもわからない場合は、V溝を実測して判断するしかないでしょう。
方法としては、①「プーリーの大きさ=呼び径」を測定する、②V溝の幅(下記の資料でw1の寸法)を測定する。この2点の測定でプーリーの型式を確定させることができます。
*参考として、鍋屋さんのVプーリーの寸法を載せておきます。メーカーによって多少の違いがあると思いますが、おおよそ下記の寸法で判断できると思います。
出典:鍋屋バイテック会社 一般用Vプーリー(JIS B 1854)の規格
出典:鍋屋バイテック会社 細幅Vプーリー(JIS B 1855)の規格
出典:鍋屋バイテック会社 ISO形細幅Vプーリー(ISO4183)の規格
出典:鍋屋バイテック会社 Vベルトの種類
補足として、、
Vベルトの型式ですが、どこのメーカーであっても基本的にベルトの表面に印字があります。
Vベルトには型番が記載されています
「A-33」の意味はこちら
- 種類が「A」形
- 長さが「33インチ」=「838.2mm」
溝ゲージの使い方動画
ここまで、溝ゲージによる摩耗判断とVプーリーの見分け方について説明してきましたが、補足として実際の使用方法の動画を載せておきます。
ポイントまとめ
それでは、Vプーリーの摩耗判断について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- Vプーリーの摩耗判断は目視判断だけでなく、溝ゲージをつかって数値で判断すると確実です
- 溝形状には種類があり、呼び径(大きさ)によって角度に違いがあるのでプーリーの型式を調べる必要がある
- 型番はVプーリー側面の「型番」の打刻、または、実測で判断するのが確実です
- Vベルトの型番でも判断可能ですが、ISO形細幅Vプーリーは様々なVベルトが使用可能なのでプーリーの型番は判断できない
以上4つのポイントです。
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関連記事:【回転運動の要素】
以上です。