今回は「極圧添加剤を潤滑剤に添加して摩耗や焼き付きを防止する」についての記事です。
添加剤は、基油に添加することで使用目的に応じた特性の潤滑剤に整えるもので、普段耳にする、オイル、潤滑油、切削油などと呼ばれ油には必ず添加剤が入ってます。
この添加剤には多くの種類があり、どのような添加剤を基油(ベースオイル)に加えるかによって特性に違いがあるため、製造メーカーによって様々な種類が存在します。
さて、そんな添加剤の一つに極圧添加剤と言うものがあります。極圧添加剤は読んで字のごとく、圧力が強い部分である金属と金属が高負荷の部分に対応する添加剤です。
極圧添加剤は添加されたオイルやグリースをそのまま使用する以外に、摩擦軽減や焼き付き防止などの目的でスプレーなどを別途塗布することがあり、身近なケミカルと言えます。
今回の記事では、極圧添加剤の作用や種類についてまとめておこうと思います。
極圧添加剤とは
添加剤とは、潤滑油(潤滑剤)を生成するために基油(ベースオイル)に添加して油(オイル)の性能の負荷や特性を増強する物質で、特に極圧性、耐摩耗性、酸化安定性、防腐性に影響します。
添加剤のなかでも極圧性、耐摩耗性に影響する極圧添加剤は、摩擦を低減する効果があるので負荷が高い部分の摩耗対策や焼き付きの対策に使用される物質で、ギアオイル(歯車油)や金属加工油などに使用されます。なお、その具体的なメカニズムについては解明されていないことが多いようです。
また、極圧添加剤はオイルやグリースに添加されているだけでなく、自分で配合して使用できるように改良された商品も市販されています。
*摩擦とは、金属が接触すると凝着(ひっつく)しますが、この状態から外力によって運動させるときに生じる運動を妨げる力のことです。
*基油(ベースオイル)とは、石油から蒸留、又は石油を化学分解した油のことです。
作用
高負荷で金属が接触している面は潤滑油の膜切れが起きやすくなりますが、それと同時に高負荷の接触面は金属の摩擦によって高温(500~800℃程度と言われている)にもなります。
極圧剤はこの高温下で金属と反応して皮膜(化合物)を生成するとされているので摩擦を低減する効果があります。
例えばこのようなことに有効です
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高い負荷の部分
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焼き付き対策したい部分
デメリット
極圧剤は金属と反応すると化合物(被膜)を生成しますが、これは金属が腐食すると言えます。(腐食とは、金属が溶けたり金属以外の物質に変わり損なわれることです)
腐食と言っても非常に微量なので問題になることはありませんが、反応が激しい極圧剤は腐食も激しいくなることがあります。
また、極圧剤の中には摩擦が低くなる効果の物質もあるので、例えば、減速する機構の障害になったり、ねじや緩むなどの問題が起きることがあるで要注意です。
参考
*腐食についてはこちらの記事をご覧ください
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腐食のカギは金属の安定【腐食と錆びの形態と種類】
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極圧添加剤の種類
代表的な極圧剤の特徴についてまとめておきます。(金属に作用するメカニズムには諸説あり完全に解明されていません)
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硫黄系
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塩素系
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リン系
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モリブデン系
硫黄系
硫黄は金属の摩擦による高温によって、鉄と反応して硫化鉄の皮膜を生成し金属の潤滑をします。
硫化鉄の皮膜は、摩擦係数が高いが皮膜生成温度が低く高温や水に対して耐性があるので多くの使用実績があります。
代表的な化合物
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硫化油脂
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ダイベジルダイサルファイド
塩素系
塩素は摩擦面の金属と反応して、塩化鉄(II)(塩化第一鉄)の層状構造の皮膜を形成します。塩素系は安価で焼き付き防止の効果が優れているため、機械加工油として使用されることが多い添加剤です。
ただし、塩素を含む物質を焼却すると有害なダイオキシンが発生するので問題視されています。そのため、塩素を使用しない代替え品(硫黄系、リン系)への移行が進んでいます。
代表的な化合物
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塩素化パラフィン
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塩素化脂肪酸
リン系
リン系の添加剤とは、リン酸類に属する化合物のことです。
下記の作用があります。
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リン酸が金属表面に吸着して水分と反応し(加水分解)リン酸鉄の皮膜を形成して潤滑する
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リンと鉄が反応して共融物を生成し、金属の表面を平滑化する
代表的な化合物
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リン酸エステル
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亜リン酸エステル
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酸性リン酸エステルアミン塩
モリブデン系
モリブデン系の添加剤には2つの種類があります。
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二硫化モリブデン
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有機モリブデン
いずれも、高温、高荷重に強く、摩擦係数が低くなる特徴があります。
二硫化モリブデン
二硫化モリブデンとは、モリブデナイト(鉱石)を原料とした固形の潤滑剤で、金属の表面の凹凸に詰まって潤滑皮膜となります。
色は黒色で、固形のためグリースに使用されることが多い。
有機モリブデン
有機モリブデンは化学合成で製造されたモリブデンで、金属の摩擦による高温で分解反応し、金属表面に反応皮膜を生成し潤滑します。
色は黄色で、溶けやすくためオイルに添加されることが多い。
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MoDTP(ジアルキルジチオリン酸モリブデン)
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MoDTC(ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン)
まとめ
極圧剤について代表的な種類を紹介してきましたが、実際に販売されているオイルやグリースにどのような極圧剤が入っているか?の成分を明かしていない商品が多くあります。どのような添加剤を使用するかは製造メーカーのノウハウのため、中身が不明なのです。
身近なモノですと、例えば車のエンジンオイルは粘度以外にもその特性はもちろん、価格にも違いがあり多くの種類があります。そのような場合は、最適なオイルやグリースは商品の説明や評判や実際に使用してみてどうなのか?によって判断するしかないと思います。
もし、添加剤の成分が記載されている場合には、何系なのか?その成分はなんなのか?調べてみると良いと思います。メリットだけでなく、使用する環境に悪影響がないか?まで検討するとなお良いでしょう。その際には、今回紹介記事が参考になればと思います。
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参考文献:【サイト: ジュンツウネット21 潤滑管理とメンテナンスのポータルサイト】 【書籍:一から学ぶ工業潤滑剤 著:出光興産】
関連記事:【潤滑油/グリス/ケミカル 】
以上です。