今回は「クリーンルームでありがちな禁止行動」についての記事です。
クリーンルームでの作業は制約が多くて、守らなければいけないルールが沢山あります。私のように機械装置メーカーとしてクリーンルームで作業をする場合は、異物を発生させたり、飛散させるなどの行為は厳禁なので、非常に気をつかう作業です。
今回の記事では、クリーンルームで作業をするときに注意したい行動についてまとめておこうと思います。
記事の目次
クリーンルームでありがちな禁止行動
クリーンルームでの作業
クリーンルームは半導体、製薬関係など多くの製造現場で用いられる部屋で、基本的にはどんな小さな異物の混入も許されません。
ところが、異物と言うのは人やモノが出入りしたり、機械装置が稼働することで必ず発生してしまいます。特に、クリーンルームでの作業に不慣れな工事関係者や機械装置メーカーの作業者は、自分の行動や作業のやり方に細心の注意をしておかなければ大問題になりかねません。
私は機械装置メーカーとして、クリーンルームで作業をする機会が多いのですが、工事エリアと呼ばれる製造が開始されていない場所では「バリバリの工事」となるので異物には注意するものの致し方ないこともあります。その逆に、製造を行っているエリアでの作業となると非常にピリピリした雰囲気になります。客先の製造作業者や工事担当者からの注文や指摘も多いですし、「異物の発生=製品不良」に直結しているからです。
禁止行為は6つ
クリーンルームで作業を行う場合に、ありがちな禁止行為を機械装置メーカー目線でまとめてみます
クリーンルームの禁止行為は6つです
-
走る
-
大声を出す
-
道工具が汚れている
-
スプレーを使用している
-
クリーンウエアが乱れている
-
ゴム手袋やクリーンウエアが汚れている、破れている
異物を「持ち込まない」「発生させない」「飛散させない」「付着させない」の4つのポイントを元にこのような点に注意をして作業を行っています。
禁止行動の解説
走らない
現場作業は時間との勝負なので、急ぎたい気持でついつい走ってしまうことがあります。
これはクリーンルームだけの話しではなく、どのような作業であっても共通して言えることですが「走る」行為は禁止で「急ぎ足」は要注意です。
走ってはいけない理由
-
転倒して災害が発生する
- 汗をかいてナトリウムイオンが発生する
-
気流が発生して異物が舞い上がる、飛散する
現場の慌ただしい状況で走っていれば転倒するリスクは高いです。転倒すれば作業者がケガをするだけでなく、周囲のモノが散乱、飛散することもあるのでそれによって異物が発生してしまいます。
汗はクリーンルームでは天敵で、汗に含まれるナトリウム(金属)が問題になります。空気中に飛散したナトリウムイオンは半導体や電子部品に付着して不良品の原因となります。これをナトリウム汚染と言います。
走る行為は気流が発生するので、床に落ちていた異物や自分に付着していた異物を周囲にまき散らすことになってしまいますので厳禁です。
大声を出さない
現場作業だと、ついつい大きな声を出してしまいがちですが、クリーンルームでは大声は禁止です。
大声を出してはいけない理由
-
飛沫が飛散する、マスクをしていても飛散する
クリーンルームではマスク着用が原則ですが、マスクを着用していても大声を出したりくしゃみをすると、マスクを貫通したり、マスクのすき間から飛沫が飛散します。
一体何が含まれているか分からない飛沫が飛散することは、ナトリウム汚染と同様に製品に悪影響を及ぼしかねませんし、発生した気流によって異物も飛散する可能性もあります。
道工具は綺麗にしておく
作業に欠かせない道具、工具ですが、クリーンルームに持ち込む道工具は綺麗にしておかなければなりません。
道工具は綺麗にしておく理由
-
道工具の汚れがクリーンルーム内に飛散、付着する
道工具は使えば使うほど汚れますし、薬品を使用している機械装置に使用したならば腐食も発生します。汚い工具で機械装置をメンテナンスすれば余計に汚くなり、自分の手袋にも汚れが付着するわけですから、周囲に転写することもあります。
なので、クリーンルームに持ち込む場合は、事前に清掃しておく必要があります。もちろん道工具だけでなく、入れ物である工具箱も清掃しておきます。他の方法としては、クリーンルーム専用のステンレス製の工具をクリーンルーム以外の作業と使い分けるのも良いです。
スプレーは使用しない
作業をする場合、オイルや洗浄のスプレーを使用することがありますが、クリーンルームではスプレーは禁止です。
スプレーが禁止の理由
-
ガスの物質が飛散する
-
スプレーの物質が必要以上に飛散する
機械装置をメンテナンスしていると、ねじが緩まなくて緩み用のオイルをスプレーしたり、汚れた部品をパーツクリーナーで洗浄したり、することが良くあります。
ところがこのような行為をクリーンルームでおこなうと、ガスの物質やスプレーの物質が飛散して製品に付着したり、汚染の原因となります。
なので、持ち込みたい場合はスプレータイプではなく「液体」の状態で持ち込んでクリーンウエスに浸み込まして使用するようにして、液体の持ち込み不可の場合はクリーンルームの外に持ち出して作業をすると良いです。
クリーンウエアはきちんと着こなす
クリーンウエアで作業をしていると、知らず知らずのうちに服が乱れていたり、初めからきちんと着こなしていない、ことがありますがクリーンウエアはきちんと着こなしていないと意味がなく、異物の発生や飛散の原因になるので要注意です
クリーンウエアはきちんと着こなさないといけない理由
-
皮膚が露出して皮脂や汗が飛散する
-
インナーウエアから繊維が飛散する
帽子の襟がクリーン服から出ていたり、暑いからと言って腕まくり状態になっていたり、することが結構見受けられます。
しかしこのような乱れではクリーンウエアを着ている意味がなくなってしまうので、クリーンウエアは鏡を見てキチンと着こなし、作業中に服が乱れたら作用者同士で注意し合うと良いです。
ゴム手袋やクリーンウエアが汚れている、破れている
作業をしているとゴム手袋やクリーンウエアが汚れたり、破れてしまうことがありますが、汚れたり破れてしまったら交換するか、洗濯しなければなりません。
ゴム手袋やクリーンウエアの汚れと破れの悪影響
-
皮膚が露出する
-
汚れが周囲に転写する
-
ゴムや繊維が飛散する
クリーンウエアは洗濯、クリーニングして何度も使用しますが、落ちない汚れがどうしてもあり、次第に汚れが目立つようになってしまいます。それ以外にも、ホツレができていたり、ひどいと破れてしまうことがあります。汚れが目立つ、ホツレ、破れがある場合は、新品に交換するしかないです。管理したい場合は、1年に一回交換とか一定回数使用したら交換などのルールを決めておくのも良いです。
ゴム手袋は作業していれば破れてしまいます。破れてしまうのは仕方ないのですが、そのままの状態で作業を継続するとゴムや皮脂が飛散してしまいます。また、汚れてしまったゴム手袋をいつまでも使用する行為も、汚れが周囲に広がってしまうのでよくないです。なので、ゴム手袋が破れたり、汚れが目立つようであれば即交換するようにしましょう。
ポイントまとめ
それでは、クリーンルームの禁止行動について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- クリーンルームでの作業は行動に注意しないと異物を発生や飛散させてしまう
- 禁止行動は6つあり、作業者に徹底させる必要がある
- 異物だけでなく、汗にも注意が必要。汗をかくとナトリウムイオンが発生して製品が不良になる
以上3つのポイントです。
*クリーンルームについてはこちらの記事で紹介しています
-
クリーンルームとは【クラスの規格とクリーン服の種類】
続きを見る
関連記事:【作業/工事/ユーティリティ】
以上です。