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【作業/工事/ユーティリティ】

塩ビ配管の接合方法【差込み量と接着に注意して接続】

2020年6月16日

 

今回は「塩ビ配管の接合方法/塩ビ配管の差込み量と接着」についての記事です。

塩ビ配管の施工は接着剤で接合する方法なのでDIYでも施工できますが、作業のポイントを押さえておかないと失敗やトラブルの原因になりますので注意が必要です。

例えば、差込みの施工不良で漏れが発生したり配管の全長が合わなくなることがあります。

そのようなことが起きないために、今回の記事では塩ビ配管の差込みの接合方法について詳しく解説しようと思います。

 

塩ビ配管の接合方法

接合方法の種類

塩ビ配管の接合は「接着」と「塩ビ溶接」の2つの方法があります。

*PP配管の場合は「溶着」と「溶接」の方法で接合します。

 

接合方法

  • 接着・・・接着剤をパイプと継手に塗布して挿入する
  • 溶接・・・パイプと継手を差し込んだ後に、専用の溶接棒で外周を溶接する

 

塩ビの配管施工は接着剤で接着する方法が一般的で、接合不良(接着の失敗)や配管の割れなどで漏れが発生した場合に塩ビ溶接で補修することが通例です。

 

塩ビ配管の継手

塩ビのエルボとソケット

 

接着の注意点

塩ビ配管の接着(差込み)は、口径の大きさによって方法が違うので注意が必要です。

  • 口径がおおよそ40Aまでは人力で挿入ができる。それ以上は人力では差込みができない
  • 大口径は遅乾タイプの接着剤の使用と、道具を使用した差込み方法となる

 

この点は注意しておきましょう。

 

塩ビ配管の差込み量と接着

接合手順

それでは、人力で差込みができる塩ビ配管の接着による接合の手順を紹介します。

  1. パイプの差し込み量を確定させる
  2. 差込み量を罫書く
  3. 継ぎ手とパイプに接着剤を塗布する
  4. 差し込む
  5. マーキングして完了

 

私はこの5つの手順で進めています。

それではそれぞれの作業手順について解説してきます。

 

1.パイプの差し込み量を確定させる

パイプの差し込み量は、実はいい加減です。

と言うのは、必ずしも継ぎ手の一番奥まで入れる必要はなく、継手のテーパーが効いて接着できていれば実用可能だと言うことなのです。私のやり方、経験でも一番奥まで入れなくても漏れたことはありません。漏れる場合は差込み量以外の原因があります。

 

配管材メーカーの旭有機材のカタログで確認してみますと、下記の方法が記載されています。

ゼロポイントまでの挿入長さ(軽く挿入して止まる所) + 受口長さの1/3 = 実用可能

 

引用抜粋:旭有機材 配管カタログ TS接合の施工

塩ビの差込み方法

接着剤を塗布しない状態での挿入長さ(ゼロポイント)に継手受口ℓ の約1/3をプラスした位置まで挿入すれば実用上充分な耐水圧 強度があることが確認されています。

(中略)

必ずしも継手 のストッパーまで挿入する必要はありません。

 

私の場合はメーカーの方法と違い「継手の受口長さの8~9割まで入っていればOK」としています。

その理由には、配管径が大きくなるほど挿入時の抵抗が大きくなるので、大きな力が必要となりますが、そうなると継手の一番奥まで差込むのに手間取っているうちに接着剤が固まってしまい施工不良となりかねません。

ですから「安定して挿入できる控えめな差込み量」を基準として施工しています。

*ただ、作業者によっては腕力が強く、大きなサイズでも奥まで差込むことができる人もいますので、作業者に応じて差込み量を検討すれば良いでしょう。

 

それでは実際にやってみましょう。

今回は配管サイズVP30で実際に作業を進めます。

 

測定

*クリック拡大

差込みの測定
実用可能な差込み計算:18mm(ゼロポイントまでの挿入長さ) + 15mm(受口長さの1/3)= 33mm(実用可能な差込み量)

私の差込み計算:45mm(受口長さ) × 0.9 = 40.5mm(9割差し込み量)

 

いかがでしょうか。差込み量が大きく違うのですが、どちらも問題がないという所が「パイプの差し込み量は、実はいい加減です。」と言うことになっているのです。

 

2.差込み量を罫書く

差込み量が決定したら、パイプ側にマジックで差込み量を罫書きます。

 

罫書きの目的は下記2点です。

  • 「差込みすぎ」「差込み不足」を防止する
  • 接着剤を塗る範囲を分かり易くする(必要以上に塗らない)

 

罫書きは数ミリのズレは気にする必要はないので、150mmのサシやメジャーとマジックで手際よく罫書きます。

 

それでは実際にやってみましょう。

前項で差込み量を計算しましたが、その計算値をパイプ側にマジックで罫書きます。

 

罫書く

*クリック拡大

差込みの罫書き

私の差込み計算:45mm(受口長さ) × 0.9 = 40.5mm(9割差し込み量)

 

3.継ぎ手とパイプに接着剤を塗布する

接着剤の塗布にはポイントがあります。

  • 手際よくスピーディーに塗る
  • 塗布する順番は「継手」⇒「パイプ」
  • 接着剤が膜切れしないように均一に塗布する

 

手際よくスピーディーに塗る

スピーディーに塗る理由は塩ビ配管用接着剤の特徴に関係しています。

接着剤の特徴は「乾燥して固まる」「塩ビを溶かす」の2つで、塗った瞬間から乾燥し、塩ビが溶けるので素早く差込まないと接着性能が低下してしまうためです。

 

接着剤が膜切れしないように均一に塗布する

接着剤の膜切れとは、差し込み面に接着剤が塗れていない部分があることです。

均一に全体的に塗布できていないと、差し込みの抵抗が挿入途中で重たくなり罫書きまで差込み出来なかったり、接着が出来ていない部分が発生して漏れの原因となります。

 

塗布する順番は「継手」⇒「パイプ」

塗布する順番も重要です。

接着剤は継手とパイプの両方に塗布する必要がありますが、初めにパイプに塗布すると、継手に塗布する間に手元に置いておくことになりリスクとなります。リスクとは接着剤が露出した状態なので、液だれや接着剤にウエスなどが付着してしまうことです。

逆に、初めに継手に塗布する場合は、接着剤が露出していないのでパイプに塗布する間に手元に置いておいてもトラブルが起きにくいと言えます。ですから、接着剤の塗布は初めに「継手」でその後に「パイプ」に塗布します。

 

それでは実際にやってみましょう。

継手、パイプ共に全体的に均一に塗布します。特にパイプ側は罫書きよりも塗布する必要はないので注意しましょう。

 

接着剤の膜切れ

*クリック拡大

塩ビパイプに接着剤を塗る

ウエスを下に敷いて、接着剤が垂れても大丈夫なようにしておきましょう。

 

4.差し込む

差し込みにはポイントがあります。

  • 人手で罫書きの位置まで差込む
  • パイプが抜けてくるので、一定時間押さえ続ける

 

人手で罫書きの位置まで差込む

罫書きの位置まで差込まないと漏れの原因と全長不足になりますし、罫書きより入りすぎると配管全長が合わなくなります。

 

罫書きの位置まで差込む

*クリック拡大

塩ビ配管の差込み方法

 

パイプが抜けてくるので、一定時間押さえ続ける

パイプは差込むと抜けてくるので注意が必要です。

その理由は、継手の差し込み口がテーパー形状であることです。テーパー形状の継ぎ手にパイプを差込むとパイプが抜ける力が発生しますので、接着が落ち着くまで押さえておく必要があります。

押さえておく時間は「配管径が大きくなるほど」「気温が低くなるほど」「接着剤を沢山塗布するほど」長時間押さえないと抜けてきます。

配管径 50以下 配管径 65以上
抜けやすさ 抜けやすい とても抜けやすい
固定時間 夏 30秒以上 1分以上
固定時間 冬 30秒以上 2分以上

 

実際にパイプが抜けてくるかやってみました。

パイプの抜け

*クリック拡大

塩ビ配管の施工方法

 

5.マーキングして完了

普通は差し込み完了で作業は終わりですが、私は差込みが完了したらマーキングをしておきます。

 

なぜマーキングをするのか?その理由は、、、

  • パイプが抜けていないかの確認
  • 接着剤を塗布して差込んだ証拠

 

パイプが抜けていないかの確認

前項で「パイプが抜けてくるので、一定時間押さえ続ける」と言いましたが、ごく稀に差し込み完了後に抜けてくる場合があります。

そのため「目視で抜けていないか?」の確認ができるように、差し込み後にマーキングしておくと良いのです。

 

実際にマーキングしてみました。

マーキング

*クリック拡大

配管のマーキング

十字にマーキングして「抜け」と「回転」のズレ対策をする。

 

接着剤を塗布して差込んだ証拠

塩ビ配管の漏れの原因に「接着剤のうち忘れ」と言うことがあります。普通ではありえないのですが、膨大な配管を施工していると仮で継ぎ手に差込んだ配管をそのまま施工してしまうことがあるのです。

ですから、接着剤を塗布し罫書きまで差込んだ証としてマーキングすることをルール化やルーティンとすれば施工不良が減少すると思うのです。

 

塩ビ配管の差し込み量と接着のポイントまとめ

それでは、塩ビ配管の差し込み量と接着ついて重要なポイントをまとめておきます。

 

ポイント

  • 差込み量の目安 ⇒ ゼロポイントまでの挿入長さ(軽く挿入して止まる所) + 受口長さの1/3
  • 差込み量はマジックでケガいて、ケガキに合うように差し込む
  • 接着剤は、継手を先に塗布し膜切れがないようにに注意する
  • 差し込んだら一定時間押さえておかないと抜けてくる
  • 接合後にマーキングをするとトラブル防止になる

 

以上5つのポイントです。参考にしてください。

 

補足情報

HTの塩ビは要注意です

塩ビ配管の差込み量に関して、「HTの塩ビ配管」に関して注意点があるので紹介しておきます。

 

HTの塩ビ配管はVPやHIと違い「硬い」ので、特有の注意点があります。

  • 切断時はカッターの刃が欠けることがある
  • HTは硬いので接着剤で溶けにくく挿入抵抗が大きい
  • 切断面は必ず面取りしないと、挿入しにくく失敗することがある

 

この注意点の対策はコレです

  • 切断面は必ず面取りをおこなう
  • ノコ刃で切断するか、温めてカッターで切断する
  • 接着剤を2度塗りする。1回目はパイプに塗って表面を溶かして拭き取る。2回目で継手とパイプに接着剤を塗って挿入する

 

口径が大きくなるほど顕著に表れるので、この方法を参考にしてください。

*塩ビ配管の解説はこちらをご覧ください ⇒ 「塩ビ配管の種類と接着剤の使分け」

 

ミカルクラックとは何か?

旭有機材の配管カタログを読んでいたら「ソルベントクラック」と言う初めて耳にする用語がありましたので、紹介しておきます。

 

引用抜粋:旭有機材 配管カタログ TS接合の施工

接着剤の塗りすぎにご注意ください(ソルベントクラックが発生 し破損する恐れがあります)。低温下での施工は、溶剤蒸気が蒸 発しにくく残存しやすくなるため、注意が必要です(ソルベントク ラックが発生し破損する恐れがあります)。

 

ソルベントクラックとはケミカルクラックなど様々な同意語があるようですが、詳しく調べてみますと今回の要件に該当する記事を見つけました。

 

引用抜粋:クボタケミックス よくある質問 ソルベントクラックとはなんですか?

ソルベントクラッキングとは、ストレスクラッキング(応力亀裂)の一種であり、溶剤(solvent)の加わったときに生じる亀裂現象を特に区別していう。
塩ビ管の場合は、
(1)溶剤の存在(接着剤・防腐剤など)
(2)応力(熱応力・TS接合部の応力・生曲げなど)
(3)低温下での配管の3要因が加わったときに発生することがあります。

*記事の続きはこちらから ⇒ ソルベントクラックとはなんですか?

 

今まではソルベントクラックについて気にしたことはありませんでしたが、気が付いていないだけで問題が起きていたかもしれません。注意したいですね。

 

まとめ

今回は塩ビ配管の差込み量について、私のやり方を解説しました。差込み量については賛否があるかもしれませんが、まずは実際に自分でやってみてどの程度差込みができるか確認すると良いでしょう。

*塩ビ配管と接着剤の種類についてはこちらの記事で解説しています。 ⇨ 「塩ビ配管の種類と接着剤/使分け」

 

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関連記事:【作業/工事/ユーティリティ】

以上です。

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