今回は「機械組立の進め方には自分理論が必要」についての記事です。
機械装置の組立はめちゃざっくり言えば、図面を見ながら部品を取付けて測定調整して完成、、、みたいな感じですが、本当のところはこのような「実作業のテクニック」だけでは不十分です。
何が必要なのかと言えば、自分の意思で組立を進めて、自分の意思によって完成させること、です。これを自分理論と私は呼んでいます。
記事の目次
機械組立の作業は自分理論が必要
迷いなく機械組立の作業をするために
機械装置業界の部門の一つに「機械組立」がありますが、機械組立の世界はもの凄く広いです。
私が普段組立てている機械装置は「搬送系」「加工機系」「送り出し機、巻き取り機系」「プレス乾燥機系」「洗浄機系」「プラント系」などが多く、それ以外にも単発の変わり種の機械装置を組立てています。
ざっくり言えば、「同タイプの機械装置の組立」と「多種多様な機械装置の組立」の世界があって、同タイプの組立はある程度手順が決まっているが、求める精度が非常に高精度であったりするので、精度出しの技能に磨きをかけることがやりがいとなります。多種多様な組立は手順が決まっていないことが多く、組立工の考え方によって出来栄えが左右されるので、その点にやりがいを感じます。
どのような組立であっても、経験が浅かったり、いまいちコツがつかめなかったり、自分の考えがまとまらないと、「場当たり的な作業」になり時間ばかりかかって求められる精度を出せないどころか、組立作業自体がストップしてしまうことがあります。
そんな中で、私が10年以上機械装置を組立てしてきて、ソコソコの結果を出せたのには「自分理論」を構築できたからでした。
自分理論には2つのポイントがあります
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絶対に妥協しない精度を決めること
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抽象キーワードによるイメージ化で作業手順を決める
組立てをする時には、まず図面を「よく見て観察する」ことから始まります。
そこから得られた情報をもとに、絶対に妥協しない精度を決めて抽象キーワードによるイメージ化によって作業を進めます。
これは、仕事中だけじゃなく、通勤の移動中とか、お風呂に入っている時とか、夢の中とか、でも考えています。経験が浅かったときは、夢の中で考えて朝3時に目が覚める、、、みたいなことは良くありました。
絶対に妥協しない精度を決めること
まず初めに、「絶対に妥協しない精度」を決めることから始めます。
これは作業中の「迷い」を払拭するために必要なことで、絶対に妥協しない精度以外は「どうでもいい」と言うことです。*本当はどうでもよくないのですが、そのぐらいの気持ちで取り組むってことです。
寸法、精度には「公差」と「誤差」があるので、機械装置を構成している部品たちの精度(数値)が全て「ピタリと合う」ことはありません。それが迷いの原因となるので、場当たり的な対応とならないように、絶対に妥協しない精度を決めることが大切です。
例えばこんな「絶対に妥協しない精度」があります
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芯
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直角
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鉛直
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平行
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外寸
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水平
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高さ
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ピッチ
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穴位置
- 位置関係
仮に「装置の芯は妥協しない」と決めたなら、穴ピッチが合わなくなっても仕方がない。その時は、取付ける部品を、追加工、再製作、するってことです。
どこの精度に注目するのかは、機械装置のタイプであったり、前後装置の有無、などによって違うので、考え抜いて決めるしかありません。
抽象キーワードによるイメージ化で作業手順を決める
絶対に妥協しない精度を決めたら、それ以外の精度を一括りで考えるのではなく、細かく細分化して位置づけをします。
組立に関わるキーワード
例えば、こんな組立に関わるキーワードがあります。
機械組立の作業は、1物件を終えるまでの期間が、1週間単位であったり、数か月単位であったり、物件の規模によって違います。
特に長丁場となる組立の場合は、作業途中で「どうすれば良いのか分からなくなる」ことがあります。かと言って、作業の途中で後戻りするなんてできません。
そのため、絶対に妥協しない精度をもとに、続く重要な精度を考え優先順位を決めます。
優先順位を決めて進める
例えばこんな優先順位
精度の関わるキーワードは沢山ありますが、そのキーワードを整理して、優先順位を決めます。
この優先順位は、組立途中に変更してもOKですし、キーワードが増えたり減ったりしてもOKです。
「やってみたら違った」とか、「これも重要だ」なんて気づきは良くあります。
大切なのはコレ
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自分で決めた優先順位で作業を進めること
場当たり的な対応をするのではなく、自分で決めた優先順位で作業を進めることが重要なんです。
だたし、たいした理由なく「感」で決めた「精度の優先順位」は全く無意味なので要注意です。一つ一つの精度は「なぜその精度が必要なのか?どこを基準として精度をだすのか?」の理由に意味があるからです。なので、理由がない精度出しは後戻り作業の原因となりますから、この点は注意してください。
もし、うまく考えられない場合は、下記のようなリストを「ホワイトボードに書く」「ノートに手書きで書く」ことがおすすめです。作業が具体的になります。
優先順位を具体化する
こんな感じのリストを「ホワイトボードに書く」「ノートに手書きで書く」ことがおすすめです。
何度も確認して自分理論を証明する
人は自分の行動が、その後どうなったのか?本当に良くなったのか?を検証することがない、、、と言われています。
これが仇となって組立作業に行き詰ってしまうことがあります。
忘れちゃいけない心構え
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精度を何度も確認して自分理論を証明すること
精度を何度も確認することは絶対に必要です。
人は失敗する、間違える、これ基本です。
なので、自分の一つ一つの作業、一つ一つの調整、一つ一つの測定、が本当に間違いがないのか?を作業が完了する、確定するまで、何度も確認します。
「目盛りを見間違える」「計算を間違える」「何かの原因で目盛りがズレている」「方向や位置を勘違いする」、、、、誰でも経験があるはずです。
だから、何度も確認して自分理論を証明することを意識していきましょう。
ポイントまとめ
それでは、機械組立の進め方について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 自分理論とは「絶対に妥協しない精度を決めること」と「抽象キーワードによるイメージ化で作業手順を決める」です
- 「絶対に妥協しない精度を決めること」は、作業中の「迷い」を払拭するために必要です
- 「抽象キーワードによるイメージ化で作業手順を決める」は、後戻りのない作業をするために必要です
- 組立て作業中の精度は、何度も確認することが絶対に必要です
以上4つのポイントです。
*失敗から学ぶことは沢山あります。失敗の科学は考え方を学ぶためにはおすすめです。
*おすすめの六角レンチはPBの円形タイプです
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