今回は「スプロケットが摩耗して起きること」についての記事です。
スプロケットはローラチェーンとセットで使用される部品で、チェーンと同様に摩耗するので定期的な交換が必要です。
定期的な交換が必要と言っても、摩耗によって起きることや交換の判断基準を理解しておかないと、管理ができないと思います。
そこで、今回はスプロケットについて摩耗と交換に焦点を当てて解説しようと思います。
記事の目次
スプロケットが摩耗して起きること
スプロケットとは
スプロケットとは、円周上に等間隔で歯山が配置されている歯車で、ローラーチェーンと噛み合わせて動力を伝達する部品です。
スプロケットの使用例としては、身近なコンベアが挙げられます。具体的には、モーターの回転力をスプロケット&ローラチェーンを介してコンベアの搬送ローラを駆動するような機構です。
出典:椿本チエイン ドライブチェーン&スプロケット 取扱説明書
スプロケットはローラチェーンと同様に定期交換部品なのですが、ローラチェーンはスプロケットより交換周期の方が早い(摩耗が早い)ので「チェーンは頻繁に交換しているから大丈夫」と言った意見や、そもそも「スプロケットは交換が面倒」などど言った具合に、スプロケットの交換をないがしろにしがちです。
しかし、実際にはスプロケットも摩耗しているので、そのまま放置すると様々な問題が起きるどころか、新品に交換したローラチェーンの寿命を縮めることにもなります。
そのため、チェーンだけでなくスプロケットも定期的に交換が必要ですし、そのためにはスプロケットの摩耗判断が重要となるのです。
摩耗すると起きる問題
スプロケットが摩耗すると下記のようなことが起きます。*注意:ローラチェーンが摩耗しても同様の症状が起きす。
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騒音、ガチャガチャ音がする
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チェーンが振動する
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ローラーチェーンがスプロケットに乗り上げる
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スプロケットがローラチェーンを巻き込む
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チェーンが歯飛びする(噛み合うタイミングが悪くなる/チェーンピッチとスプロケットの歯山のピッチが合わない)
このような問題が起きると、機械装置の至る所で異常が起きます。
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搬送異常多発
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モーターの過負荷
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軸/シャフトが折れる
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チェーンが切れる
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チェーンの摩耗が通常よりも早くなる(新品のチェーンとの噛み合わせが悪い)
このような異常が見受けられたら早急にスプロケットとローラチェーンを交換するべきですが、本来は交換周期を管理して異常が起きる前に定期的な交換をすべきだと思います。
摩耗や交換の基準はスプロケットの歯厚
スプロケットの摩耗判断は、実はチェーンと違い判断に難しさがあります。
参考
*ローラチェーンの摩耗判断はこちらの記事をご覧ください
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ローラチェーンの摩耗判断と交換方法【スプロケットの芯出しとたるみ調整】
続きを見る
チェーンの場合は、チェーンが伸び切ってテンションが張れなくなったり、ローラーが破損したり、見た目で判断ができる事が多いと思いますが、スプロケットの場合は前述の「摩耗による問題」が起きていても、ローラチェーン起因である可能性があります。
また、あきらかに摩耗が進行しているスプロケットは、「三日月形」に歯山が反り返っているので目視で交換必要と判断できますが、そうでない場合は、一見問題なく動いていて一概に交換が必要だと判断できません。
さらに言えば、摩耗は使用環境や負荷の大きさによって大きく違いが現れるので、機械装置を一括りにして使用時間などでは判断ができないので、各機械装置ごとに個別の摩耗管理が必要です。
そこで、私が行っている交換の判断基準として数値で管理する方法を紹介します。
交換の判断基準
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スプロケットの歯厚がPCDの位置で新品から2mm前後摩耗したら交換 (私の経験値です)
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椿本チエインの資料で判断する(使用限界の歯厚)
椿本チエインの資料、スプロケットの摩耗限界は下記をご覧ください。
出典:椿本チエイン ローラチェーン・スプロケットの取り扱い
このように、数値で判断できる方法ですと管理しやすくで良いと思います。
もちろん、前述の「摩耗による問題」を交換の判断材料としても悪くないですし、摩耗の数値を加味して総合的に判断しても良いと思います。
補足 スプロケットの片摩耗
スプロケットは、側面が摩耗する片摩耗が起きることがあります。
通常の摩耗は、歯厚が摩耗し歯が薄くなっていくのですが、スプロケットの芯だしが不十分だとローラチェーンがスプロケットの側面を擦りながら回転し続けるので、スプロケットの側面が摩耗します。
*スプロケットの芯だしは下記の資料のように調整する必要があります。
出典:椿本チエイン ドライブチェーン&スプロケット 取扱説明書
スプロケットの側面に片摩耗が起きている場合は、スプロケットの芯だし調整を行う必要があり、著しく側面が摩耗している場合には、芯だし作業と同時にスプロケット交換もしておいた方が無難です。
スプロケット&ローラチェーンの機構は、お互いに噛み合っていれば相当摩耗が進行していても壊れるまで動き続けますが、そのような管理では「いつ止まるか」わかりませんし、「重故障」の原因にもなりかねません。
やはり、いつでも設備の正しい姿を維持できるような管理をすべきだと思います。
スプロケットの摩耗のポイントまとめ
それでは、スプロケットの摩耗について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- スプロケットとは、円周上に等間隔で歯山が配置されている歯車で、ローラーチェーンと噛み合わせて動力を伝達する部品
- 交換の判断基準は、スプロケットの歯厚がPCDの位置で新品から2mm前後摩耗 または 椿本チエインの資料で判断する(使用限界の歯厚)
- スプロケットの芯だしが不十分だとスプロケットの側面が摩耗する
以上3つのポイントが大切です。
私が経験した事例を紹介しますと、24時間生産し続ける搬送装置のコンベアのスプロケットが10年近く交換されていない状況がありました。スプロケットは三日月形に反り返り、素手で触れば切傷してしまうほどに摩耗し、コンベアは異音を放っていました。当然、スプロケットのシャフトの摩耗も著しく、部品の取外しができなかったため切断して解体し、スプロケットとシャフト、ローラチェーン、チェーンガイドなどコンベアに関わる全ての部品を交換しました。
後にも先にもこれ以上の状況に出会ったことはありませんが、このような状況は最悪なパターンですので、そうならないように日ごろから定期的に摩耗した部品は交換するような管理や習慣を身につけましょう。
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*チェーンの長さが短くてジョイントリンクが取り付けできない時にはチェーンプーラーがおすすめです。
関連記事:【回転運動の要素】
以上です。