今回は「ホーローセットがゆるみ易い原因」についての記事です。
ホーローセットは止めネジとして使用されることが多いねじですが、私には以前から気になっていることがありました。
それは、「ホーローセットは緩みやすいのではないか?」と言う疑問です。
そこで今回は、ホーローセットが緩む原因から緩み止めの対策について考えてみたいと思います。
記事の目次
ホーローセットがゆるみ易い原因
ホーローセットとは
ホーローセットとは、座が無いねじで、ねじの先端を相手部品と接触させて軸力を発生させて固定するねじです。
相手部品に接触させて締付けるので、ホーローセットの先端の形状には種類があります。
*ホーローセットは、別名「止ねじ」「イモネジ」「六角穴止めねじ(マイナスやプラス形状の頭もあります)」などと呼ばれています。
ホーローセットの代表的な先端の形状は下記4の点です。
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平先・・・ねじの先端が平なので相手部品に傷が付かないので、調整ねじとして使う
- 棒先・・・先端が円筒形の突起になっていて、相手部品の穴、溝にはめこんで位置決めや永久固定として使う
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くぼみ先・・・ねじ先端が円形にくぼんでいる為、くぼんでいない円形の部分が相手の部品に食い込む。回転部品などに使う
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トガリ先・・・先端が円錐形状に尖っている。相手部品に円錐の窪みなどの溝があれば部品の位置決めと固定が出来き再現性がある
ホーローセット
ホーローセットのゆるみと欠点
ホーローセットはあらゆる場面で使用されており、機械装置に欠かせないねじなのですが、このねじには欠点があります。
ホーローセットの欠点
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ゆるみが起きやすい
ゆるみが起きる使用方法として、特に回転軸と部品の固定に使用される場合にはゆるみが起きる可能性が高いと言えます。
例えば、モーターやコンベアなどをイメージしてください。
「プーリー」「スプロケット」「カップリング」「シャフト」などにホーローセットが使用されている場合が多いのではないでしょうか?このような場合は特に注意が必要なのです。
その裏付けとして、装置の輸送と実際の使用で全体の3割程度のねじが緩んでしまうことを何度も経験してきました。
そこで、ホーローセットのゆるみの原因を私の経験から推測してみたのですが、、、
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回転運動
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振動
この2点が影響してゆるみが発生していると考えられました。
しかしそれを言い出したら、六角穴付きボルトのような通常使用するねじもゆるむはずですが、しかしそのようなことは起きていません。
この違いはどこにあるのでしょうか?
締付けに問題があるのでは?
六角穴付きボルトのような通常使用するねじと、ホーローセットの違いについて考えてみたのですが2点の重要な事に気が付きました。
まず1点目ですが「ホーローセットはねじ径に対しての工具径が小さいので、締付けトルクが不足しているのではないか?」と言う事です。
小さい工具で強く締付けると、ねじの頭をなめる危険性が高まりますので締付けトルクが弱くなってしまう傾向があります。
ねじ径 | ねじ種類 | 六角レンチ径(mm) |
M8 | 六角穴付きボルト | 6 |
M8 | ホーローセット | 4 |
2点目ですが「ホーローセットにはワッシャーのような座が無いので、摩擦面積が少ない為に緩みやすいのではないか?」と言う事です。
ホーローセットは冒頭でも言いましたように「ねじ先端を相手部品と接触させて軸力を発生」させていますので、通常のねじとは摩擦を発生させている状況が違いますよね。
摩擦力が弱ければ当然ゆるみやすくなってしまいます。
このように、ホーローセット特有の締付け具合に、外部要因として回転運動と振動が加わることで、ゆるみ易いのではないかと考えました。
*ねじの締付についてはこちらの記事をご覧ください
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締結用のねじとは【ねじの原理から締付けトルクの算出】
続きを見る
ホーローセットのゆるみ止め対策
ホーローセットは「ゆるみやすい」と解説してきましたが、ここからは「ホーローセットはゆるむ」を前提とした場合の「ゆるみ対策」を考えていきたいと思います。
*今回は「ゆるみが発生し易い回転部品に使用する場合」を前提に対策を検討してみます。
ゆるみの対策案
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ホーローセットを2個使用する
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長いホーローセットをナットでロックする
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ねじのゆるみ止め剤を塗布する
例えばこのような対策が考えられました。
それでは、どの方法が最適なのか?さらに掘り下げて考えてみます。
ゆるみの対策を検討する
ホーローセットを2個使用する
ホーローセットを2個使用する場合に考えられることは以下の3点です。
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部品交換時にホーローセットが2個入っている事を知らないと、2個目だけゆるめて部品をバラそうとして部品がバラせない。
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1個目の部品を押さえつける力が2個目を締め付ける事で弱くなる可能性がある。
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ゆるみに関しては長いホーローセットを使用している事に近い効果が得られる可能性はある。(摩擦面積が増えるため)
どうでしょうか。メンテナンス性の問題や軸力に懸念があるので、あまり望ましくないように思えますね。
ホーローセット2個使用のイメージ
*クリックで拡大
ホーローセットをナットでロックする
ホーローセットをナットでロックする場合に考えられることは以下の2点です。
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ナットを締め付けるとより緩みにくくなる。
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部品よりホーローセットが飛び出すので使用できる場面が限られる。
調整ねじの使い方としては良い。
この方法ですと緩みにくくなるので効果がありそうです。ただ、今回は回転部品に使用すことを前提にしているので、突起が何かに干渉したりひっかっかる可能性を考えると少し心配ですね。
ホーローセットとナットでロックのイメージ
*クリックで拡大
ちなみにですが、日本ソケットスクリュー工業協同組合さんは、ナットでロックする方法は推奨していないようです。
出典:日本ソケットスクリュー工業協同組合 六角穴付き止めねじの使用上の注意
ねじのゆるみ止め剤を使用する
ねじのゆるみ止め剤を使用する場合に考えられることは以下の3点です。
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ゆるみ止めが使用禁止でない事が前提
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バラせなくなる可能性がある
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部品点数が増えず手軽に施工できる
「バラせなくなる可能性がある」件は、ゆるみ止めの強度を低強度か中強度を選択すれば良いのですが、ゆるみ止め剤の強度区分によってはゆるみ止めの作用が弱くて緩むかもしれません。
ねじの緩み止め
対策と結果
「ゆるみの対策」として3つの方法を考えてみましたが、どう思われましたか?
私は「設計変更が必要なく組立作業のルール化で対応できそう」と言う理由で「ねじのゆるみ止め剤を使用する」を組立作業の新たなルールとして採用することにし、ゆるみ止め剤の強度は低強度としました。
実は「ねじのゆるみ止め剤を使用する」方法は5年前から導入していまして、低強度のゆるみ止め剤を塗布してからはホーローセットのゆるみの報告は1件もありません。と言う事はそれなりの効果はあったと認識をしています。
ホーローセットはゆるみ易いのポイントまとめ
それでは、ホーローセットはゆるみ易いついて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- ホーローセットとは、座が無いねじで、ねじの先端を相手部品と接触させて軸力を発生させて固定するねじ
- ホーローセットはゆるみが起きやすい
- おすすめのゆるみ対策は「ホーローセットをナットでロックする」 と 「ねじのゆるみ止め剤を使用する」
以上3つのポイントです。
私の経験上、ねじのゆるみは殆どが締め忘れや締付け不足が原因です。ねじのゆるみは安易に考えがちですが、笑い事では済まされない基本的な事だと思います。しっかり取り組んで対策しましょう。
*ねじのゆるみ止めの購入はこちらから
*ホーローセットの購入はこちらから
参考
*止めねじについてはこちらの記事で紹介しています
-
止めねじの種類と使い方まとめ【ホーローセットやイモネジの先端規格】
続きを見る
*相手部品に傷をつけたくないときはセットピースがおすすめです
-
ねじ山押さえはセットピースを使用する【問題点と対策】
続きを見る
関連記事:【締結要素】
以上です。