今回は「三相回路のキャップとコネクタの配線方法」について解説しようと思います。
キャップとコネクタの配線は、電気工事士に限ったことではなく現場で作業する人は誰しもにあり得る作業です。
例えば、現場作業で200v電源の溶接機をコンセントから電源取出ししたい時などです。
そこで今回は、三相回路の「相順」からキャップとコネクタの配線方法までを解説しようと思いまうす。
記事の目次
三相回路の配線
三相回路の配線を行う前に、知っておくべきことがあります。
それは、三相交流の相順は規格で決められている、と言うことです。
なぜ決められているかと言いますと、電動機(モーター)の回転方向に影響するためです。電動機メーカーは規格に準じた相順を想定して回転方向を決めています。
*相順が入れ替わっている場合は、回転方向が逆回転(逆相)となり故意に入れ替えていないのに逆回転となる場合は配線間違い(接続間違い)が考えられます。
*電動機メーカーのカタログには回転方向をCW(時計回り)、CCW(反時計回り)と記載があります。
相の配列(接続順番)は下記のようになります。*下記の配列が「正相」の順番となり、どれかの相が入替ると「逆相」となります。
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左右の場合・・・左から 第1相 第2相 第3相
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上下の場合・・・上から 第1相 第2相 第3相
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遠近の場合・・・近い方から 第1相 第2相 第3相
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コンセント・・・左から時計回りに 第1相(9時) 第2相(12時) 第3相(15時) アース(18時)
*参考:JEM 1134(社団法人日本電機工業会規格)「配電盤・制御盤の交流の相又は直流の極性による器具及び導体の配置及び色別」
実際の配線例
電線には目視で相の判別ができるように、「記号(線番)」と「色」で区別しています。
下記の一覧表を参考にしてください。*客先の仕様で記号と色が指定されている場合もありますのでその都度確認すると良いと思います。
例 相と記号と色の区別
相順 | 第1相 | 第2相 | 第3相 |
電源供給側 | L1 | L2 | L3 |
電源供給側 | R | S | T |
負荷側 | U | V | W |
負荷側 | X | Y | Z |
色分け1 | 赤 | 白 | 青 |
色分け2 | 赤 | 白 | 黒 |
*私が配線する方法はトランスを経由した場合は記号を変え、遮断器を経由したら記号はそのままで記号+数字の数字を変えて配線します。
三相回路のキャップとコネクタの配線方法
それでは「三相回路のキャップとコネクタの配線方法」について解説しています。
今回の作業目的
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建屋の200V三相回路の30Aコンセントから30Aキャップで電源を取出し20Aコネクタに変換するケーブルを作ることです。
私の作業環境の問題で、使用する電気機器のキャップが20Aの場合が多いが建屋のコンセントが30Aなのです。
*作業前の確認
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30Aと20Aは誤って接続できないように大きさが違います。
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接続の形状は「引掛型」と「平刃型」があります。
*接続の形状は下記の資料で確認してください。
出典:パナソニック 電設資材総合カタログ
引掛型
平刃型
*キャップとコネクタ違いは下記の画像で確認してください。
コネクタとキャップの相順
コネクタとキャップの相順には注意が必要で、ここの配線を勘違いして逆相になってしまう場合があります。
コネクタの配線の相順はコンセントと同じで、この配線が基準となります。
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コネクタとコンセントの相順・・・左から時計回りに 第1相(9時) 第2相(12時) 第3相(15時) アース(18時)
キャップ側の相順はコネクタ(コンセント)と対称となります。キャップとコネクタを接続すると、お互いに向かい合っているわけですから、対称の相順で配線しなければ逆相となってしまいます。
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キャップの相順・・・左から時計回りに 第3相(9時) 第2相(12時) 第1相(15時) アース(18時)
コネクタ(コンセント)とキャップの相順
配線 実践
それでは実際に配線をしてみます。
今回の作業は下記の順序で進めました。
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電線の配列とコネクタ/キャップの接続の相性を確認する
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ケーブルに防水キャップを入れておく
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電線の皮を剥き、絶縁キャップを入れ端子を圧着する
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コネクタ、キャップに接続する。
それでは順番に説明していきます。
電線の配列とコネクタ/キャップの接続の相性を確認する
今回使用するケーブルは3.5sqの4芯で、電線は4色「赤」「白」「黒」「緑」となっています。
この配色は冒頭で解説したように、相の色分けに準じて配線するための配色となっているので、コネクタ/キャップの「相順」に合わせて接続する必要があります。
ここで注意したいことがあります。それは色の配列がケーブルの両端で違うので、コネクタとキャップに配線するときに区別したほうが良いということです。
ケーブルの両端の色の配列
このように、色の配列が対称となっておりコネクタとキャップの相順が対称となっているのに合わせて配線すると良いと思うのです。
下記の組み合わせを確認してください。このような組み合わせだと配線作業が素直にスムーズにできます。もし、逆の組み合わせで配線すると、電線が交差して非常に配線しずらくなりますので注意しましょう。
ケーブルとコネクタ/キャップの組み合わせ
ケーブルに防水キャップを入れておく
ケーブルの電線の配列とコネクタ/キャップの組み合わせを確認したら、組み合わせ通りに作業を進めます。
初めに行う作業は防水キャップをケーブルに入れておくことです。
それには私なりの理由があります。
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配線作業完了後に防水キャップを入れ忘れないために一番初めに入れる
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圧着端子を取付けた後に防水キャップを入れると、端子がかさばってキャップが入らない
このようなことが起きないように、一番初めに入れておくと良いと思います。
ケーブルに防水キャップを入れておく
電線の皮を剥き、絶縁キャップを入れ端子を圧着する
ケーブルのシースを剥き、電線にR形裸圧着端子を接続します。
作業のポイントは下記の4点です。
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シースは剥きすぎないようにする。防水キャップのコードクリップの位置までシースを剥かない
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電線に色別の絶縁キャップを入れて「端子の露出部分の絶縁」と「相の判別」対策をしておく
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圧着端子は接地面積が広く、抜け防止を考えR形の裸圧着端子を使用する
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電線と圧着端子と圧着工具のサイズは一致したものを使用する
この作業は非常に重要な作業です。横着な作業をしないように注意しましょう。
*圧着方法はこちらの記事で解説しています。
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フェルール端子と裸圧着端子の圧着方法【Y形R形ブレード形の基本】
続きを見る
電線の皮を剥き、絶縁キャップを入れ端子を圧着する
コネクタ、キャップに接続する
裸圧着端子の圧着ができれば、コネクタとキャップに接続し防水キャップを取付けで作業完了です。
コネクタとキャップに接続するとき注意点
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電線の配列の組み合わせ(相順)が合っていないとうまく配線できませんので、もし間違ってしまった場合にはやり直したほうが良いと思います。
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コードクリップの締め付け位置はシースを剥いていない位置です。シースを剥くときに確認しておく必要があります。
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コネクタ側の防水キャップははめ込み式なので、押し込みながらマイナスドライバで防水キャップを広げるとはめ込みやすいです。
それでは下記の画像で確認してください。
コネクタと防水キャップの取付け
端子の接続は相順を間違えないように注意しましょう。
配線が終わったらコネクタとキャップを組み立てます。
防水キャップを固定して作業完了です。
ここまででできれば作業完了です。
完成
補足 コネクタの防水キャップの取り外し方法
今回使用したコネクタは防水キャップ付きタイプなのですが、このタイプのコネクタは防水キャップがはめ込み式で「返し」があるので簡単に外すことができませんので、外し方を解説しておきます。
防水キャップからコネクタを取り外すコツは、コネクタの「溝と返し」の部分にマイナスドライバーを入れて「テコの原理」で抜き取る方法です。コネクタの返し部分には溝がありマイナスドライバーが入るようになっています。
コネクタと防水キャップの取り外し
マイナスドライバーを使用しても簡単には外れませんので、少しずつ抜くようにしましょう。あまり力を入れすぎるとマイナスドライバーが滑ってケガをします。
キャップとコネクタの配線方法のポイントまとめ
それでは、キャップとコネクタの配線方法ついて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 三相回路の相順に注意する
- キャップとコネクタは電気の容量によって大きさが違う
- キャップとコネクタの相順を合わせる
- 組付けと圧着の順番を間違えないように
以上4つのポイントが大切です。
参考
*三相回路用の3Pコネクタとキャップはこちらから購入できます。
*絶縁キャップの購入はこちらから
*丸形裸圧着端子の購入はこちらから
関連記事:【電気配線/制御盤製作 】
以上です。