今回は「テーパーピンの新旧JIS規格」についての記事です。
機械装置を試運転した後の出荷前に、テーパーピンを打つことがあります。テーパーピンは組立後の部品の位置決めの目的で使用します。テーパー部分は1/50テーパになっていて、ピンの長さが50mm長くなるごとに外径が1mm大きくなっているピンです。
私は機械組立をしていて、テーパーピンは日常的に使用するのですが、先日テーパピンの規格を調べていたところ旧JISと新JISについていろいろと疑問が生じたので、今回の記事でまとめておこうと思います
記事の目次
テーパーピンの新旧JIS規格【精度と硬さ呼び長さの一覧表】
新旧の流通
テーパーピンのJIS規格は1954年に制定されて1975年に改正されました。これが旧JIS規格と言われているものです。その後、ISO規格に合わせるために1988年に改正され新JIS規格となりました。
ポイントはコレ
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主流は旧JIS規格
めねじ付きテーパーピン
新JIS規格となってからかなり長い年月が経ちますが、現在流通しているテーパーピンは旧JIS規格が主流となっています。
2015年のJIS規格では旧JISの規格表を付属書として記述していますが「将来JIS規格に記述しない」となっています。なので、将来旧JISから新JISに移行してくる可能性があります。
とは言え、それほど大きな違いはないので、今まで通りのやり方の施工方法で問題ないと思われます。
旧JISと新JISの寸法の違い
旧JISと新JISの寸法に関係する違いをざっくりまとめると、テーパーピンの径の公差が旧JISがプラス公差で、新JIS規格がマイナス公差です。その他にも微妙に違いがあります。
呼び径の違い
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旧JIS【1.6】 ⇒ 新JIS【1.5】
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旧JIS【13】 ⇒ 新JIS【12】
呼び長さの違い
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旧JIS【25】 ⇒ 新JIS【24】
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旧JIS【なし】 ⇒ 新JIS【26】
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旧JIS【なし】 ⇒ 新JIS【30】
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旧JIS【36】 ⇒ 新JIS【35】
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旧JIS【56】 ⇒ 新JIS【55】
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旧JIS【63】 ⇒ 新JIS【60】
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旧JIS【なし】 ⇒ 新JIS【65】
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旧JIS【なし】 ⇒ 新JIS【85】
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旧JIS【なし】 ⇒ 新JIS【95】
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旧JIS【110】 ⇒ 新JIS【なし】
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旧JIS【125】 ⇒ 新JIS【120】
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旧JIS【225】 ⇒ 新JIS【なし】
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旧JIS【250】 ⇒ 新JIS【なし】
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旧JIS【280】 ⇒ 新JIS【なし】
呼び長さの公差の違い
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旧JISよりも新JISの方が細かく長さの公差を規定している
外径寸法の違い
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旧JIS【プラス公差】 ⇒ 新JIS【マイナス公差】
旧JIS規格
精度と硬度
現在主流の旧JIS規格のテーパーピンの精度と硬度についてまとめておきます。
テーパーの精度は、1/50テーパーのテーパー精度と、表面粗さによって1級と2級に等級分けされています。1級の方がテーパー精度の許容差が小さく、表面粗さも小さいので精度が高いです。
旧JISのテーパ精度
テーパーピンの硬度の規格は、旧JIS、新JISとも同じ規格です
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SUS303・・・硬度 HV208~280(HRB93~HRC27)
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鋼ピン 熱処理なし・・・硬度 HV125~245(HRB70~HRC21)
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鋼ピン 焼入れ焼き戻し・・・硬度 HV255~327(HRC23~33)
*焼入れ焼き戻しをした鋼ピンは「Q」の表記をつける
*鋼ピンには基本的に表面処理はしない
テーパーピンの寸法表
旧JIS規格のテーパピンの寸法表です。
旧JIS規格一覧
テーパーピンの規格 参考 JIS B 1352-1988
新JIS規格
精度と硬度
新JIS規格のテーパーピンの精度と硬度についてまとめておきます。
新JISはテーパー部の表面粗さによって2種類あります。
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A種・・・テーパーの表面粗さ Ra=0.8μm
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B種・・・テーパーの表面粗さ Ra=3.2μm
*旧JISに記述があったテーパー精度については新JISでは記述がありませんでした。
簡単にまとめると、A種の方が凸凹の差が少なく、B種はA種よりも荒いです
硬さは旧JIS、新JISとも同じ規格です
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SUS303・・・硬度 HV208~280(HRB93~HRC27)
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鋼ピン 熱処理なし・・・硬度 HV125~245(HRB70~HRC21)
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鋼ピン 焼入れ焼き戻し・・・硬度 HV255~327(HRC23~33)
*焼入れ焼き戻しをした鋼ピンは「Q」または「焼入れ」と表記する
*鋼ピンには基本的に表面処理はしない
テーパーピンの寸法表
新JIS規格のテーパピンの寸法表です。
新JIS規格一覧
テーパーピンの規格 参考 JIS B 1352-1988
ポイントのまとめ
それでは、テーパピンのJIS規格について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- テーパピンのJIS規格は1988年に改正され新JIS規格となったが、現在主流なのは旧JIS規格のテーパーピン
- ざっくりまとめると、テーパーピンの径の公差が旧JISがプラス公差で、新JIS規格がマイナス公差です。その他、長さと径の設定にも微妙に違いがある
- テーパーピンの精度は旧JISが1級、2級で新JISがA種、B種のランク分けがあり、硬度は旧JISも新JISも同じ規格
以上3つのポイントです。
参考
*テーパーピンの購入はこちらから
*テーパーピンリーマーの購入はこちらから
この記事は【JISハンドブック4-2ねじⅡ2015】を参考にしています。
関連記事:【締結要素】
以上です。