今回は「機械装置の出荷や荷積みで気を付けること」についての記事です。
機械装置の出荷と言えば一大イベントではないでしょうか。苦労して作り上げた機械装置を出荷することは一つの仕事が終わった安堵と達成感を味わえる瞬間だと思います。
しかし、この出荷作業はトラブルが起きやすく最悪の場合機械装置が破損してしまうことがあるので、気を抜かずにしっかりとやらなけではなりません。
そのようなことが起きないように、私は出荷の事前準備として行っていることがあります。それは、「業者の下見と打合せ」と「荷積み作業の段取り」です。今回はこの2つのポイントについて私のやり方を紹介しようと思います。
記事の目次
機械装置の出荷や荷積みで気を付けること
みなさんは「出荷作業」と聞いてなにを思い浮かべますか?
機械装置業界で出荷と言えば、組立や試運転が完了した機械装置を客先に出荷することでしょうか。
私は機械装置の組立に従事して10年以上になりますが、出荷作業に関わるトラブルが後を絶たないことに不満を感じています。
私が感じている不満とは、、、
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荷積み作業に手間取る
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トラックの台数が足りない
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輸送先に到着するまでに破損する
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機械装置のバラス部分が明確でない
私はこのようなトラブルが起きないために出荷作業がスムーズに進む事前準備を行っています。
事前準備は下記の2点です。
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業者の下見と打合せ
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荷積み作業の段取り
それでは、この2点についてさらに掘り下げて解説していきましょう。
業者の下見と打合せ
出荷前の準備として業者と下見と打合せをしておくと、出荷当日に慌てたり、無駄な時間を要したり、荷物が破損したり、などのトラブル対策になります。
下見と打合せを行う業者
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梱包業者
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運送業者
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輸出業者
この3社と綿密な打ち合わせが必要で、基本的には荷物の現物確認での打合せとなります。
梱包業者の下見と打合せ
梱包業者とは、機械装置を海外に輸出するときに港近郊で輸出相手国の規格に対応した木箱梱包を行う業者のことで、海外輸出梱包と言われます。この作業は工業梱包技能士に代表される、工業製品の輸送包装に必要な技能や知識を持った専門の方がおこなう作業です。
梱包業者の下見では、機械装置の出荷前の荷姿を見て主にサイズや物量に重点を置いた打ち合わせを行います。
梱包業者と打ち合わせておく項目
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機械装置の本体や、付属品、その他部品のサイズの測定
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破損する部分、扱い重要部分の確認
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物量(出荷する量)
機械装置の本体や、付属品、その他部品のサイズの測定
サイズの測定は梱包の木箱の大きさやコンテナサイズの確認の目的があります。木箱の大きさやコンテナサイズは運送費に関わってくるので、飛行機や船に載せられる大きさであったり、規格化されているコンテナに収まる大きさなのか?が重要ポイントです。本来は、設計段階で輸送を考慮した大きさにすべきですが見落としもあるのでやはり現物確認が必要でしょう。
破損する部分、扱い重要部分の確認
破損する部分や扱い重要部分の確認は、機械装置の外周から飛び出している部分であったり、強度が弱い部分で取り扱い注意な部分であったり、梱包時に補強して欲しい部分の確認を行います。大抵の場合は、指示しなくても専門の業者さんなので適切な補強や固定を行って梱包するので心配ないと思いますが、気になる部分があれば遠慮なくお願いします。
物量(出荷する量)
梱包工場では一度に多くの荷受けができないので物量の把握が必要です。物量が多いと出荷する日程を数日に分けたり、大きいものとパレットサイズのものを送り先を分けることがあり、荷積みやトラックの手配などの段取りに関わることなのでしっかり打合せしておいた方が良いでしょう。
運送業者の下見と打合せ
運送業者には、出荷するモノを実際に見てもらい必要なトラックの打ち合わせを行います。
運送業者と打ち合わせておく項目
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機械装置の本体や、付属品、その他部品のサイズの測定
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物量の把握
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破損する部分、扱い重要部分の確認
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出荷の日程
打ち合わせる内容はほぼ梱包業者と同じですが、その目的には違いがあります。
機械装置の本体や、付属品、その他部品のサイズの測定
サイズの測定の目的は、トラックに積載できる大きさなのか?どの大きさのトラックを手配するのか?に関わることです。大きいサイズとなるとトレーラーの手配となりますが、運送費が高くなるうえに幅が広いだけで実際はあまり荷物を載せられません。それは全長方向がリアタイやが邪魔になるので、思っているほど長い荷物が積載できないのです。しかも、トレーラーは過積載の懸念から警察の取り締まりが強化されているので、1車に1台の機械装置しか荷積みしないのか基本です。そうなると荷台が大きい割にメリット感じなですよね。ですから、もしバラスことができるのなら10t車に載せられるサイズにするべきでしょう。
物量の把握
物量の把握は、何台のトラックが必要なのか?どのタイプのトラックが最適か?の判断となります。物量が多い場合は、一度にすべての荷物を複数のトラックに載せることは不可能なので、時間をずらしてに荷積みをおこなう段取りが必要ですし、特別な荷締めやシーティングが必要ないウイング車で積載可能ならはそれに越したことが無いのです。
破損する部分、扱い重要部分の確認
破損する部分や取扱重要部分は、荷積みや荷下ろしで破損しそうな部分、シーティングで破損しそうな機械装置の天辺部分、フォークリフトで持ち上げるであろう機械装置の真下などを確認します。破損しそうな部分は一か八かで出荷するのではなく、安全重視でバラス必要がありますし、フォークリフトで破損させそうな部分は機械装置の真下なのでバラスことができないでしょうから機械装置の正面真下に張り紙やマーキングで爪を刺して良い部分と刺してはいけない部分(突起物あり)の表示をしておくと良いでしょう。
出荷の日程
出荷の日程は、客先搬入日、梱包業者の受入れ可能な日(飛行機や船の便から逆算して算出)によって決定するので、いつ、何台トラックが必要なのか?の打合せを行います。もし、日程が確定していなくてもおおよその日程は分かっているでしょうから仮押さえしておき、確定したら早めの連絡をおこないましょう。トラックの段取りは最悪は当日でも何とかなるものですが、当日手配の場合は夜遅くにはなることもあるのでお勧めできません。
輸出業者の下見と打合せ
海外に出荷する時には、日本の港から現地までの輸送手配、輸出手続きを担う輸出業者さんが必要不可欠です。
輸出業者と打ち合わせておく項目
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出荷する現物と出荷リスト(SDS)の確認
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日程の打合せ
出荷する現物と出荷リスト(SDS)の確認
輸出に関わる書類と現物の確認を行います。その際には出荷リスト(仮でも可)なども用意して荷物のサイズや物量などが把握できるようにしておくと良いです。
日程の打合せ
海外出荷の場合は、飛行機や船の都合があるため日程調整が欠かせません。特に船の場合はどこの港で載せるか?によっても出荷の日程が変わってきます。また、この日程は運送業者、梱包業者にも関わってきますので、この3社の連携が欠かせません。
業者の下見と打合せまとめ
それでは、業者の下見と打合せついてまとめておきましょう。
現物確認による打合せのポイント
- 機械装置の本体や、付属品、その他部品のサイズの測定
- 破損する部分、扱い重要部分の確認
- 物量(出荷する量)
- 出荷の日程
- 出荷する現物と出荷リスト(SDS)の確認
以上、5つのポイントです。
荷積み作業の段取り
では次に、私が出荷の事前準備として行っている「荷積み作業の段取り」について話を進めます。
荷積み作業の段取りは下記の6つの項目です。
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荷締めする部分を決めておく
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フォークリフトとクレーンのどちらで荷積みするか決める
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吊りと持ち上げが可能な部分の表示する
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荷物はパレット積みが基本(ウイング車が有利)
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トラックの種類の確認
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盤木の有無と大きさ
それでは、この6つの項目を詳しく解説していきましょう。
荷締めする部分を決めておく
荷物をトラックに積み込む時の荷姿には基本があります
荷姿の基本はコレです
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基本はパレット積み
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大きい荷物はトラックの荷台に荷締めする方法を決めておく
基本はパレット積み
荷物を出荷するときの基本はパレット積みだと思います。パレットに荷物が荷崩れしないようにラップやPPバンドで固定しておくとフォークリフトで簡単に積み込むことが出ます。ただパレットには注意点があるので説明しておきます。海外に出荷する場合は、防腐処理、防虫処理していない木材は海外に送れないと言うことです。荷物の補強として(荷物の一部として)盤木使用することはできませんし、パレットに関しては港で梱包するときに木箱に詰め替えるので、パレットは廃棄となるため不要なパレットで十分です。もし、ちょうどいいサイズのパレットがない場合は木材のパレット製作してくれる材木屋さんがあるのでサイズを指定すれば作ってもらえます。価格は1パレット6000円前後となります。
大きい荷物はトラックの荷台に荷締めする方法を決めておく
パレットに載せられない機械装置のような大きな荷物は、慎重な積込みが必要なのですが意外と見落としなのが荷物の固定です。フレームがカバーで覆われていたり、良い位置に固定できそうな柱がないなどトラックの荷台とレバーブロックやラッシングで固定ができない場面が見受けられます。載せてみたけど固定できない、、、どうしましょう、、、このようなことが起きない為には、設計段階でフレームに固定用のアイボルトを取付けておく、梱包時にフレームのカバーは外しておく、などの対策が必要です。いい加減な荷締めによって、荷物が破損したり、フレームが歪んでしまわないように考えておくと良いでしょう。
フォークリフトとクレーンのどちらで荷積みするか決める
荷物の基本はパレットですがパレットに載らない荷物、例えば大きくて形状が複雑なものはフォークリフトとクレーン(ホイスト)のどちらで積み込むか決めておくと良いです。
特に、クレーンを使用する場合は、荷物のバランスが重要になるので、荷物のどこに掛けてるのか?吊り具は何をしようするのか?吊り治具は必要か?などがポイントとなります。フォークリフトのようなスピーディーな作業ができないので、積込み直前になってバタバタしないように事前にクレーンで吊ってみて確認しておくと良いでしょう。
吊りと持ち上げが可能な部分の表示する
吊りと持ち上げが可能な部分とは、スリングで吊り上げたりフォークリフトの爪で持ち上げる部分のことで、荷物の最下面のことを指しています。機械装置の本体フレームで説明しますと、フレームの最下面には「何か」が飛び出していることがあり、吊ったり持ち上げるときに破損させてしまうことがあります。それ以外にも、重心位置によっては上手く水平に上げることができないこともあります。
対策としては、安全かつ水平に吊りと持ち上げが可能な部分を梱包のラップの上から、マジックで書く、用紙で表示を作り張り付ける、などの方法で表示するのがおすすめです。表示があると作業に迷いがなくなり時間の短縮が期待できますし、荷下ろしするときにも役立つでしょう。
荷物はパレット積みが基本(ウイング車が有利)
パレット積みとは、パレットに荷物を載せてラップやPPバンドで固定しパレットと一体化させておくことで、この状態が荷物の出荷の基本となります。
パレット積みにすることで、フォークリフトで積むためスピーディー、特別な荷締めが不要、バンタイプ/ウイングタイプのトラックに積み込みができるのでシーティングが不要、などのメリットがあります。これは非常に効果的で速くて安全です。
トラックの種類の確認
トラックには中型車、大型車、トレーラー、ボディの形状、荷台の大きさなどの種類が豊富なので事前に確認するか、指定しておくと良いと思います。
トラックの種類で確認しておく重要ポイント
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トラックの種類(中型、大型、トレーラー)を把握しておく
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荷台の高さ(地上高)を指定しておく
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盤木の有無と大きさを指定しておく
トラックの種類(中型、大型、トレーラー)を把握しておく
トラックの種類は、中型、大型、トレーラーなのかによって載せられる荷物の量が変わってきますが、事前に輸送業者と打合せしている場合はそれほど気にする必要はないでしょう。ここで私が注目したいことは、工場の建屋内にトラックが入るか?と言うことです。機械装置メーカーでトラックヤードを持っている企業はそうはないと思います。大抵の場合は機械装置を組立てている工場にトラックを入れて積込み行うはずです。そうなりますと、工場の建屋内にトラックをいれて、尚且つ積込みができるような状態にしておかなけれななりません。積込み当日にトレーラーがやってきて資材が邪魔で工場に入らない、、、なんてことにならないように準備しておきましょう。
荷台の高さ(地上高)
トラックの荷台の高さは意外と重要です。積込み作業で荷台の高さが重要になる、、、、これはクレーン(ホイスト)を使用した積込み作業において巻き上げ量の限界で荷台の高さまで荷物が上がらず荷物が載せられないことが起きるためです。これは高さ方向に長い荷物におきることなのですが、吊り上げ高さに余裕がない場合は、荷台の高さを事前に確認しておく、低床(床が低い)のトラックを指定しておく、などをおこなう必要があります。
盤木の有無と大きさ
機械装置のような大きな荷物はトラックの荷台に盤木受けして荷締め、輸送することが基本です。しかし荷物の基本系であるパレットは盤木を必要としないので盤木を積んでいないトラックを多く見かけます。トレーラーのように大きな荷物を輸送する前提のトラックは盤木を準備していますが、多くの機械装置は10t車で出荷することが多いと思います。そのような時には盤木を準備していないことがあるので、機械装置のように大きな荷物を載せることができません。
ですから、盤木が必要な場合は、盤木の大きさ、盤木の長さ、をしっかり伝えて出荷当日にトラックに準備してくるように依頼しておきましょう。私の経験では、依頼しておいてもトラックのドライバーに伝わっていなくて盤木を準備していないことが多々あります。そうならない為にも、ここは強く要望しておきます。
荷積み作業の確認事項まとめ
それでは、荷積み作業の確認事項ついてまとめておきましょう。
荷積み作業のポイント
- 基本はパレット積み
- 大きい荷物はトラックの荷台に荷締めする方法を決めておく
- フォークリフトとクレーンのどちらで荷積みするか決める
- 吊りと持ち上げが可能な部分の表示する
- 荷物はパレット積みが基本(ウイング車が有利)
- トラックの種類(中型、大型、トレーラー)を把握しておく
- 荷台の高さ(地上高)を指定しておく
- 盤木の有無と大きさを指定しておく
以上8つのポイントです。
まとめ
今回紹介した、私が行っている出荷の事前準備は「業者の下見と打合せ」と「荷積み作業の確認事項」で、この2つの中身はさらに深いものになります。この記事を読まれた方にはそれぞれ置かれている環境に違いがあるでしょうから、共通することは少ないかもしれません。しかし、今回の記事の内容は私が長年経験してき結果ですから、それほど的外れの話ではないと思います。もし頭の片隅にこのような事前準備があると知っておいていただければ役に立つことがあるかもしれません。参考にしてください。
*荷締めにおすすめはラッシングベルトです
*レバーブロックは強力に荷の固定ができます
関連記事:【機械組立の心構えと基本】
以上です。