今回は「タイミングベルトの摩耗判断や張り調整の方法」についての記事です。
タイミングベルトはVベルトと同様に動力の伝達に欠かせない部品です。特に位置ズレや確実な動力伝達を目的に使用されるので摩耗によるトラブルは避けたいところです。また、タイミングベルトは樹脂素材で伸縮性があるため、張り調整も重要です。
そこで今回は、タイミングベルトの摩耗判断と張り調整についてまとめておこうと思います。
タイミングベルトとは
タイミングベルトとは、かみ合いによって伝動(動力を伝える)する、リブと呼ばる歯山がついたベルトです。
かみ合い伝動なのでスリップすることはなく、動作の連動が必要な機構や、動力を確実に伝達したい場所などに使用されます。
例えば、サーボモーターを使用した位置制御やユニット同士の同調が必要な機構、ポンプ(一定周期で噴射)などです。
出典:三ツ星ベルト 製品一覧
かみ合いのズレ
タイミングベルトを使用していると言うことは、位置ズレを嫌う機構である可能性があります。
しかし、かみ合い伝動のタイミングベルトといっても、タイミングのズレ、歯飛びが起きることがあるの注意が必要です。
例えば下記のような状況で歯飛びが起きる可能性があります。
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モーター(動力)が停止してもユニットが走る
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ユニットがクラッシュやメカストッパーで停止しているのに、モーターが回転する
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摩耗によって歯山がなくなる(消失)
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張りが弱くでベルトとプーリーが空回りする
制御起因に関しては設計、ソフト(電気)で対応が必要となりますが、「摩耗」と「張り」については日ごろの整備が大切となります。
タイミングベルトの摩耗判断
私がタイミングベルトの摩耗判断をする時には、下記の4点に注目して総合的に判断しています。
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ベルト表面のひび割れ
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歯山の谷の亀裂
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歯山の摩耗(山が低くなる)
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ゴムの粉がどれだけ出ているか
ひび割れや亀裂はベルトを軽く折り曲げて屈曲させると、ひびや亀裂が浮き出てくるので分かりやすいと思います。また、曲げなくても、ひび割れや亀裂が分かるようであれば、摩耗はかなり進行しているので即交換しています。
実物の摩耗ではなく使用期間で判断する場合は「温度」「雰囲気」「使用頻度」などの環境によって寿命に違いが出るので、一概に使用期間で一括りに判断できませんが、経験上おおよそ3年から5年を一つの目安にしています。
*下記の資料も参考になると思います。
出典:三ツ星ベルト タイミング伝動 設計資料
タイミングベルトの張り調整
タイミングベルトの張りは、Vベルトと違い必要以上に神経質になる必要はないと考えています。
Vベルトの場合は、摩擦伝動ですから張力が非常に大切で、張りすぎても緩すぎてもベルトの「切れる」「外れる」「滑る」などの問題が起きます。
しかし、タイミングベルトの場合は、かみ合い伝動なので少々の張りの誤差では問題がおきませんし、機構の動作精度によっては「張り気味」で調整する場合もあるからです。ですから、手の感覚で判断しても良いと思いますし、実際に私は手の感覚で判断しています。
参考
*Vベルトの張りについてはこちらの記事をご覧ください
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Vベルトとプーリーの摩耗判断【交換のポイントと張りの調整方法】
続きを見る
張りの数値管理と計算方法
タイミングベルトの張りを数値管理する場合には、ベルトの「たわみ」と「与える荷重」を求める必要があります
注意として、タイミングベルトは製造メーカーによって様々なタイプがあり、各メーカーによってベルトのプロフィールが異なります。ですから実際に使用するタイミグベルトの取扱説明書に記載してある数値で計算するようにしましょう。
タイミングベルト
荷重を与える
たわみの測定
今回は三ツ星ベルトさんのタイミングベルトでの算出方法を紹介します。
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たわみ量(mm)=(1.6×スパン長さmm)÷100
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与える荷重(N)=[To+{(スパン長さmm×Y)÷ベルト長さmm}]÷16
*スパン長さは実測で問題ありません。
*「To」と「Y」の値は下記の表12を参照してください。
*与える荷重の値は、Toの「min」と「max」で2回計算して、min~maxの範囲の荷重(N)でたわみ量(mm)を測定します。
出典:三ツ星ベルト タイミング伝動 設計資料
測定器やアプリを使用した張り調整
タイミングベルトやVベルトの張りを測定する方法として、測定器やアプリを使用する方法があります。
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音波式ベルト張力計
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スマートテンション(iPhoneのアプリ)
出典:三ツ星ベルト 音波式ベルト張力計
スマートテンション
どちらの測定方法も初期設定としてデータ入力が必要で、張りの測定はベルトを指ではじいた時の音で判断してくれます。
注意としては、音波式ベルト測定器はスパン長さ1mm~9999まで測定可能で、スマートテンションはスパン長さ550mmまで測定可能と言うことです。
アプリは簡易的で汎用性がないので適切な運用をする場合は、音波式ベルト測定器の導入をおすすめします。
まとめ
今回は、タイミングベルトについてまとめてみました。私の印象ではVベルトよりもタイミングベルトの方が寿命が長く切れにくいと感じています。とは言っても、定期交換部品であることに違いないので日常的に摩耗の点検や張りの確認などを行い、トラブルが起きる前に早めの交換を心がけた方が良いでしょう。
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関連記事:【回転運動の要素】
以上です。