今回は「ラック&ピニオンなどのオープンギアには潤滑が必要/グリースやフッ素を塗布する」についての記事です。
ラック&ピニオンは直線運動と回転運動を変換する要素として機械装置では定番です。このラック&ピニオンの組付けにはバックラッシュや歯当たりの調整が欠かせませんが、実はもう一つ重要なことがあります。それは、潤滑です。意外と忘れがちなのですが結構大切です。
そこで今回の記事では、ラック&ピニオンの潤滑の必要性についてまとめておこうと思います。
記事の目次
ラック&ピニオンなどのオープンギアには潤滑が必要
ラック&ピニオンとは
ラック&ピニオンとは、円形のピニオンギアに直線歯型のラックギアを組合わせた歯車の機構で、回転運動を直線運動に変換することができます。
出典:小原歯車工業株式会社 ラック カタログ
潤滑が必要
機械装置の駆動方式としてラック&ピニオンは一般的です。
ラック&ピニオンは歯車の噛み合いによって力の伝達をしているのですが、この噛み合い部分は金属と金属が接触し摩擦している状況です。
*補足:歯車には樹脂製もありますが、今回は一番流通している金属の歯車を前提として話を進めます。
金属が接触し摩擦すると言うことは、その部分のフリクションを低減させて摩耗を抑えるために必要なことがあります。
必要なことはコレです
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潤滑
潤滑の必要性について調べてみますと、各歯車メーカーで明言されていましたの下記に引用します。
*今回はKHKの歯車技術資料を紹介します。
引用抜粋:KHK 歯車技術資料
歯車の潤滑
歯車の潤滑の目的は、主に二つあります。それは、
- 歯面間の滑りを良くすること。つまり、動摩擦係数の値を少なくすることです。
- 歯面間にておこる、ころがり摩擦及び滑り摩擦損失による温度上昇をおさえること。つまり、歯車を冷却することです。
このように歯車には潤滑の必要があり、何かしらの潤滑方法を施さなければいけないと言うことが記載されています。
潤滑の手段
潤滑の必要性が理解できたところで、次に潤滑の手段について考えてみましょう。
潤滑の手段としては、潤滑油(オイル)とグリースの2つの方法が考えられます。
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潤滑油(オイル)・・・液状で冷却効果と浸透性が高い。密閉されていないと流出したり、飛散する。
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グリース・・・冷却効果はないが反固形でその場にとどまる。高速回転だと飛び散ってしまう。
今回のテーマであるオープンギアに最適な潤滑方法は、、、
オープンギアはその名の通り密閉された状態ではありませんので、オイルのような流動性の潤滑は難しいと思います。ましてや、ラック&ピニオンのように長い距離を直線移動すると飛散してしまいます。
ことを考慮するとオープンギアに適しているのは「グリース」と言えるでしょう。
*状況により例外も考えられます。
しかし、オープンギアに潤滑が必要だと言っても、私が今まで見てきた中にはグリースが塗布されていない場合も多くあり、実際に私もあえて塗布しないことがありました。
それはなぜでしょうか?
グリースを塗布しない状況
私が例外としてグリース塗布しない状況を説明します。
その理由は下記の4点です。
- 製品に付着する・・・飛散する
- クリーンエリア・・・発塵防止のためグリースが使用できない
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粉塵が過酷な状況・・・グリースに付着して潤滑機能が低下する
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粉塵が研磨効果のある物質・・・グリースに付着して歯車が研磨される
このような状況下では、グリースの塗布なしで使用するか、またはドライの潤滑剤であるKHK(小原歯車)さんのドライコートスプレーで対応します。
出典:小原歯車工業株式会社 ラック カタログ
ドライコートスプレー
油脂類を使えない場所、飛散を嫌う場所には、乾油脂類を使えない場所、飛散を嫌う場所には、乾燥皮膜タイプのGJS-0901ドライコートスプレー燥皮膜タイプのGJS-0901ドライコートスプレーが最適です。乾燥タイプの潤滑剤ですが、ペースが最適です。乾燥タイプの潤滑剤ですが、ペーストスプレーと同じ二硫化モリブデンを高濃度で配トスプレーと同じ二硫化モリブデンを高濃度で配合し、潤滑効果はバツグンです。合し、潤滑効果はバツグンです。真空中でも使用可能です。
**補足
私の趣味である車のミッションのギアには初期馴染みを良好にするためにフッ素を塗ることがあるのですが、ラック&ピニオンにエイトループのようなフッ素を塗布することも有効かもしれません。
オープンギア用のグリース
それでは、私が実際に使用しているグリースを紹介しましょう。
私が使用しているグリースは2種類です
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オメガ 57番・・・ベアリング用ですが、糸が引くほど粘着性があり、飛散しにくいのでオープンギアに使用している
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オメガ 73番・・・オープンギア専用。ただ、手や衣類に付着すると洗っても落ちない。
引用抜粋:オメガ 製品案内
オメガ 57番
極圧・耐水用ベアリンググリース。
メガライト添加剤が耐摩耗フィルムを形成し金属摩擦を最小限に抑えます。
粘着性が強く、回転による飛散が少ない。
シール性に飛んでおり、外部から侵入する汚れ・水・粉塵などをシャットアウトできます。
完全耐水性のため、防錆効果絶大。
オメガ 73番
オープンギヤー用グリース。
粗悪なタール分の含有はなく、夏~冬の温度差による稠度安定性に優れている。
高面圧に耐え、歯面に強固な油膜を張るためギヤー鳴りをストップできます。
薄い塗膜で長期にわたり潤滑効果を維持できるため、経費を大幅に削減できます。
グリースの使分けですが、基本はオメガ73番を使用として、何かに付着したときに洗浄して落ちないとマズイ場合とグリース飛散防止の場合はオメガ57番を使用しています。
グリースの見た目
参考としてグリースの見た目の違いを掲載しておきます。
グリースの見た目
オメガ 57番
オメガ 73番
ラック&ピニオンなどのオープンギアのポイントまとめ
それでは、ラック&ピニオンなどのオープンギアについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- ラック&ピニオンには潤滑が必要
- 潤滑にはグリースが最適
- 潤滑しない場合は、フッ素スプレーをすると初期馴染みが良いのでおすすめ
以上3つのポイントです。
潤滑の必要性と潤滑の方法は、その場の状況に応じて考える必要がありそうですが、私の方法が参考になればと思います。
参考
*私がおすすめする潤滑の購入はこちらから
関連記事:【回転運動の要素】
以上です。