今回は「ローラチェーンのジョイントリンクの種類と固定方法」についての記事です。
ローラーチェーンはモーターの動力伝達やワークの搬送など幅広く使用される機械要素です。
幅広く使用されているが故に、チェーンの交換作業も保全作業の定番なのですが、チェーンの取付け/交換にはジョイントが必需品で、その種類や取付けの方向など知っておくべきことがあります。
そこで今回はローラーチェーンのジョイントに焦点をあてて紹介しておこうと思います。
記事の目次
ローラチェーンのジョイントリンクの種類と固定方法
ローラチェーンはリンクによって連なっていますので、その長さをリンクによって長くしたり継ぐことができますが、それにはジョイントリンクを使用することになります。
ジョイントリンクとは、チェーンの長さを延長したり、チェーンの端と端を繋いでエンドレスにする部品です。(ジョイントリンクは1列から多列まで種類があり、チェーンのタイプによって使い分けます。)
出典:引用抜粋:椿本チエイン ドライブチェーン&スプロケット 取扱説明書 P4
このジョイントリンクには注意ポイントがあります
-
ジョイントリンクの種類
-
ジョイントリンクのピンの固定方法
この2つのポイントを理解しておかないとチェーンを安全に、正確に、間違いなく、つなぐことができないばかりか、間違った認識で作業をすると機械装置が破損したり故障の原因となりかねません。
と言うことで、次項からこの2つのポイントについて深堀していきます。
ジョイントリンクの種類
このジョイントリンクには偶数用と奇数用があり使用目的に違いがありますので紹介していきます。
ジョイントリンク
ジョイントリンクとは、偶数リンクでチェーンを繋ぐ時に使用するジョイントです。チェーンを繋ぐ時には基本的にこのタイプを使用します。
1列のジョイントリンク
チェーンには、1列のチェーンと多列のチェーンがあります。一般的には1列のチェーンを目にすることが多いと思いますが、高荷重で使用する場合には、2列、3列、4列と多列のチェーンが使用されることがあり、列数に応じた専用のジョイントリンクを使用します。
オフセットリンク(半コマ)
オフセットリンクとは、通称「半コマ」と呼ばれている、奇数リンクでチェーンを繋ぐ時に使用するジョイントです。
チェーンの長さの微調整をするときに使用することが多いと思います。
オフセットリンク
ジョイントリンクのピンの固定方法
ジョイントの固定には主に3種類の方法があります。
-
クリップ
-
割ピン
-
かしめ
機械装置などの産業用のチェーンとしては、クリップと割ピンが主流です。かしめタイプは出力が大きいモーターサイクル(オートバイ)の駆動チェーンに採用されることが多く、出力が小さな場合はクリップが主流です。
クリップ
クリップは、ペンチなどでクリップをピンの溝にはめ込んで固定するタイプです。
クリップの再使用は、変形がない限り可能ですが、予想外の事態が起きるとも限らないので基本的には新品を使用したほうが良いでしょう。
また、クリップには向きがあるので注意が必要です。
クリップのR形状が進行方向となるように取付ける必要があり、進行方向側が「割れ」になると、何かに引っ掛かりクリップが外れる可能性があります。ですから、チェーンの進行方向をよく確認したうえでクリップを取付けるようにしましょう。
クリップのジョイント
割ピン
割ピンは、ピンの穴にいれて割ピンを開いて固定するタイプです。
割ピンの再使用は辞めておいたほうが良く、一度使用した(曲げた)割ピンは金属疲労で折れてしまう可能性があります。
参考
*割ピンについてはこちらの記事をご覧ください
-
割ピンの規格と材質【呼び径は実物の径ではなくピン穴径】
続きを見る
また、割ピンには注意しておきたいことが2点あります。
-
割ピンは外側から内側に挿入して使用します
-
割ピンの割れの角度は60度前後です
割ピンを外から挿入する理由には、ピンの先端が何かにひっかっかることを防ぐためで、割れの角度60度については、必要以上に曲げると割ピンの曲げ部分が金属疲労で折れたり、ピンの先端が引っかかることがある為です。
上記の注意点を守って取付ければ、進行方向に制限はありません。
割ピンのジョイント
かしめ
かしめは、かしめ専用のジョイントを専用工具で圧入しピンの先端を潰して固定するタイプで、モーターサイクルでは一般的です。
かしめタイプは引っかかる要素がないので、進行方向に制限はありません。
かしめの方法については下記の動画をご覧ください。
補足 チェーンが短い時にはチェーンプーラ
補足として、チェーンの交換や取付け作業でよくあることを紹介しておきます。
それは「チェーンが微妙に短くてジョイントリンクが取付けられない」と言うことです。
これには様々な理由が考えられますが、大抵の場合は「設計段階でのスプロケットのレイアウト(配置)による周長とチェーンの周長が合っていないこと」です。
この様な状態で、チェーンを取付けなければいけない場合には、、、
-
オフセットジョイントリンクで長さの微調整
-
スプロケットの取付けボルトを緩めたり、スプロケットを外してチェーンをかけてからスプロケットを取付ける
-
スプロケットにチェーンを半分かけて、スプロケットを回転させてチェーンをかみ合わせる
-
チェーンプーラーを使用する
この様な方法があります。
2と3は無理やり感は否めませんが、現場ではよくある手法です。
ここで、おすすめしたいのが4のチェーンプーラを使用する方法です。チェーンプーラは微妙に届かないチェーンを引っ張って寄せる特殊工具です。
出典:TSUBAKI チェーンプーラ
もしもの時には有効な工具です。余裕があれば持っておくと良いでしょう。
ローラチェーンのジョイントリンクのポイントのまとめ
それでは、ローラチェーンのジョイントリンクについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- チェーンの長さを延長したり、チェーンの端と端を繋いでエンドレスにする場合には「ジョイントリンク」を使用する
- 偶数用のジョイントリンクと奇数用のオフセットリンクがある
- ジョイントピンの固定方法は、クリップ、割ピン、かしめ、の3通りある
- チェーンが届かない時にはチェーンプーラーがおすすめ
以上4つのポイントが大切です。
参考
*チェーンプーラの購入はこちらから
*チェーンのかしめ工具の購入はこちらから
関連記事:【回転運動の要素】
以上です。