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【回転運動の要素】 【直線運動の要素】 【精度測定/精度調整】

サポートユニットから異音が発生【ボールねじの芯出しにはダイヤルゲージ】

2019年9月30日

 

今回は「サポートユニットから異音が発生【ボールねじの芯出しにはダイヤルゲージ】」についての記事です。

皆さんはボールねじの芯出し作業をどのような方法でおこなっていますか?以前の私は、直線運動の案内(LMガイドなど)に作業者感覚で馴染ませてストレスを抜きながら組付ける方法をおこなっていましたが、とあるトラブルがきっかけとなり実はそれでは不十分だと気が付きました。

今回の記事では、ボールねじやサポートユニットにトラブルが起きないために、知っておきたい確実なボールねじの組立方法を紹介しようと思います。

 

サポートユニットから異音が発生

サポートユニットとは、ハウジング(ケース)にベアリングが組み込まれた軸受ユニットです。

固定側はボールねじをナットで締め付けてスラスト方向を拘束する部分で、ベアリングはアンギュラベアリングが2個組み込まれておりラジアル荷重とアキシアル荷重を負荷できる構造です。

 

*サポートユニットのナットのゆるみについてはこちらの記事をご覧ください

要チェック
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出典:THK サポートユニットカタログ

サポートユニットカタログ

 

異音の発生

先日のことですが、新品のボールねじとサポートユニットを組付けたら、稼働2週間でサポートユニットに異音が発生してしまいました。

  • 音は「キンキン・・・キュンキュン・・・」と言う甲高い金属の摩擦音
  • 固定側のサポートユニット付近から音がした

 

異音の状況

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ボールねじのユニット

 

損傷状況

損傷を調べるために、ボールねじ、サポートユニットをバラシて状況をを調べてみました。

 

異音の発生原因

  • サポートユニットのアンギュラベアリングが回転しておらず、ベアリングとボールねじの軸がスリップしていた。

 

バラシてみますと、ボールねじの軸とベアリングにスリップ痕とスリップによる損傷が見受けられました。

 

軸とベアリングの損傷状態

軸の損傷ベアリングのインナーレースと軸がスリップして損傷している

 

軸の損傷

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軸の損傷

 

ベアリングの状態

コロとレースの接触面に損傷は見られない。インナーレースには軸とスリップした状況がうかがえる。ベアリングは回転していなかったと思われる。

 

ベアリングの状態

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ベアリングの損傷

 

異音とスリップの原因

部品をバラしてみると下記の問題を確認しました。

 

問題点

  • サポートユニットのズレ

 

固定側のサポートユニットを緩めると、サポートユニットの取付面が0.3mm斜めに浮き上がったのです。

 

サポートユニットのズレ

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サポートユニットのズレ

 

このことから、推測される原因は、、、

  • 組付け不良の芯ずれによって、ベアリングに負荷能力以上の力がかかった

 

このような状態で運転し続けたために、ベアリングが回転不良となり、ボールねじの軸とベアリングがスリップし損傷したと思われました。

 

ボールねじの芯出し組立にはダイヤルゲージを使用する

それでは、今回の事例にあるようなボールねじの芯出し不良を起こさないために、、、

  • どのような組立方法だったのか?
  • 組付け方法の改善方法は?

について考えてみたいと思います。

 

どのような組立方法だったのか?

組立作業の方法はどのようなものであったか?

  • ボールねじを往復させてサポートユニットとナットの部分でシムなどを使い高さ調整をする
  • ボールねじを往復させてサポートユニットとナットの固定ボルトを緩め/締付けを繰り返しストレスを抜く
  • 上記2点を行い、ボールねじを回転させた時の抵抗に問題が無ければ完了

このような方法で間違ってはいません。足りないとすれば「測定器を使用していなかった」事です。つまり、作業者の感覚の裏付けが無かったのです。

 

組付け方法の改善方法

組付け方法の改善として、測定器を使用する方法を考えてみまと、、、

  • ダイヤルゲージを使用し作業者の感覚と数値管理で確実性を増す

この方法しかないでしょう。

 

と言うことで、下記2点のダイヤルゲージを使用した作業を追加し確実性を増すことにします。

  • ねじを締め付けた時の変化量の測定
  • ボールねじを回転させたときの振れ量の測定

 

改善したボールねじの組立方法

サポートユニットの芯ずれの対策を踏まえて組立方法を紹介します。

 

組立方法

  • ボールねじに固定側のサポートユニットを組付け、ナットを増し締めする
  • ボールねじ、サポートユニット、ナットの取付部品を仮締めで組付ける
  • ボールねじを回転させてナットを往復させる(往復させながら下記の4番を実施する)
  • サポートユニットとナットの固定ねじを緩めすき間(高さ方向)を確認し、すき間0mmを目指して調整する(ボールねじやサポートユニットに追加工して調整する事はNGです)。左右方向も同時に確認します。
  • 4番の作業を繰り返し行い、回転がスムーズになるようにする。(ねじは仮締めのままです)
  • サポートユニットを増し締めする。ダイヤルゲージで軸の上下方向と左右方向を測定しながら行う。
  • 最終確認として、ボールねじを回転させながら、軸の振れと軸方向の遊びを測定し完了とする。

 

下記のイメージも参考にしてください。

高さ調整箇所

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高さ調整箇所

 

締付け時の測定

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締付け時の測定

 

最終確認 回転させて測定

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回転させて測定

 

ポイントまとめ

それでは、サポートユニットから異音とボールねじの組立について重要なポイントをまとめておきます。

 

ポイント

  • 芯出しが不十分だと、ボールねじとサポートユニットの部分に異音と傷が起きる
  • ボールねじの組付けは感覚だけでなく測定器による数値の裏付けが必要
  • ダイヤルゲージを使用して、締付けたときの変化量 と 回転時の振れ を測定する

 

以上3つのポイントです。

 

ボーネジの組付け方法についてはTHKのカタログにも記載があります。結果的には、THKのカタログに記載されているやり方とほとんど同じやり方になっております。

今までは測定せずに作業者の感覚で組付けることが常態化しており、それが当たり前だと思っていました。初めから、メーカーの指示通りの作業を行っていればこのような事態は避けられたと思います。感覚の裏付けとして測定する事を習慣化し、今まで良しとしていた事も再度考え直すいい機会でした。

 

*機械装置の機構の勉強にはこちらがおすすめ

 

補足動画

下記はNSKのボールねじ組付け動画です。今回説明した以上に細かく測定しながら組み付けています。是非参考にしてくだい。

 

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以上です

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