第二種電気工事士を取得したのですが、現場に行ったら「電気工事士だけじゃ作業はできないよ」と言われてしまいました。
詳しく話を聞いてみると私の客先では、例えば「通電中の制御盤の扉の開閉」や「ブレーカーのON・OFF」をする場合に電気工事士ではなく低圧電気の特別教育が必要とのことでした。
と言うことで、さっそく低圧電気の特別教育をコベルコ教習所で2日間受講してきたので、今回の記事でまとめておきます。
電気工事には高圧電気または低圧電気の特別教育が絶対必要
電気工事には国家資格と特別教育が必要です
電気工事をする場合、「第一種電気工事士」や「第二種電気工事士」などの国家資格が必要になります。
引用:中部近畿産業保安監督部 免状の種類によって従事できる電気工事の範囲
資格名 従事することのできる電気工事 申請先(住民票所在地) 第一種電気工事士 500kW未満の需要設備及び一般用電気工作物の電気工事(ネオン用の設備及び非常用予備発電装置の電気工事を除く) 都道府県 第二種電気工事士 一般用電気工作物の電気工事 都道府県 認定電気工事従事者 500kW未満の需要設備のうち600V以下で使用する電気工作物(例えば高圧で受電し低圧に変成されたあとの100V又は200Vの配線、負荷設備等)の電気工事 産業保安監督部 特種電気工事従事者 500kW未満の需要設備のうち、ネオン用の設備又は非常用予備発電装置の電気工事 産業保安監督部
そして、電気工事をするためには電気工事士などの国家資格以外に、感電などの事故を起こさないための「特別教育」を受講する必要があります。*労働安全衛生規則で定められています。
電気工事に必要な「特別教育」は2種類あります
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低圧電気取扱業務特別教育
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高圧・特別高圧電気取扱業務特別教育
電圧の大きさは「低圧」と「高圧」と「特別高圧」の3種類に区別されており、特別教育は「低圧」と「高圧・特別高圧」の2種類に分けられています。なので、自分が作業をする系統の電圧に該当する特別教育を受けなければなりません。
特別教育の概要は労働安全衛生規則第36条4号に記述があります。
低圧電気取扱業務特別教育 | 低圧(直流にあっては750ボルト以下、交流にあっては600ボルト以下である電圧をいう。以下同じ。)の充電電路(対地電圧が50ボルト以下であるもの及び電信用のもの、電話用のもの等で感電による危害を生ずるおそれのないものを除く。)の敷設若しくは修理の業務又は配電盤室、変電室等区画された場所に設置する低圧の電路(対地電圧が50ボルト以下であるもの及び電信用のもの、電話用のもの等で感電による危害の生ずるおそれのないものを除く。)のうち充電部分が露出している開閉器の操作の業務 |
高圧・特別高圧電気取扱業務特別教育 | 高圧(直流にあっては750ボルトを、交流にあっては600ボルトを超え、7000ボルト以下である電圧をいう。以下同じ。)若しくは特別高圧(7000ボルトを超える電圧をいう。以下同じ。)の充電電路若しくは当該充電電路の支持物の敷設、点検、修理若しくは操作の業務 |
注意ポイントとしては「高圧・特別高圧電気取扱業務特別教育」を受ければ「低圧の作業もできる」、、、とはなりませんので要注意です。
低圧の作業は「低圧電気取扱業務特別教育」が必要、高圧・特別高圧の作業は「高圧・特別高圧電気取扱業務特別教育」が必要となり、場合よっては両方の特別教育を受ける必要があります。
特別教育が必要な理由
電気工事士を持っていれば「電気工事ができる」と思っている人は多いと思います。
私もそう思っていました。
ところがです、実際には「電気工事士の資格だけでは電気工事はほぼできない」のです。
電気工事士と特別教育の違いを簡単にまとめます
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電気工事士:電気工事士法(経済産業省)で定められている、確実な配線作業を行うために必要な資格です
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特別教育:労働安全衛生規則(厚生労働省)で定められている、感電しないため(安全作業)に必要な教育です
ざっくりまとめるとこのような違いがあり、電気工事士法では「電気工事は電気工事士の免許がなければ従事してはならない」と記載されており、労働安全衛生規則では「低圧、高圧、特別高圧の充電電路(電気が流れている部分)に関わる業務をする場合、教育を受けなければならない」と記載されています。
例えば感電のリスクがゼロ(新設の配線作業など)であれば特別教育は必要ありませんが、絶対感電しない、、、なんて言い切れる作業はそうそうないと思いますので、電気工事士などの国家資格と低圧、高圧・特別高圧の特別教育はセットで取得しておくことが必要と言えると思います。
電気工事士は電気工事士法で定められています。詳しくは下記を参照。
引用:経済産業省 昭和三十五年法律第百三十九号 電気工事士法
(電気工事士等)
第三条 第一種電気工事士免状の交付を受けている者(以下「第一種電気工事士」という。)でなければ、自家用電気工作物に係る電気工事(第三項に規定する電気工事を除く。第四項において同じ。)の作業(自家用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事してはならない。
2 第一種電気工事士又は第二種電気工事士免状の交付を受けている者(以下「第二種電気工事士」という。)でなければ、一般用電気工作物等に係る電気工事の作業(一般用電気工作物等の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事してはならない。
3 自家用電気工作物に係る電気工事のうち経済産業省令で定める特殊なもの(以下「特殊電気工事」という。)については、当該特殊電気工事に係る特種電気工事資格者認定証の交付を受けている者(以下「特種電気工事資格者」という。)でなければ、その作業(自家用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事してはならない。
4 自家用電気工作物に係る電気工事のうち経済産業省令で定める簡易なもの(以下「簡易電気工事」という。)については、第一項の規定にかかわらず、認定電気工事従事者認定証の交付を受けている者(以下「認定電気工事従事者」という。)は、その作業に従事することができる。
特別教育については労働安全衛生規則で定められています。詳しくは下記を参照。
引用:厚生労働省 労働安全衛生規則
(安全衛生教育)
第59条1 事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
2 前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。
3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。(特別教育を必要とする業務)
第36条法第59条第3項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。
(中略)
4 高圧(直流にあっては750ボルトを、交流にあっては600ボルトを超え、7000ボルト以下である電圧をいう。以下同じ。)若しくは特別高圧(7000ボルトを超える電圧をいう。以下同じ。)の充電電路若しくは当該充電電路の支持物の敷設、点検、修理若しくは操作の業務、低圧(直流にあっては750ボルト以下、交流にあっては600ボルト以下である電圧をいう。以下同じ。)の充電電路(対地電圧が50ボルト以下であるもの及び電信用のもの、電話用のもの等で感電による危害を生ずるおそれのないものを除く。)の敷設若しくは修理の業務又は配電盤室、変電室等区画された場所に設置する低圧の電路(対地電圧が50ボルト以下であるもの及び電信用のもの、電話用のもの等で感電による危害の生ずるおそれのないものを除く。)のうち充電部分が露出している開閉器の操作の業務
電気工事士法(経済産業省)と労働安全衛生規則(厚生労働省)の別々の法令で決められているので、電気工事に関わる作業に必要な資格が一本化されていないので誤解している人も多いと思います。
特別教育にかかる時間と費用
特別教育の「教育内容」と「教育の時間」は安全衛生特別教育規程の電気取扱業務に係る特別教育で定められています。
*高圧・特別高圧電気取扱業務特別教育
科目 |
範囲 |
時間 |
高圧又は特別高圧の電気に関する基礎知識 |
高圧又は特別高圧の電気の危険性 接近限界距離 短絡 漏電 接地 静電誘導 電気絶縁 |
1.5時間 |
高圧又は特別高圧の電気設備に関する基礎知識 |
発電設備 送電設備 配電設備 変電設備 受電設備 電気使用設備 保守及び点検 |
2時間 |
高圧又は特別高圧用の安全作業用具に関する基礎知識 |
絶縁用保護具(高圧に係る業務を行なう者に限る。) 絶縁用防具(高圧に係る業務を行なう者に限る。) 活線作業用器具 活線作業用装置 検電器 短絡接地器具 その他の安全作業用具 管理 |
1.5時間 |
高圧又は特別高圧の活線作業及び活線近接作業の方法 |
充電電路の防護 作業者の絶縁保護 活線作業用器具及び活線作業用装置の取扱い 安全距離の確保 停電電路に対する措置 開閉装置の操作 作業管理 救急処置 災害防止 |
5時間 |
関係法令 |
法、令及び安衛則中の関係条項 |
1時間 |
実技教育は、高圧又は特別高圧の活線作業及び活線近接作業の方法について、15時間以上(充電電路の操作の業務のみを行なう者については、1時間以上)行なうものとする。
調べてみますと、「高圧・特別高圧」の講習日数は「2日間」。
本来は3日間かかるはずですが、実技を行わない講習や1時間しか実技を行わない講習が主流のようなので2日間の講習となっています。そのため、特別教育を受けただけでは「高圧又は特別高圧の活線作業及び活線近接作業」を行うことができません。別途、何らかの方法で学ぶ必要があります。
費用はおおよそ2万円(税別)です。
低圧電気取扱業務特別教育
科目 |
範囲 |
時間 |
低圧の電気に関する基礎知識 |
低圧の電気の危険性 短絡 漏電 接地 電気絶縁 |
1時間 |
低圧の電気設備に関する基礎知識 |
配電設備 変電設備 配線 電気使用設備 保守及び点検 |
2時間 |
低圧用の安全作業用具に関する基礎知識 |
絶縁用保護具 絶縁用防具 活線作業用器具 検電器 その他の安全作業用具 管理 |
1時間 |
低圧の活線作業及び活線近接作業の方法 |
充電電路の防護 作業者の絶縁保護 停電電路に対する措置 作業管理 救急処置 災害防止 |
2時間 |
関係法令 |
法、令及び安衛則中の関係条項 |
1時間 |
実技教育は、低圧の活線作業及び活線近接作業の方法について、7時間以上(開閉器の操作の業務のみを行なう者については、1時間以上)行なうものとする。
調べてみますと、「低圧」の講習日数は「2日間」。
例外として、実技を1時間のみとして1日の特別教育もありますが、その場合は、開閉器の操作しか作業ができません。もし、低圧の充電電路の敷設若しくは修理の業務を行う場合は2日間の講習を受ける必要があります。
費用はおおよそ、2日間講習が1万8000円(税別)、1日講習が1万円(税別)です。
ポイントまとめ
それでは、高圧・特別高圧または低圧の特別教育について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 電気工事には「電気工事士」と「高圧・特別高圧または低圧の特別教育」が必要です
- 特別教育は安全に作業するための講習です
- 法令で決まっているので「違反すると作業ができない」「罰せられる」可能性があります
以上3つのポイントです。
関連記事:【技能士/資格】
以上です。