今回は「無給油ブッシュとは/プレスとボルトナットで圧入しジグで抜き取る」についての記事です。
無給油ブッシュは軸受けとして様々な部分に使用されています。この無給油ブッシュは部品に組み込んで使用するので圧入の作業が欠かせないのですが、圧入の作業はブッシュが斜めになったり、がじってしまい失敗することがあるので作業のポイントを押さえておくべきでしょう。
そこで今回の記事では、無給油ブッシュの基礎情報から圧入のポイントまでを解説しようと思います。
記事の目次
無給油ブッシュとは
無給油ブッシュとは、潤滑油やグリスを必要としない軸受です。
呼び名はメーカーなどによっても違い「無給油ブッシュ」「ドライブッシュ」「オイレスブッシュ」などと呼ばれます。
この無給油ブッシュには様々な種類があり、大きく分類すると下記の3種になります。
-
樹脂系軸受・・・自己潤滑性のある樹脂材料でできたタイプ
-
複層系軸受・・・軸の摩擦面に樹脂コーティングされているタイプ
-
金属系軸受・・・軸の摩擦面に個体の潤滑剤を埋め込んだり、混ぜてあったりするタイプ
このように摩擦部分に違いがありますが、どちらも潤滑油やグリスが不要な代わりに軸やシャフトがスムーズに可動できるような仕組みになっています。
複層系軸受
プレスで圧入する
無給油ブッシュは単独では固定ができないので、部品に組み込む必要があります。
組み込む方法
-
圧入
-
はめ込んでねじやフレートで固定
この2つの方法が一般的に用いられるブッシュの組み込み方法です。
この中でも、はめ込んでねじやプレートで固定する方法には特別な作業は必要ありませんが、圧入で固定する場合には当然「圧入」の作業が必要になり作業のポイントを押さえておく必要があります。
無給油ブッシュを圧入
圧入には通常プレスを使用して挿入します。
プレスの種類
-
油圧プレス・・・挿入に大きな力が必要な場合
-
ハンドプレス・・・小さな力で挿入出来る場合
ハンドプレスは段取りや作業性が油圧プレスより良いので、出来ればハンドプレスで手際よく作業をおこないたいものです。
ハンドプレスと油圧プレス
プレスで圧入する方法
それでは、プレスで無給油ブッシュを圧入する方法を紹介します。
まずは下記のイメージ図をご覧ください。
無給油ブッシュを圧入
プレスで圧入するときのポイントは2つあります。
-
挿入面に潤滑油を塗布(ブッシュの外径部分と部品の穴側)
-
あてブロックを使用する
潤滑油を塗布する理由はブッシュがスムーズに穴に入るようにするためで、かじったり、斜めに入ってしまうことを予防します。
あてブロックを使用する目的は、、、
-
部品側と無給油ブッシュ側に適切な圧力が伝達するように接触面を安定させる
-
ブッシュが斜めに傾いて挿入してしまう事があるので接触面を安定させる
このような目的があります。
圧入作業は失敗できない一発勝負なので、潤滑油を塗布しあてブロックを使用して慎重な作業をおこないます。
*補足 私の場合は平面度の良い当てブロックを使用していますが、大同メタル工業からは専用の圧入治具が販売されています。専用治具ですとより安定した圧入が出来そうです。
ボルトナットで圧入する
プレスが使用できなかったり、プレスが無い場合はどのようにして無給油ブッシュを圧入したら良いでしょうか?
例えばハンマーで打ち込む方法がありますが、、、
ハンマーで打ち込む方法は、真っすぐ打ち込む事が非常に難しくハンマーの打撃で無給油ブッシュが変形する可能性があります。これは平行ピンを打ち込む作業でも同じことが言えます。
つまりハンマーなどの打撃系で圧入する事は避けた方がよいと思われます。
では打撃系以外で圧入する方法を考えてみましょう。
-
バイス・・・バイスで部品と無給油ブッシュを挟み締め付けて圧入する
-
シャコ万力・・・シャコ万力で部品と無給油ブッシュを挟み締付けて圧入する
-
ボルトナット・・・ボルトナットで部品と無給油ブッシュを挟み、ねじの締付で圧入する
このような方法が思いつきました。
この中で今回の目的に最適な方法はどれでしょうか?
私の経験で言えば、ボルトナットで圧入する方法がこの中でも安定性があり少ない力で圧入できる方法です。
ボルトナットで圧入してみる
それではボルトナットで圧入する方法を解説します。
無給油ブッシュを圧入
無給油ブッシュをボルトナットにセットすると、このようなイメージになります。
圧入のポイントは下記の4点です。
-
ボルトば細目を使用
-
挿入面に潤滑油を塗布して挿入時のカジリを防止
-
ボルトにグリスを塗布し高負荷でかじらないようにする
-
ブッシュに接触するワッシャーは安定した接地面としたいので、金属ワッシャーなどの面が広くブッシュに斜め当たりしないようなワッシャーを使用する
-
ボルトナットの回転させる側は、無給油ブッシュに接触していない側とする。無給油ブッシュと接触している側を回転させると、ワッシャーも連動して回転してしまい無給油ブッシュと擦れ合ってしまいます
このポイントを守れば圧入ができると思います。
それでは作業イメージをご覧ください。
無給油ブッシュを圧入
部品に無給油ブッシュとボルトナットをセットする。ブッシュの傾きには注意
反無給油ブッシュ側を回転させて圧入する
圧入完了
プレスとボルトナットで圧入
それでは、プレスとボルトナットで圧入する方法について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- ブッシュと部品には潤滑油を塗布する
- あてブロックを使用する
- ボルトナットは細目を使用しグリスを塗布する
- ボルトナットの圧入は面が大きい安定したワッシャーを使用する
- ブッシュを打撃系で打ち込まない
以上5つのポイントです。
ジグで抜き取る方法の紹介
無給油ブッシュの圧入は簡単にできますが、ではもし「圧入が失敗して引き抜きたい」「消耗したのでブッシュを交換したい」となった時に、どのようにしてブッシュを引き抜けば良いでしょうか?
例えばブッシュの外径より若干マイナスしている円筒形の治具をプレスで押し込んでブッシュを部品から押し出すやり方があります。
または、大同メタル工業の専用のSSTを使用して引き抜く方法もありますね。下記の動画をご覧ください。
私は持っていませんが、あればいざという時に役立ちそうです。
まとめ
今回は無給油ブッシュの圧入をメインに解説しました。圧入は一発勝負なので確実に圧入できるように、「安定」と「傾き」には細心の注意を払って作業をしましょう。
参考
ブッシュについてはこちらの記事もご覧ください。
-
ブッシュの特徴と種類と潤滑方式【材質と給油の違い】
続きを見る
*無給油ブッシュの購入はこちらから
関連記事:【回転運動の要素】
以上です。