今回は「ラビリンスシールの構造と特徴」についての記事です。
ラビリンスシールは蒸気やガスや空気などの気体や潤滑油の漏れ対策と使用される運動用の非接触形シールです。
運動用のシールと言えばOリングやオイルシールが一般的ですが、これらは接触形なので潤滑が必要となるためラビリンスシールとは使用する環境に違いがあります。
と言うことで、今回の記事ではラビリンスシールの基礎情報についてまとめておこうと思います。
ラビリンスシールの構造と特徴
ラビリンスシールとは
ラビリンスシールとは、シールの構造が迷路のような流路になっている運動用の非接触形シールで、外部からの異物侵入を防ぎ、内部の気体や流体の漏れを防止することできる密封装置のことです。
シール(密封装置)の分類
参考
ニロスリングもラビリンスシールの仲間です
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開放形ベアリングはニロスリングで簡単に異物対策【アンギュラとテーパ】
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ラビリンスの構造
ラビリンス(迷路)の形は規格化されていないので、様々なメーカーが独自のラビリンス形状を採用しています。
下記に代表的なラビリンス形状を紹介しますが、「曲がりくねった流路(迷路)」と「膨張室と呼ばれる空間」が特徴のシール構造です。
出典:株式会社ジェイテクト Koyo 密封装置 ラビリンス
密封された空間から流体が大気に漏れると言うことは、圧力差が生じていることになります。圧力を生じている流体は大気に通じる曲がりくねった流路(ラビリンス)を通過するのですが、複雑な流路(ラビリンス)は抵抗となるので圧力損失(エネルギーを失う)ことになり、漏れが生じにくくなります。
また膨張室を設けているタイプは、【流路 ⇒ 膨張室 ⇒ 流路 ⇒ 膨張室 ⇒ 流路】のように流路と膨張室を交互に配置することで、通過してきた流体が【膨張室 ⇒ 流路】で急に流れにくくなって渦巻きが発生して流れの抵抗となり圧力損失を起させるようになっています。
特徴まとめ
ラビリンスシールの特徴をまとめるとこんな感じです。
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非接触
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発熱しない
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高回転に対応
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動力の損失がない
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長寿命で半永久的
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異物の混入を防ぐ
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シールの潤滑が不要
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メンテナンスフリー
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シールも軸も摩耗しない
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Oリングを組合わせた
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使用できる温度の範囲が広い
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材質は金属が一般的だが樹脂製もある
- 気体の漏れ対策に使用されることが多い
- 非接触なので漏れが発生する可能性がある
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独自設計のラビリンス構造のシールを作ることが可能
この中で抑えておきたいことは「独自設計のラビリンス構造のシールを作ることが可能」と言うことです。
ラビリンスシールは規格化されているわけでもないですし、材質は金属が一般的の非接触シールですから、商品化されたラビリンスシールを使用しなくても、自社設計の独自のラビリンスシールを採用することが可能です。
例えば、自社設計の機械を運転したらOリングやオイルシールから漏れが発生した場合に「ラビリンス形状の部品を追加して漏れを防ぐ」ってことができます。
ラビリンス性能の高める方法
ラビリンスシールは、非接触シールが故に「漏れにくくする効果はあるが漏れを完璧に防ぐことは難しい」って欠点があるので、シール性能を高める構造を知っておくと良いです。
*下記の商品は2ストロークエンジンの純正オイルシールを自社製のラビリンスシールに置き換えることで高耐久を実現した商品です。
出典:井上ボーリング ラビリ
非接触のラビリンスシールLABYRI®「ラビリ」がエネルギー損失ゼロで摩耗しないシールを実現!
ラビリンスのシール性能を高める基本はコレです
- 流路を長くする
- 流路の隙間を狭くする
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流路の曲がりを多くする
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複雑な渦巻きが発生する膨張室にする
ポイントは流体が流路を通過するときの抵抗が大きくなるような形状にすることです。
それ以外にも、ラビリンスシールに「Oリング」や「オイルシール」を組合わせたシールユニットも有効ですし、回転力によって発生する圧力を利用して「より流体の圧力を損失させる」ことも可能のようです。
ラビリンスシールのポイントまとめ
それでは、ラビリンスシールについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- ラビリンスシールとは、シールの構造が迷路のような流路になっている運動用の非接触形シール
- 「曲がりくねった流路(迷路)」と「膨張室と呼ばれる空間」が特徴のシール
- 流体が流路を通過するときの抵抗によって圧力損失させることで漏れにくくする
以上3つのポイントです。
*ラビリンスシールに関する記事はこちらです
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関連記事:【シール要素】
以上です。