タップが立たない薄板や、狭くてタップ加工ができない場所の板などに、タップ機能を持たせる方法をご存じでしょうか?
タップ機能を持たせる方法
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圧入ナットを使用する
圧入するナット
ここで言う圧入ナットとは、ナットの片面が段付き加工されていて、その部分が「ギザギザ」「ローレット」「溝」「テーパー」などの加工がされているナットのことです。
このようなタイプのナットは、穴に圧入すると板に食い込んで固定されます。
今回の記事では、圧入ナットの基礎情報についてまとめてみます。
穴に圧入するナットを使えば締付けが簡単
圧入ナットの呼び名と種類
圧入ナットの呼び名はメーカーによって色々あります
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カレイナット
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プレスナット
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プレスファスナー
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クリンチングファスナー
このような呼び名の商品は、どれも機能としては同じですが、様々な形状、タイプがあるので使用する場面によって使い分けが必要です。
出典:ポップリベット・ファスナー株式会社 カレイナット カタログ
参考
ちなみにですが、圧入するナットの類似に、ボルトを圧入して固定する「圧入スタッド」「プレススタッド」と呼ばれる製品もあります。
通常、スタッドボルトは「ねじ込み」と「溶接」で雄ねじを固定することが多いのですが、圧入でもスタッドボルトを立てることができるわけです。
メリットとデメリット
圧入ナットのメリットとデメリットをまとめておきます。
メリット
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一度圧入されるとナットが脱落しない
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ねじを締めたときにナットが空転しない
デメリット、注意ポイント
- 板からナットが飛び出る
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強く締付けるとナットが空転してしまう可能性がある
- 圧入固定なので溶接と違い、圧入と逆方向に力をかけるとナットが外れてしまう
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ワッシャーを使用しないのでナットと板の接地面積が小さく、ねじを締めすぎると「板が変形する」可能性がある
このような特徴があるので、構造物の固定にはおすすめできません。
どちらかと言うと、カバー、付属部品、負荷がかからない部品、などの固定に使用するのが最適です。
ナットの下穴
ナットを圧入する穴の大きさは、使用するナットの種類や大きさによって決まっています。例えば「M6ナットは下穴8mm」って感じです。
穴は大きすぎると軽圧入になってしまうので、空回り、脱落してしまうことがあり、小さすぎると圧入できません。
詳しくは、自分が使用するナットの商品説明またはカタログを見て調べた方が確実です。
*参考として、カレイナットの寸法表を載せておきます。
出典:ポップリベット・ファスナー株式会社 カレイナット カタログ
圧入の基本はプレス
ナットの圧入方法は2つあります。
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治具&プレスで圧入
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ねじを締めこんで圧入
圧入方法の基本は「プレスによる圧入」です。プレスとはハンドプレス、油圧プレスなどの押し込む機械のことです。
作業のポイントとして、ナットを押し込むと板が変形してしまったり、ナットがズレて圧入されてしまうことがあるので、必要に応じてプレス側、反プレス側に専用の治具を使ってプレスすることが望ましいです。
*参考として、カレイナットの専用治具を載せておきます。
出典:ポップリベット・ファスナー株式会社 カレイナット カタログ
ねじを締めこんで圧入する方法は、現場作業などでプレスが使えない時に最適です。本来はプレス圧入なので、失敗する可能性もありますが、穴にナットを手でセットしてねじを締めこめばナットは穴に食い込んでいきます。
DIYとか現場作業などで、イザというときに役立つ使い方なので覚えておいて損はありません。
ねじを締めこんで圧入する
上記の写真は、M6のカレイナットで品番「S6-15」をねじの締めこみで圧入した例です。
ナットは空転せずねじをしっかりと締付けることができましたが、ねじを緩めてねじをハンマーで叩いたら、ナットは簡単に外れました。溶接と違い圧入だと固定の確実性は低くなるので、その点は押さえて起きた方が良さそうです。
ポイントまとめ
それでは、圧入ナットについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- タップ加工で出来ない板は、圧入ナットを使う
- メーカーによって呼び名と形状に種類があるので、カタログなどで調べて使い分けること
- ナットの固定はプレス圧入が基本だが、ねじを締付けて圧入することも可能
以上3つのポイントです。
*カレイナットの購入はこちらから
*プレスナットの購入はこちらか
*タップ機能を持たせる方法には、板にかしめて固定するブラインドナットやエビナットと呼ばれる製品もあります。
かしめて固定するナット
関連記事:【締結要素】
以上です。