今回は「なぜなぜ」と「どうすれば」分析の使い分けについての記事です。
私は製造業の仕事をしていますが、トラブルは日常茶飯事に発生します。トラブルは機械に関係することであったり、人間関係であったり、顧客からのクレームだったり、、いろいろあって目をそむけたくなります。とは言え、やっぱり仕事ですし、前向きに進んでいきたいし、、、発生したトラブルは解決しないといけません。
トラブルを解決するためには「正しい答え」「適切な方向性」で考えないと事態は悪化してしまうので、「なぜなぜ分析」と「どうすれば分析」と言う分析手法を使うのがおすすめです。
そこで今回の記事では、「なぜなぜ分析」と「どうすれば分析」の違いや、どのような思考で取り組めばよいか、について私の考えをまとめておこうと思います。
記事の目次
「なぜなぜ分析」と「どうすれば分析」
問題や課題の解決の方法
「なにか」が起きたとき、そこから前に進むためには「なにか」を解決しなければなりません。「なにか」とは事故や災害などの問題や目標達成するための課題のことです。言い方を変え出れば、「人生の壁」でもあります。
わりと簡単なことなら、落ち着いて考えたら解決できるかもしれませんが、ことが重大であるとそうはいきません。冷静さを失っていたり、焦っていたりするので思考が停止しているし、周りの人達に責められたり、騒がれたりするので、いろいろな意見が飛び交ってまとまりません。
このままでは全然前に進めないので、とある「手法」を活用するのが定番となっています。
問題や課題を解決するための手法はコレです
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なぜなぜ分析・・・対物に適した手法
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どうすれば分析・・・対人に適した手法
なぜなぜ分析は「対物に適した手法」で、どうすれば分析は「対人に適した手法」です。どちらも「正しい答え」「適切な方向性」を導き出すために有効とされていて、この分析方法を使えば自動的に答えが導き出されることになります。
「なぜなぜ分析」と「どうすれば分析」を比べる
なぜなぜ分析
なぜなぜ分析は、トヨタ自動車が発祥で製造現場の改善で培われた手法です。この手法は、問題に対して「なぜ」を繰返して原因をトコトン掘り下げ、真実の原因を見つけることにあります。
なぜなぜ分析の特徴
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原因を追究することが得意
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未来の方向性を決めるのが苦手
製造現場で生まれた手法なので、「対物=モノ」の関する問題を追究することが得意です。
なので、問題が発生した「過程」に注目して「仕組み」「システム」「やり方」の欠点を探し出します。「対物」は改善しない限り問題が継続的に起き続けるので、原因を徹底的に追究するのです。
なぜなぜ分析は、起きてしまった問題に対して「なぜ」を繰返して掘り下げるので、ネガティブな方向性で考えることになります。そのため、誤った視点で分析したり、「なぜ」を繰り返ししすぎると、「〇〇さんが悪い」と言った個人攻撃の結論になってしまったり、推測で分析してしまったり、誰からも意見がでなくなってしまうことがあります。
つまり、なぜなぜ分析は難易度が高めなので、日々のトレーニングが必要となります。
なぜなぜ分析を詳しく学びたい方
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どうすれば分析
どうすれば分析は、心理学者のアルフレッド・アドラーが提唱した目的論を元にした手法です。問題や課題を「どうすればよかったのか?」「どうすればできるのか?」の視点で分析します。
どうすれば分析の特徴
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未来の方向性を決めることが得意
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原因を追究することが苦手
「どうすれば」で分析する手法は、起きてしまった過去の問題の原因を追究するわけではないので、根本の原因を追究しないと解決できない「対物」には不向きです。つまり、これからの未来に焦点をあてて分析する手法なので、「対物=人物、人」に関係する問題に有効です。
それ以外にも、ポジティブな方向性で考えることになるので、当事者だけでなく第三者からも意見が出やすく、仲間と一緒に分析ができる特徴もあります。
ちょっと視点を変えて、、、、、実は「どうすれば分析」は仏教の「渇愛(かつあい)」という概念に共通していると思っています。
渇愛とは「人間を動かし、迷いを生じさせる欲望」されていて、人に関する問題は様々な欲望(煩悩とも言える)が寄り集まって起きていると解釈できます。ところが、欲望と言うのはその場その場で変わるものなので、いくら過去の問題を追及して原因が分かったところで、再現性がない原因なので全く役に立ちません。
このような仏教の教えをもとに考えると、過ぎ去ったことではなく「これからどうするのか」を追求し実行していくことが大切だと分かります。
アドラー心理学を学びたい方
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対物と対人は割り切れない
なぜなぜ分析は対物に向いていて、どうすれば分析は対人に向いている、、、、と言うことなのですが、私が今まで多くの問題に直面してきた経験から「対物と対人は簡単には割り切れない」と思っています。
対物と対人が割り切れない理由はコレです
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モノは扱う人がいて初めて機能するのだから、問題の原因は「モノ」と「人」が絡み合っている
純粋に「モノ」だけが関係している問題、「人」だけが関係している問題、であればなぜなぜ分析とどうすれば分析を使い分ければ解決できるはずですが、なかなか思うような解決案が見つからない場合は、これが原因かもしれません。
発生した問題に、モノと人が何パーセント関係しているかは状況によって全く違います。なので、いつも通りに「なぜなぜ分析」をしてみたら「〇〇さんが悪い」って原因になってしまった、、、、なんてことになるかもしれません。
もし、納得のいく解決案が見いだせない時には、こんな方法がおすすめです。
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「なぜなぜ分析」と「どうすれば分析」の両方の分析を試してみる
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なぜなぜとどうすればをミックスして「なぜどうすれば分析」をやってみる
問題や課題に対して「なぜなぜ分析」と「どうすれば分析」の両方を別々で分析してアプローチするのは有効です。両方試してみると、どちらかの分析で解決案が見つかることが多く、視点を変えて考えるのでいつもよりも意見が多くなるメリットもあります。
皆さんに受け入れられるか分かりませんが、私が良く使う分析方法は「なぜどうすれば分析」です。
問題や課題に対して「なぜ」「どうすれば」を組合わせて原因や今後の方向性を見出します。「なぜ」は繰返すことで原因を追究することになるのですが、どの程度繰り返すのか?は問題の程度と解決の落としどころによります。それ以外にも、「なぜ」を繰返したときに、それ以上意見がでなくなる時がありますが、そんな時に最後に出た原因に対して「じゃあ、どうすればいい?」でアプローチするのもいいかもしれません。
結局必要なことは問題の細分化と客観視と見える化
そもそもですが、「なぜなぜ分析」も「どうすれば分析」も、分析するときの「思考」次第で導き出される答えの方向性が違ってくるので、要注意です。
思考のポイントはコレです
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問題を細分化して、一つ一つ分けて考える
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感情移入せずに、第三者目線で客観して考える
- 頭の中の情報を書き出して、整理し、見える化する
このポイントは、正しい答えを導き出すために必要不可欠です。
私が今まで見てきた人たちの中で、問題解決が苦手な人は、この3つのポイントが出来ていませんでした。
ものごとをごちゃ混ぜにして考える
プライドが邪魔して感情的に議論している
なにも書かずに、頭だけで考えている
はっきり言って、これは問題解決の邪魔であるだけでなく、自分自身の状況すらも見失っているかもしれません。なのでもし、分析がうまくいかない時には、「問題を細分化して、一つ一つ分けて考える」「感情移入せずに、第三者目線で客観して考える」「頭の中の情報を書き出して、整理し、見える化する」を意識して欲しいです。
参考
細分化の考え方についてはこちらの記事をご覧ください
-
目標の達成の方法は細分化と分析力が有効【誰でもできます】
続きを見る
見える化についてはこちらの記事をご覧ください
-
見える化を組立業務に取入れる【直感で判断と管理ができる環境】
続きを見る
余談ですが、、、私の中の私
私は分析を「問題を一つ一つの事実に分けて、良いのか、悪いのか、を2択で客観的に判断し、結果を積み上げること」と解釈しています。
皆さんにはあまり共感してもらえないかもしれませんが、実は、この考えさえあれば、「知識」も「技術」も必要なく問題を解決できますし、極めてしまえば、なぜなぜ分析もどうすれば分析も意識する必要もなく自動的に解決案が導き出されるようになります。
さらに言いますと、ちょっとおかしいかもしれませんが、実は私の中には「現状を俯瞰で見つめている私」が居て、分析しているときには「無」の気持ちで考えることができます。
なので、自慢ではないですが、問題解決の能力は結構高いです。それは今までの仕事を振り返ればわかることなのですが、実際に周囲の仲間たちからも「なんでも解決できますよね、でも普通はそんな思考で考えられないですよ」なんて言われています。
私の思考がどんなものなのか?と聞かれても、なかなか言葉で表現することが難しいのですが、いつか語源化してお披露目したいと思っています。
ポイントまとめ
それでは、「なぜなぜ」と「どうすれば」分析の違いについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 「なぜなぜ分析」は対物に適した手法で、原因を追究することが得意です
- 「どうすれば分析」は対人に適した手法で、未来の方向性を決めることが得意
- 問題の原因は「モノ」と「人」が絡み合っているので、「なぜなぜ」と「どうすれば」の両方を試すか、ミックスして分析してみる
- 問題を分析するときは、「細分化」「客観視」「見える化」の思考が重要
以上4つのポイントです。
*なぜなぜ分析の入門的な本はこちらから。おすすめです。
*アドラー心理学を学ぶおすすめの本です
関連記事:【機械組立の心構えと基本】
以上です。