今回は「5ポートの電磁弁(ソレノイドバルブ)の使い分け」についての記事です。
エアーを動力とする機械装置の殆どが電磁弁を搭載しているでしょう。電磁弁は使用用途、使用目的によって機能(構造)に多くの種類がありますが、その代表格は電磁弁は5ポートの電磁弁です。
しかし、5ポートの電磁弁と言ってもその種類はいくつもあるので、なかなか理解することが難しいかもしれません。
そこで今回は、5ポートの電磁弁の使分けの判断やどのような特徴あるかを紹介したいと思います。
記事の目次
5ポートの電磁弁(ソレノイドバルブ)の使い分け
エアシリンダと電磁弁
エアシリンダの制御として5ポートの電磁弁が使用されることが多いと思いますが、5ポートと言っても種類が豊富でその使分けも状況により様々です。
出典:SMC コンパクト5ポートソレノイドバルブ プラグインタイプ JSY1000/3000/5000 カタログ
使分けの判断方法
電磁弁の使い分けの判断方法は下記のようになります。
- ソレノイド(電磁コイル)の通電をOFFした時に、接続先はどうなるか?によって使い分ける事が基本
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ソフト(制御側)ではなくメカ的にどうしたいのか?どうするのか?によって電磁弁のタイプを選定する
ソレノイドOFFした時の重要な条件
客先の仕様や海外の安全規格によっては、装置の非常停止や安全扉を開けた時には動力を全てOFFしなければならないルールがあります。
その場合、ソレノイドがOFFするだけでなくエアーの供給も停止し残圧解放となります。(エアーも動力です)
つまり、動力OFFでエアーの供給もOFFですので、ソレノイドOFFでシリンダを動作させる回路であっても動作途中で停止してしまいます。
この条件を踏まえて電磁弁の選定をします。
選定のポイント
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エアーの供給がストップすることはないか?
5ポート電磁弁の種類
5ポートの電磁弁には下記の種類があります。
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5ポート2位置シングルソレノイド
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5ポート2位置ダブルソレノイド
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5ポート3位置オールポートブロック(クローズドセンタ)
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5ポート3位置ABR接続(エキゾーストセンタ)
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5ポート3位置PAB接続(プレッシャセンタ)
それでは、それぞれの種類について説明していきます。
5ポート2位置シングルソレノイド
特徴
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ソレノイド通電OFF時に流路は原点に戻る(すでに原点の時はそのまま)
例えば、ソレノイドの通電OFF時に下記のような状況に使用します
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安全上、原点に戻らないといけないモノ(複動シリンダはソレノイドOFFでエアー供給ありが条件)
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エアードポンプやバイブレーターなどの1WAY動作を停止させる
5ポート2位置シングルソレノイド(内部パイロット式バネなし)

5ポート2位置ダブルソレノイド
特徴
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ソレノイド通電OFF時に流路は切替わらない
例えば、ソレノイドの通電OFF時に下記のような状況に使用します
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動作してはいけないモノ。(ソレノイドOFFの時にエアー供給あり/なしの条件に影響されない。)
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原点復帰の動作を考えて、停止前と条件が変わってはいけないモノ
5ポート2位置ダブルソレノイド
5ポート3位置オールポートブロック(クローズドセンタ)
特徴
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ソレノイド通電OFF時のアクチュエータの状態を維持します。(流路閉鎖)
例えば、ソレノイドの通電OFF時に下記のような状況に使用します
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中間停止する・・・動作途中に流路が閉鎖され、給気/排気に残圧が残る
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ストローク端で停止する・・・流路が閉鎖され、給気側の圧力を維持する
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押さえたまま/掴んだまま/固定したままの状態を維持しておきたい時
- 元圧解放後、エアー再投入したときにアクチュエータを動作させたくない時
長時間の圧力維持はエアのリークに影響されます。マニホールドでエアの分岐を行っていたりアクチュエータが使用限界のモノはシールからエアリークのリスク高くなります。
テストしたわけでは無いので経験則になりますが、新規設備でおおよそ2日の維持が出来ている事は確認したことがあります。
5ポート3位置オールポートブロック(クローズドセンタ)
5ポート3位置ABR接続(エキゾーストセンタ)
特徴
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ソレノイド通電OFF時のアクチュエータの状態を開放します。(全流路開放)
例えば、ソレノイドの通電OFF時に下記のような状況に使用します
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危険解除する・・・給気/排気を大気開放するため、圧力が残らない。停止した時に状態を維持したら危険であったり、人手でアクチュエータを動かす必要がある場合
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押さえたまま/掴んだまま/固定したままではダメな所
水平方向では問題にならないが、上下方向のアクチュエータの場合には落下すると考えられるので上下では使用しない。また、パーフェクトブロックで圧力保持を計る場合にはエキゾーストセンタの電磁弁を併用します。
5ポート3位置ABR接続(エキゾーストセンタ)
5ポート3位置PAB接続(プレッシャセンタ)
特徴
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ソレノイド通電OFF時にA/Bポートの両側からアクチュエータに加圧する。
例えば、ソレノイドの通電OFF時に下記のような状況に使用します
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シリンダの飛び出し防止・・・ブレーキ付きシリンダなどのロックを解除して飛び出す機構の場合に有効(ソレノイドOFFの時にエアー供給なしでは使用しても意味が無い)
エアー供給状態で非常停止や制御的に停止させたときにはロッドレスシリンダやロータリーアクチュエータなどの出/戻のピストンの受圧面積が同じものは互いの推進力が同じなので停止状態を維持します。
ところが、元圧開放状態でエアーを再投入すると飛び出し動作が発生することがあります。これは、シリンダ内の容積差によるもので、ピストンの受圧面積が同じでも出側の容積と戻側の容積に差があると圧縮空気が供給されてシリンダに満たされて圧力を発生するまでの時間に差が生じるためです。つまり、容積が小さい側が素早く圧力が上がり、容積が大きい側は圧力が上がるのに時間がかかります。これによって、容積が小さい側から容積が大きい側にピストンが移動することになり、しばらくして推進力が釣り合って停止します。このような動作に対策が必要な場合は、5ポート3位置オールポートブロック(クローズドセンタ)を使用します。
因みに、一般的なシリンダのように出/戻の受圧面積が異なる場合(出力差がある)には停止せずに出力が弱い側の端まで動作します。
5ポート3位置PAB接続(プレッシャセンタ)
5ポートの電磁弁(ソレノイドバルブ)の使い分けのポイントまとめ
それでは、5ポートの電磁弁(ソレノイドバルブ)の使い分けについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 電磁弁はソレノイド(電磁コイル)の通電をOFFした時に、接続先はどうなるか?によって使い分ける事が基本
- 電磁弁の使い分けの考え方は、「メカ的にどうしたいのか?どうするのか?によって電磁弁のタイプを選定する」です
- 電磁弁の選定のポイントは「エアーの供給がソレノイドをOFFしても供給しているか?していないのか?」
以上3つのポイントが大切です。参考にして下さい。
*空気圧の基礎知識におすすめです。
関連記事:【空気圧/油圧】
以上です。