今回は「Vベルトとプーリーの摩耗判断/交換のポイントと張りの調整方法」についての記事です。
Vベルトやプーリーは非常に多くの場面で使用されている伝動方式です。定期的な点検や調整や交換を行わないとスリップやVベルトが切れてしまったりしてしまうことがあます。
そこで今回の記事では、 Vベルトとプーリーの摩耗判断から交換のポイント、ベルトの張り調整までの一連の作業について解説しようと思います。
記事の目次
Vベルトとプーリーとは
Vベルトとは摩擦によって伝動(動力を伝える)する断面がV形のベルトです。
プーリーとは滑車の事で、ヒモ/ロープ/チェーン/ベルトなどを掛けて動力を伝達する円形状の回転部品です。
Vベルトとプーリーは回転運動で伝動する方法としては身近で馴染みのある部品ですね。
伝動させる為に必要な事
Vベルトが伝動するために下記の2点が大切です。
1点目は張りです。張りは摩擦力を維持する/高くする為に必要です。押さえつける力が強くなるほど摩擦力は高くなります。ただし、張りすぎるとベルトが破断しますので注意が必要です。
2点目は面荒さです。プーリーとVベルトの接触面の面荒さは重要で面が荒い方が摩擦力が高くなります。
Vベルトとプーリーの摩耗判断
適切に運用する為には摩耗を判断して部品交換と調整が必要になります。
具体的に摩耗するとどうなるのか?
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伝動が弱くなる
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Vベルトが破断する
- Vベルトとプーリーが滑り発熱し火災が起きる
- ベルトが滑り伝動効率が落ちるので消費電力が多くなる
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Vベルトが破断し周囲の部品や配線を巻き込んで部品の破損や配線の断線(火災)が起きる
このような問題が起きる可能性があります。このような事を起こさない為に摩耗判断が必要なのです。
それでは、初めに「Vベルトの摩耗判断」次に「プーリーの摩耗判断」について解説していきましょう。
Vベルトの摩耗判断①
プーリーの外周から0.5mm~2.5mmVベルトがはみ出しているか?
はみ出していない場合は、Vベルトが摩耗して細くなっているのでプーリーの側面ではなく底面に接触してしまいます。
イメージ図
Vベルトの摩耗判断②
Vベルトのひび割れ、剥離などのゴムの劣化は無いか?
劣化したVベルトは切れる可能性があります。
イメージ図
プーリーの摩耗判断①
プーリーの側面が光っていないか?表面がつるつるしていないか?
プーリーの側面が摩耗でつるつるになっていると摩擦力が弱まりVベルトが滑ります。
イメージ図
プーリーの摩耗判断②
プーリーの底面のメッキや塗装が剥がれていないか?
塗装が剥がれていると底面がVベルトと接触しています。本来、底面はVベルトと接触せずに側面で摩擦しているので、底面が接触すると言うことは側面にテンションがかかっていないのでVベルトが滑ります。
イメージ図
プーリーの摩耗判断③
プーリーのV溝が摩耗して規定値よりも減っていないか?
VプーリーのV溝に「溝ゲージ」を当てて、すき間をすき間ゲージなどで測定し摩耗量を測定します。目視ではなく数値で摩耗量が管理できます。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
Vプーリーの摩耗判断
摩耗判断のポイントまとめ
それでは、Vベルト/プーリーの摩耗判断ついて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- プーリーの外周から0.5mm~2.5mmVベルトがはみ出しているか?
- Vベルトのひび割れ、剥離などのゴムの劣化は無いか?
- プーリーの側面が光っていないか?表面がつるつるしていないか?
- プーリーの底面のメッキや塗装が剥がれていないか?
- プーリーのV溝が摩耗して規定値よりも減っていないか?
以上5つのポイントが大切です。
Vベルト/プーリーの交換のポイント
前述で解説したように、摩耗判断してダメなものは部品交換をします。
交換のポイント
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Vベルトの長さ
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プーリーの平行度
この点に注意して作業を行いましょう。詳しくは次項から解説します。
Vベルトの長さ
Vベルトを数本掛けで使用している場合には注意があります。Vベルトは同じ型式でも長さにバラつきがあるので長さをそろえたVベルトを使用する必要があります。ですから、Vベルトを注文する場合に型式と下記のような指定をしてください。
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マッチドセット
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ベルトのセット
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1Lotのセット
このような指定をすると長さがそろったベルトが手に入ります。
プーリーの平行度の調整基準
プーリーの平行は直尺やストレートエッジなどをプーリーの側面に当てすき間を測定します。
すき間は計算によって求められます
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【A=軸間距離×0.003】
*ベルトメーカーやミスミでは平行の許容値を「角度」で指定していますが、実際の現場作業で角度を測定することは困難です。そのため、特別な測定器が必要なく誰でも計算できる計算式【A=軸間距離×0.003】が現場では有効です。
イメージ図
Vベルトの張りの調整方法
Vベルトの張り具合はベルトのたわみ量で判断します。たわみ量は「Vベルトに決められた荷重を与えた時にどれくらいたわむのか?」です。
たわみ量の適正値はコレです
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「スパン長さ100mmあたり1.6mm」
この計算で求められたたわみ量が適正とされています。スパン長さは軸間距離と違いプーリーとVベルトの接触点間の距離と言う意味です。
イメージ図
与える荷重
Vベルトに与える荷重はVベルトの型式によって決められています。このような一覧表から荷重を調べます。
テンションゲージでの測定の手順
テンションゲージでの測定方法を下記に示します。
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テンションゲージでスパン長さの中心に荷重を与える
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直尺やストレートエッジなどの真直ぐな治具をプーリーにセットします
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すき間をメジャーや直尺で測定します
イメージ図
調整
測定した結果のたわみ量が「スパン長さ100mmあたり1.6mm」であるかどうか判断します。このたわみ量が規定値となるようにVベルトのテンション調整を行ってください。
測定器やアプリを使用した張り調整
Vベルトやタイミングベルトの張り確認する方法として、測定器やアプリを使用する方法があります。
初期設定としてデータを入力する必要がありますが、張りの測定の手間がなくて良いと思います。
スマートテンション
三ツ星ベルトからリリースされているアプリのスマートテンションです。こちらは、ベルトを指ではじいた時の音で判断します。だたし、難点がありましてスパン長さが550mmまでしか対応していない事です。自動車のベルトには対応できそうですが、産業機械のベルトには使える場面は少ないと思います。
音波式ベルト張力計
三ツ星ベルトから販売されている「音波式ベルト張力計」は、アプリと同じようにベルトをはじいた時の音で張りを測定します。
こちらはスパン長さ1mm~9999mmまで測定可能なので実用的だと思います。
出典:三ツ星ベルト 音波式ベルト張力計
Vベルト/プーリーの交換と張りのポイントまとめ
それでは、Vベルト/プーリーの交換と張りついて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- Vベルトを数本掛けで使用している場合はVベルトを指定して購入する
- プーリーの平行度は【A=軸間距離×0.003】
- Vベルトのたわみ量はスパン長さ100mmあたり1.6mm
- 測定器やアプリで、音によるたわみ測定ができる
以上4つのポイントが大切です。
Vベルトの張り(たるみ)は手の感触で調整されている場面はよくありますが、「交換後に切れた」なんて事が起きないように適切な調整を行いましょう。
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関連記事:【回転運動の要素】
以上です。