今回は「冷間引抜と研磨(センタレス)の丸棒反り精度」についての記事です。
みがき丸棒を回転軸として使用することは良くあると思います。
しかし、みがき丸棒には種類があり、種類によって精度に違いがあります。
と言うことで、みがき丸棒の種類による精度についてまとめておこうと思います。
みがき丸棒の精度
私は、回転軸としてみがき丸棒を使用する事が多く、そしてその精度に苦労してきました。
私の言う、みがき丸棒の精度とは下記の2点です。
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反り(振れ量)
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径の公差
回転軸として使用する場合には非常に重要な要素です。
みがき丸棒の種類
軸やシャフトの素材として「みがき丸棒」が使用されることが多いと思いますが、みがき丸棒には種類があります。
みがき丸棒には下記の3種類があります。
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切削(ピーリング)
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冷間引抜
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研磨(センタレス)
このうち、回転軸として使用する場合は「冷間引抜」と「研磨」を選定することが多いと思います。
*みがき棒の種類についてはこちらの記事で解説しています。
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みがき丸棒の表記と認識間違い【磨き棒のなぞ】
続きを見る
回転軸として冷間引抜と研磨のみがき丸棒を使用する場合、冒頭でも言っていますように、反り(振れ量)と径の公差が重要になってきます
では、具体的に冷間引抜と研磨の精度はどの程度なのでしょうか?
次項で、精度を比べてみようと思います。
冷間引抜と研磨(センタレス)の反り精度
私は今までに、みがき丸棒を何百本と精度を測定してきました。
*みがき丸棒の種類は、冷間引抜と研磨です。
下記におおよその値ですが、それぞれの精度を示しておきます。
みがき丸棒のプロフィール
- 軸径:12mm
- 長さ:約800mm
- 素材:SUS304
- 測定本数:500本
- 加工方法:鋼材屋から冷間引抜と研磨の丸棒を購入して最後に追加工した
*みがき丸棒の精度の平均値
冷間引抜 | 研磨(センタレス) | |
振れ量(mm) | 0.6~0.1 | 0.08以下 |
軸径公差の平均値(mm) | -0.03 | -0.01 |
*振れ量はダイヤルゲージで測定
*軸径はマイクロメータで測定
上記の結果から研磨(センタレス)の精度が良い事が分かると思いますが、全長が長くなると精度は悪くなります。
長いみがき丸棒のプロフィール
- 軸径:12mm
- 長さ:約1100mm
- 素材:SUS304
- 測定本数:100本
- 加工方法:鋼材屋から冷間引抜と研磨の丸棒を購入して最後に追加工した
*シャフト精度の平均値
研磨(センタレス) | |
振れ量(mm) | 0.03~0.3 |
軸径公差の平均値(mm) |
-0.01 |
*振れ量はダイヤルゲージで測定
*軸径はマイクロメータで測定
測定値から分かること
上記の測定値から分かることは、やはり「研磨(センタレス)の方が精度が良い」と言うことです。
これは製造方法に違いがあるので、当たり前のことなのですが再確認しましたね。
補足として、、、
回転軸の反り(振れ)については、注意が必要です。
それは、回転軸を追加工すると「作業のやり方(シャフトの固定方法)」や「加工による残留応力開放」などにより、反りが発生すると言うことです。
つまり、冷間引抜や研磨の区別なく、追加工によって反りが起きる可能性があるのです。
ですから、上記の測定結果の反り(振れ)については「参考」にしかならないかもしれません。
まとめ
今回は、みがき丸棒の冷間引抜と研磨の精度について考えてみました。安価な軸として考えた場合、みがき丸棒を使用することが良くあることです。しかし、安価だからといって精度をないがしろにすると「組付けができない」「はめ合い公差がゆるすぎる」なんてことが起きるかもしれまんので、注意しましょう。
*軸の振れ測定についてはこちらの記事をご覧ください。
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シャフトや軸の振れ量の測定 【曲がりの矯正方法】
続きを見る
*軸の振れ測定にはダイヤルゲージがおすすめです。
*振れ測定にはVブロックが必要です。
関連記事:【材料/溶接/加工/表面処理】
以上です。