今回は「ねじ山押さえはセットピースを使用する【問題点と対策】」についての記事です。
セットピースは聞きなれない部品かもしれませんが、ねじ山や部品を保護するために有効な緩衝材です。
今回の記事ではセットピースの基礎情報と使用することで起きる問題点と対策についてまとめておこうと思います。
記事の目次
ねじ山を押さえる時にはセットピースを選択する
ねじの側面をねじで押さえつけるとねじ山が潰れてしまうことがありますが、そのようなときには、ねじの先端にセットピース(別名:軸保護スペーサー)を装着して使用します。
セットピース
まずは、セットーピースの基礎情報について下記3点について話を進めます。
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セットピースの特徴
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材質
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使用する状況
セットピースの特徴
セットピース(軸保護スペーサ)の最大の特徴は、柔らかい素材であることです。
柔らかい材質のため、ねじ山を直接抑えてもねじ山が潰れるまえにセットピースが変形するのでねじ山を保護します。
材質
セットピース(軸保護スペーサー)の材質は黄銅(銅と亜鉛の合金で真鍮とも呼ばれます)の軟質金属です。
セットピースの取り扱いをしているミスミと廣杉計器で調べてみました。どちらも材料はC3604BDでした。
材料 | 硬度(Hv) |
S45C | 200前後(換算表でのおおよその値) |
C3604BD(快削黄銅) | 80 |
使用する状況
セットピースを使用する状況は、ホーローセットなどのねじの先端をねじの側面や部品に接触させるときに、ねじ山がつぶれたり部品に傷が入ることを嫌う場合に使用します。
セットピース
よく見かける使用例では、ボールねじのベアリングサポートの固定ナットのゆるみ対策で、固定ナットにセットピース&ホーローセットを入れて締めこみボールねじの側面のねじ山を押さえる使い方です。セットピースの効果で、ボールねじのねじ山が潰れることはありません。
もし、ねじ山をセットピースなしで直接押さえ付けたとしたら、ねじ山が潰れてをバラせなくなります。ですから、ねじ山のように潰れたり傷が付くことでバラせなくなったり調整できなくなったりする事を避ける為に使用されるのです。
セットピースの問題点
セットピースはねじ山を保護するメリットがあるのですが、実はその反面いくつか問題点があるので紹介しておきます。
セットピースの問題点
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セットピースを使用してねじを締め付けるとねじが緩みやすい
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セットピースの固定ねじは緩んでいないが部品がズレる
それでは、詳しく解説していきます。
セットピースを使用してねじを締め付けるとねじが緩みやすい
セットピースを使用するとねじが緩みやすい原因は下記の2点です。
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セットピースを締付けるとセットピースが潰れることで締付け不足に陥る
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締付け後の時間経過によってセットピースが変形(潰れて)してねじの軸力が落ちる
この2点が起きる可能性があり、ねじの軸力低下によってねじのゆるみにつながります。
セットピース
セットピース固定のねじは緩んでいないが部品がズレる
セットピースは軟質材で相手の形状に合わせて変形しますのでねじや部品と食い込み合うことがありません。
つまり、いくら強い力でセットピースを押さえつけでもセットピース潰れるだけで接触面の摩擦は高くありません。
私は実際に、下記のような事例を何度か経験しました。
セットピース
セットピースの問題の対策
それでは、セットピースの問題点に対して、どのような対策ができるか考えてみましょう。
セットピースが潰れて締め付け不足になる対策
セットピースが潰れて締め付け不足になる対策としては、、、
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ねじを締め付けセットピースが潰れた後にさらに締付ける(適正な締付けトルク)
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ねじのゆるみ止め剤(低強度)を使用する
このような方法が有効です。
セットピースの接触面の摩擦を高くする対策
セットピースの接触面の摩擦を高くする対策としては
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ねじの本数を増やしてセットピースで押さえる箇所を増やす
この方法が有効です。セットピースの材質を変えることはできないので、ねじの本数を増やしてセットピースの接触面を稼ぐことで部品がズレる対策となります。
対策まとめ
これらの対策で、セットピースを押さえるねじのゆるみと部品のズレの対策の効果はあります。ですが、時間経過とともにセットピースが変形してねじの軸力が落ちて部品を押さえる摩擦が低くなる事は避けられません。定期的な増し締め(点検)が必要と考えられます。
ポイントまとめ
それでは、セットピースついて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- セットピースはねじの先端に装着して使用する
- セットピースは黄銅(軟質材)なので、接触するねじを潰したり部品を傷つけない
- セットピース(ねじ)のゆるみ対策は、増し締めとゆるみ止め剤の塗布する
- 固定したい部品がズレてしまうときは、セットピース(ねじ)の本数を増やす
以上4つのポイントです。
もしホーローセットで固定している部品で、バラスことがある、調整をすることがある、などの場合にはセットピースの使用がおすすめです。ただし、部品を固定する力やねじにゆるみが発生することが考えられるので十分注意しましょう。
参考
*止めねじについてはこちらの記事で紹介しています
-
止めねじの種類と使い方まとめ【ホーローセットやイモネジの先端規格】
続きを見る
*止めねじの緩み対策はこちらの記事で紹介しています
-
ホーローセットがゆるみ易い原因【止めねじやイモネジのトラブル対策】
続きを見る
関連記事:【締結要素】
以上です。