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【回転運動の要素】

ベルトの種類と特徴【タイミングベルトとVベルトと平ベルト】

2020年12月15日

 

今回は「ベルトの種類と特徴/タイミングベルトやVベルトや平ベルト」についての記事です。

機械装置にとって、ベルトやチェーン、歯車といった動力を伝達する機械要素は欠かせない存在で身近でもあります。

その中でも、ベルトは数多くの種類がありますが、普段扱うことがないベルトの方が多いと思います。そこで今回は、ベルトの種類の紹介と特徴を簡単にまとめておこうと思います。

 

ベルトとは

ベルトとは、プーリー(回転部品)との「かみ合い」または「摩擦」によって動力を伝達するものです。

ベルトは機械装置をはじめとして、動力の伝達に古くから使われてきましたが、その間に様々な形状であったり耐久性や環境に影響されにくい素材や構造が開発されてきました。

そのため、ベルトと一口に言っても簡単に説明はできませんし、取り扱いの注意点にも違いがあります。

 

平ベルトの十字掛け

 

ベルトのメリットと注意点

ベルト伝動の特徴について、私が感じていることをまとめておきます。

 

*メリット

  • 構造が単純
  • 交換が容易
  • 潤滑が不要
  • 安価(チェーンや歯車と比べて)
  • ギア、チェーンより騒音が少ない
  • 過負荷の時に機械の破損や労災になりにくい(例えば、Vベルト伝動のボール盤)

 

*注意点

  • 劣化や摩耗によって歯飛びや破断するので定期点検が必要
  • 定期的(一年単位)にテンション調整が必要なものがある
  • 油やゴミの噛みこみによって、ベルトの滑りや破損が起きる
  • ベルト全般的に共通して、劣化の目安はひび割れがあるか?です
  • 樹脂素材なので、温度(おおよそ-20度から70度前後)や環境(雰囲気)によって寿命が左右される
  • プーリーの摩耗、芯だし不十分、ベアリングの劣化によってベルトの滑り、脱線、破断などが起きる。

 

Vベルトの7本掛け

 

*補足 ベルトの鳴き

かみ合い伝動は、かみ合いのため滑りが起きませんが、摩擦伝動のベルトは滑り(スリップ)が起きます。滑りが大きいと、「キーキー」「キュキュキュキュ」などのベルト特有の鳴きが起きる場合があります。

ベルトの張り調整をしても鳴きが治まらない場合は、ベルトが劣化によって硬化し柔軟性が失われている可能性がありますので、ひび割れが無くても交換しましょう。

 

「かみ合い伝動」と「摩擦伝動」

ベルトの動力伝達の方法には、「かみ合い伝動」「摩擦伝動」の2つの方式があり、それぞれの方式によってベルトの種類があります。

 

*かみ合い伝動のベルトの種類

  • タイミグベルト(歯付きベルト)

 

*摩擦伝動のベルトの種類

  • Vベルト
  • 平ベルト
  • リブベルト
  • 丸ベルト

 

それでは、ここで紹介したベルトの特徴について、次項からまとめていきます。

 

タイミグベルト

タイミングベルトとは、リブと呼ばる歯山がついたかみ合い伝動のベルトです。

 

 

出典:三ツ星ベルト 製品一覧表(カタログ)

 

特徴

  • 滑り・・・ない
  • 負荷・・・高負荷に強い
  • 速度・・・高速回転対応
  • ミスアライメントの吸収・・・対応していない
  • 回転方向(十字掛け)や方向転換(多軸)・・・不可
  • 張力・・・Vベルトよりも強めに張ることが多い(歯飛びと噛み合いの遊び対策)

 

その他

  • 精度が高い
  • 張りは強め
  • 動力のロスが少ない
  • スリップ音がない
  • サーボ―モーターを使用した位置決めに使用される

 

Vベルト

Vベルトとは、断面がV形の摩擦伝動のベルトです。

 

 

出典:三ツ星ベルト 製品一覧表(カタログ)

 

特徴

  • 滑り・・・少ない
  • 負荷・・・高負荷に強い(複数本のベルトを使用できる)
  • 伝達効率・・・悪い
  • 速度・・・高速回転対応
  • ミスアライメントの吸収・・・良好
  • 回転方向(十字掛け)や方向転換(多軸)・・・不可
  • 張力・・・平ベルトよりも少なくて良い(V形状のため)

 

その他

  • 安価
  • V形状の摩耗や食い込みによって定期的なテンションの調整が必要
  • コンプレッサー、ブロアー、集塵機、ボール盤、エンジンなど幅広く普及している

 

平ベルト

平ベルトとは、断面が長方形の摩擦伝動のベルトです。

 

出典:三ツ星ベルト 製品一覧表(カタログ)

 

特徴

  • 滑り・・・大きい
  • 負荷・・・高負荷に弱い
  • 伝達効率・・・Vベルトよりも優れている(屈曲損失が少ない)
  • 速度・・・高速回転対応
  • ミスアライメントの吸収・・・対応していない
  • 回転方向(十字掛け)や方向転換(多軸)・・・可能(ベルトの掛け方が多彩)
  • 張力・・・Vベルトよりも強め(プーリーに食い込むことがなく、滑りやすいため)

 

その他

  • 小径プーリーが使用できる
  • 蛇行に注意が必要
  • プーリーにはF形(フラット)とC形(クラウン)がある
  • コンベアの搬送ベルトとして使用される
  • 農業で発動機から動力を伝達するときに使用される

 

リブベルト

リブベルトとは、断面が長方形でプーリー接触面に溝がある摩擦伝動ベルトで、平ベルトとVベルトを掛け合わしたタイプです。

 

出典:三ツ星ベルト 製品一覧表(カタログ)

 

特徴

  • 滑り・・・やや少ない
  • 負荷・・・高負荷に弱い
  • 伝達効率・・・Vベルトよりも優れている(屈曲損失が少ない)
  • 速度・・・高速回転対応
  • ミスアライメントの吸収・・・対応していない
  • 回転方向(十字掛け)や方向転換(多軸)・・・不可
  • 張力・・・Vベルトよりも強め(プーリーに食い込むことがなく、滑りやすいため)

 

その他

  • 小径プーリーが使用できる
  • 自動車のエンジンのウォーターポンプ、エアーコンプレッサー、ジェネレーターなどに使用される

 

丸ベルト

丸ベルトとは、断面が円形の摩擦伝動のベルトです。

 

出典:三ツ星ベルト 製品一覧表(カタログ)

 

特徴

  • 負荷・・・高負荷に弱い
  • 速度・・・高速回転は不可
  • ミスアライメントの吸収・・・良好
  • 回転方向(十字掛け)や方向転換(多軸)・・・可能
  • 張力・・・弱め

 

その他

  • 長さの調整(溶着や接着)が容易
  • 屈曲に弱く変形する
  • ローラーコンベア(コロコン)などに使用される

 

まとめ

今回は、ベルトについてまとめてみました。身近な存在ですが扱ったことのないベルトもあったと思います。すべてのベルトの特徴を覚える必要もないと思いますが、どのベルトでも共通して「張り」は重要で調整は欠かせないことは覚えておきましょう。また、ベルトの張り具合はベルトの種類によって違いがあるので、メーカーサイトや取扱説明書で調べてみると良いと思います。

 

*ベルトの張り調整におすすめな測定器は、音波式ベルト張力計

 

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以上です。

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