今回は「ユニクロめっきの六価クロムは有害で規制あり」についての記事です。
ユニクロめっきと言えば、金属の表面処理としては定番でしたが、昨今は三価クロメートに移行してきています。
今回は私が実感していることを含めて表面処理についてお話しようと思います。
記事の目次
ユニクロめっきの六価クロムは有害で規制あり
金属と表面処理
機械装置にはあらゆる金属部品が使用されていますが、その金属部品には表面処理されることが一般的です。
なかでも材質が「鉄」のように「錆び」が発生する部品には必ずと言っていいほど表面処理を施します。
表面処理の種類には「めっき」や「塗装」がありますが、安価で一度に多くの処理ができる表面処理として「ユニクロめっき」が主流でしたが、現在はある事情から使用しないように変わってきています。(現在でも使用している装置メーカーはあります)
参考
*表面処理についてはこちらの記事でも紹介しています
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表面処理の問題点と膜厚を検証する【めっきの違いで精度が変わる】
続きを見る
ユニクロめっきの有害性と規制
めっきに使用される物質に六価クロムがありますが、この六価クロムは非常に有害です。
引用抜粋:日本化学工業六価クロム事件
六価クロムの悪影響(健康)
- 六価クロムは毒性で0.5~1グラムが致死量
- 皮膚や粘膜に付着すると皮膚炎や腫瘍に
- 粉塵を吸い込むと鼻中隔穿孔を引き起こす。
- 発癌性物質でもあり、肺癌などになる。
- 消化器系にも影響があり、長期的には消化器系の癌の原因になる。
六価クロムの悪影響(環境)
- 六価クロムは高濃度の場合土壌汚染や地下水汚染を引き起こす。
このように、六価クロムは環境汚染や人体への影響があるので有害物質とされていますが、実は六価クロムはユニクロめっきに含まれているのです。
そして、EU(欧州連合)では「RoHS(特定有害物質使用禁止令)」と言う有害物質の規制のなかで「六価クロム」を規制対象としています。
このような状況によって、機械装置業界では「ユニクロめっき」から六価クロムを含まない代替えのめっきとして「三価クロメート」に変わってきているのです。
ユニクロめっきと三価クロメートの違い
それではここで、ユニクロメッキと三価クロメートの特徴ついて簡単にまとめておきましょう。
ユニクロめっき(別名:光沢クロメート)の特徴
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安価
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青色っぽい銀色
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EUに出荷できない(規制対象)
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有害な六価クロムが含まれている
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電気亜鉛めっきに六価クロメート処理をおこなったもの
三価クロメートの特徴
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ユニクロより高価
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青色っぽい銀色(黄色っぽいものもある)
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EUに出荷できる(規制対象外)
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有害な六価クロムが含まれていない
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電気亜鉛めっきに三価クロメート処理をおこなったもの
このような違いがあり、「ユニクロめっき」は価格以外にメリット感じませんね。
*「耐食性」については「同等」とされています。
有害でも使用され続けるユニクロめっき
ユニクロめっきが主流
「ユニクロめっき」から「三価クロメート」に変わってきていると言っても、世間的にはまだまだユニクロめっきが主流であると感じています。
三価クロメートのねじ
私がユニクロめっきが主流であると感じる理由は下記の2点です。
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めっき屋さんでユニクロめっきができる
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ねじの表面処理はユニクロめっきが多く流通している
それでは、理由について解説していきます。
めっき屋でユニクロめっきができる
めっき屋さんでユニクロめっきができると言うことは「需要がある」からでしょうか。
安価で大量に処理できるし、古くからユニクロめっきが主流だったのでメッキ屋さんの設備的にも「三価クロメート」に対応していないのかもしれません。
私が取引しているめっき屋さんの場合は、数年前はユニクロめっきは納期1日で三価クロメートの納期は2日間でしたので、「三価クロメートの需要が少ないのか?」「めっき屋さんの設備整っていないのか?」のどちらかに違いないでしょう。(*現在は三価クロメートも納期1日です)
ねじの表面処理はユニクロめっきが多く流通している
機械装置の組立に欠かせないねじ(ボルト)ですが、現在でもユニクロめっきのねじが流通しています。
と言いますか、ねじ(ボルト)の主流は現在でも「ユニクロめっき」です。
なぜそう言い切れるか?
それを実感するのは「ねじを注文したとき」です。
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ユニクロめっきは当日または翌日納入
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三価クロメートは最短で翌々日に納入
納期にこのような差があり、ユニクロめっきのねじは即納ですからそれだけの在庫と流通があると言うことでしょう。
もし、三価クロメートに変わって来ているとしたら、ユニクロめっきのねじは需要がないのですから容易に入手ができるはずがありません。
そう考えますと、ユニクロめっきのねじが主流なのは確かです。
三価クロメートに変えていく
私の職場では、海外向け装置を製造していますが、海外と言ってもその多くは欧州です。
つまり欧州に装置を輸出すると言うことは、CE規格以外に「RoHS(特定有害物質使用禁止令)」にも注意しなければなりません。
そうなると、ここまで解説してきたように表面処理の定番である「ユニクロめっき」は使用できない(輸出できない)と言うことになります。
ですから、私の職場では「金属部品とねじ(ボルト)の表面処理は三価クロメートを基本」とし、ユニクロめっきは一切使用していません。
*三価クロメート以外の表面処理も採用していますが、六価クロムが含まれていない表面処理です。黒染めや無電解ニッケルめっきなど。
当初は、三価クロメートの処理やねじの納期とコストの問題で、欧州向け装置のみ三価クロメートにしようと考えていましたが、そうなるといくつかの問題が予想できました
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企業として環境や人体へ配慮すべきではないか?
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めっきの見分けができないので、混入しても仕分けができない
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ねじの在庫をユニクロめっきと三価クロメートの2種類持たなくてはならない(保管エリアと管理の問題)
この様な問題を考えると、三価クロメートに完全移行して、多少納期がかかったりコストがアップしてしまうことも致し方がないと言うことになったのです。
三価クロメートに完全移行したときには、戸惑いや混乱もありましたがそれは一時的なことでした。現在では納期やコストの問題も全く影響がなく作業ができています。
まとめ
今回はユニクロめっきと三価クロメートについて、私の感じていることをまじえてまとめてみました。まだまだユニクロめっきが主流のようですが、今後は「使用禁止になるか」「自然と需要がなくなるのか」何らかの影響で無くなっていくかもしれませんね。六価クロムの悪影響を考えれば当たり前かもしれません。
【注:この記事は2020年時点での現状をまとめています】
参考
*めっきの種類については下記の記事でまとめています
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代表的なめっきの分類と種類【電気と無電解と溶融】
続きを見る
関連記事:【材料/溶接/加工/表面処理】
以上です。