今回は「減速機のカップリングのスリップ対策」についての記事です。
組合せタイプの減速機のカップリング締付けは確実におこなわないとスリップのトラブルが発生することがあります。
今回はロングの六角レンチの使用例と合わせて紹介しようと思います。
記事の目次
減速機のカップリングのスリップ対策
減速機とは
減速機とは電動機(モーター)の出力を減速させてトルクを得るものです。
減速機は電動機と一体型のタイプと組合せタイプがあります。
出典:住友重機械工業 サーボモータ用減速機 IBseries カタログ
組合せタイプの減速機のカップリングの締付け注意点
組合せタイプの減速機には下記の写真のように、カップリングに電動機(モーター)の軸を挿入して締結するタイプがあります。
減速機のカップリング
このタイプの減速機のカップリングの締付けには注意点があります。
- 締付けは規定トルクで締付ける
- 防腐剤や油分を拭き取って締結する
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ボールポイントの六角レンチで締付けない
注意点は上記3点ですが、締付けトルクに関しては実際の作業ではトルクレンチで締付けをおこなっていない場合が多いと思いますが、その場合にはスリップのリスクが高くなるのでリスクを認識のうえ、締付け作業を行ってください。
ボールポイントの六角レンチのリスク
減速機のカップリング締付け注意点で「ボールポイントの六角レンチで締付けない」と言いましたが、それはなぜでしょうか?
理由はこれです
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ボールポイントの六角レンチで締付けるとねじの頭をなめるリスクがある
カップリングのねじは減速機本体からの距離が遠くスタンダードな六角レンチが使用できないので、ロングの六角レンチを使用します。
ところが、ロングの六角レンチといえば所有率が高いのはロングのボールポイントソケット(ラチェット)なので、ボールポイントのレンチで締付けてしまいがちですが、そこに問題点があります。
減速機と六角レンチ
六角レンチがとどかない
ボールポイントの六角レンチは使用しない
ボールポイントの六角レンチの問題点は下記2点です。
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カップリングなので締付けトルクが高いがボールポイントなのでなめやすい
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カップリングが締付け時に回転(空転)するのでボールポイントのかかりが浅くなり不安定(なめやすい)
このような問題があるので、私がおすすめするやり方(工具)は「首下ロングの六角レンチ」と「ストレートタイプのロングヘックスソケット」です。
減速機のカップリング
首下ロングの六角レンチ(トルクレンチは使用できません)
ストレートタイプのヘックスソケット(トルクレンチを使用する場合はソケットタイプ)
このタイプの六角レンチはねじの差し込みがストレート形状で、接触面積が多く安定しているのでねじの頭がなめるリスクが少ないです。
それでは参考として、首下ロングの六角レンチを使用して実際に締付け作業を行ってみようと思います。 *トルクレンチを使用しない方法です。
首下ロングの六角レンチで減速機のカップリングを締め付ける
首下ロングの六角レンチとは、スタンダードな六角レンチに比べて首下が倍以上長い六角レンチで、懐が深い場所に適しています。
しかしその反面、締め付けた時の六角棒の捻じれが大きく力が逃げるので剛性感に欠けます。
首下ロングの六角レンチ
減速機のカップリングを締め付けてみますと、下記のようになります。スタンダードの六角レンチと違い確実にキャップボルトにとどいています。
*減速機によっては首下ロングの六角レンチでもキャップボルトに届かなものが稀にあります。
カップリングを締め付ける
確実な締付けをおこなう場合は、ロングのヘックスソケットを使用してトルクレンチで締付け管理が必要ですが、トルク管理しない場合は首下ロングの六角レンチが活用できますので参考にしてください。
ポイントまとめ
それでは、減速機のカップリングの締付け注意点について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 減速機とは電動機(モーター)の出力を減速させてトルクを得るもの
- 減速機のカップリングは、ボールポイントの六角レンチで締付けるとねじの頭をなめるリスクがある
- おすすめの方法は、「首下ロングの六角レンチ」と「ストレートタイプのロングヘックスソケット」を使用すること
以上3つのポイントが大切です。
今回は「減速機のカップリングの締付け注意点と首下ロングの六角レンチ」について解説しました。私の経験では、ボールポイントのヘックスソケットで締付けてねじの頭がなめてしまった事例があります。ですから、締付けはストレートタイプの六角レンチ、ソケットを使用することをおすすめしたいと思います。もちろん、締付けだけでなく緩めるときにもストレートタイプを使用しましょう。
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以上です。