今回は「ボール盤のドリルチャックの交換方法」についての記事です。
ボール盤は機械加工の基本であり、穴あけやタップ加工の定番の機械です。このボール盤には切削工具を固定するドリルチャックが付いていますが、ドリルチャックの取付けや交換方法を知らない人も結構います。
そこで今回の記事では、ボール盤のテーパー型ドリルチャックの交換方法についてまとめておこうと思います。
記事の目次
ボール盤のテーパ型ドリルチャックの種類
ドリルチャックには種類がある
ドリルチャックとは、材料を切削する「切削工具」であるドリル(キリ)やタップなどを掴んで固定する器具のことです。
まずはドリルチャックの基礎情報として、チャックの締付け方式の種類について説明しておきます。
チャックの締付け方式は2つあります。
- チャックハンドル式
- 手締め式(キーレスドリルチャック)
下記にドリルチャックで超有名なユキワ精工さんのドリルチャックを載せておきます。
チャックハンドル式
手締め式(キーレスドリルチャック)
チャックハンドル式は、チャックハンドルと呼ばれる締付け工具を使用して切削工具を固定するので、把持力が高く切削工具が滑りにくいです。そのため、タップ作業のようにスリップしてはイケない作業に最適です。ただ、チャックハンドルの締付けや緩めの作業は結構面倒なので作業性は悪いと言えます。
手締め式は、人の手で切削工具を締付けて固定するタイプで、締付ける工具が不要ですが把持力がチャックハンドル式よりも低く切削工具がスリップする可能性があります。そのため、ドリル(キリ)で穴あけする作業には最適ですが、タップ作業には不向きです。
さて、ここからが今回の記事で重要なお話です。
実はドリルチャックはチャックの締付け方式だけでなく、ドリルチャック本体の固定方法に種類があるのはご存じでしょう?ドリルチャックは初めから付いていたり交換することがないので、取り外したり取付ける経験がない人も多いと思います。
ドリルチャック本体の固定は2つの方法があります。
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ねじ型(ねじは3/8-24UNFまたは1/2-20UNF)
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テーパー型(ジャコブステーパまたはモールステーパ)
ドリルチャック(ネジ型)
ドリルチャック(テーパー型)
一概には言えませんが、ねじ型とテーパー型にはこんな使い分けがされています。
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ねじ型・・・電気式、充電式、のドリルに使用されていることが多い
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テーパ型・・・工作機械、ボール盤に使用されていることが多い
このような使い分けですが、私の経験では電気式ドリルのテーパ型が使用されていることがありましたし、その逆もあるでしょう。
なので、ねじ型とテーパー型のどちらが使用されているのか見分けがつかない場合は「取扱説明書」で確認するか「メーカーに問い合わせ」て調べるのがおすすめです。
テーパーの種類
ドリルチャックを取付ける主軸のテーパーには2つの種類があります。
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ジャコブステーパ(表記:JT)
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モールステーパ(表記:MT)
ボール盤ではジャコブステーパが一般的ですが、テーパーの大きさには種類あるので「取扱説明書」で確認するか「メーカーに問い合わせ」て調べると良いです。
それ以外には、下記の寸法表で主軸のテーパーを測定してテーパーの種類や大きさを判別できます。
出典:ユキワ精工株式会社
ジャコブステーパ(表記:JT)の寸法表
モールステーパ(表記:MT)の寸法表
ボール盤のテーパー型ドリルチャックの交換方法
ドリルチャックの取付け方法
今回新品のドリルチャックを取付けるにあたり、ユキワ精工株式会社の型式「13MG -JT6」を購入しました。
取付け方法はこうなります。
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主軸のテーパーとドリルチャックのテーパーをパーツクリーナーで脱脂する
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ドリルチャックを主軸に挿入して、プラスチックハンマーで2回程度叩いて圧入する
下記の写真で確認してください。
ドリルチャックの取付け方法
主軸とドリルチャックのテーパーを脱脂しておく
チャックの爪を開いておき、ドリルチャック本体をプラスチックハンマーで叩く
絶対にチャックの爪を出したままで、爪を叩かないこと。下記は爪が出ている状態です。
ドリルチャックの取付けには2つのポイントがあります。
まず1つ目は必ず脱脂をすることです。今回実験のために脱脂せずに装着したら「えっ?」って言うくらい簡単に外れてしまいました。
2つ目のポイントは、ドリルチャックのチャックの爪を必ず開いておく事です。私の過去の失敗として、爪をハンマーで叩いて装着したら爪の動きが硬くなってしまって、使い物にならなくなってしまったことがありました。なので、必ずドリルチャック本体のみを叩くように注意しましょう。
ドリルチャックの取外し方法
ドリルチャックの取外しには2つの方法があります。
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主軸のナットを緩めて、ナットが進む力で押し抜く
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主軸とドリルチャックのすき間にテーパー形状の道具(くさび)を叩きこんで抜く
今回はナットを回転させて押し抜いてみました。
ドリルチャックの取外し方法
ドリルチャックに六角レンチをチャックして、ドリルチャックが回転しないように固定する
主軸のナットを緩めて回転させて押し抜く
この作業のポイントは、ドリルチャックが落ちても破損したり傷が付かないように木材などを真下に置いておくことです。
ドリルチャックは意外と重量があって、抜けたときに手が滑って落下してしまうことがあります。そんなことが起きても大丈夫なように準備が必要です。
主軸のテーパーが損傷した例
テーパー型のドリルチャックはねじ型と違って摩擦によって締結しています。
そのため、テーパー部分にゴミや油分があったり、負荷が大きい穴あけをすると主軸とドリルチャックのテーパー部分がスリップしてしまうことがあります。
主軸のテーパーが損傷した例
上記の写真のようにスリップによって軸が損傷してしまうと、ドリルチャックを新品にしてもテーパーの密着が甘くなり、抜けたり外れてしまいます。
もしこのような状態になったら主軸を交換するしか方法がないので、そうならないように正しい方法でドリルチャックを取付けましょう。
テーパ型ドリルチャックのポイントまとめ
それでは、テーパ型ドリルチャックについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- チャックの方法には「チャックハンドル式」と「手締め式(キーレスドリルチャック)」がある
- ドリルチャックの取付け部分は「ねじ型」と「テーパー型」がある
- テーパー型の取付けは「脱脂」と「爪を叩かない」を確実に行うこと
- テーパー型の取外し方法は「ねじで押し抜く」方法と「テーパー形状の道具(くさび)を叩きこんで抜く」方法がある
以上4つのポイントです。
*ドリルチャックはユキワ精工がおすすめです。
小さいドリルのチャックにはコレ
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以上です。