今回は「ステンレスの304と316の見分け方/モリブデンチェッカーでモリブデンを検出する」についての記事です。
機械装置にステンレスを使用する場合、一般的にはSUS304を使用することが多いと思いますが、塩化物の環境下ではSUS316を使用することがあります。ところが、このSUS304とSUS316は見た目や磁石で判別できないので、取扱いを間違えて材料が混ざってしまうことがあります。
今回の記事では、そのような時にSUS304とSUS316を判別する方法について紹介しようと思います。
記事の目次
ステンレスの304と316の見分け方
判別はモリブデンチェッカー
ステンレスには多くの種類がありますが、機械装置の部品として一般的に使用されるのは「耐食性」「加工性」「溶接性」のバランスがよいSUS304です。
ステンレスは見分けがつかない
左がSUS316 右がSUS304
ところが使用目的によっては、SUS304よりもさらに耐食性に優れるSUS316を使用することがあるのですが、実は見た目では「SUS304とSUS316はどっちがどちっちなのか?」見分けがつかないので、混ざってしまい大変なことになることがあります。
そんな時にはおすすめしたい、SUS304とSUS316の判別方法があります。
SUS304とSUS316の判別方法はコレ
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モリブデンチェッカーを使用して、SUS316に含有しているモリブデンを検出する
このような検出キットで判別します。
引用:株式会社ケミカル山本 モリブデンチェッカー
ステンレス中のモリブデンを秒速で簡単に、精度よく、非破壊的に現場で検出可能。SUS316の判別に極めて有効。
SUS304とSUS316の違いはモリブデン
SUS316にはモリブデンが含有していると言うことですが、具体的にSUS304とSUS316の成分の違いについてまとめておきましょう。
SUS304とSUS316の化学成分(%)
SUS304 | SUS316 | |
C(炭素) | 0.08%以下 | 0.08%以下 |
Si(珪素) | 1.00%以下 | 1.00%以下 |
Mn(マンガン) | 2.00%以下 | 2.00%以下 |
P(リン) | 0.045%以下 | 0.045%以下 |
S(硫黄) | 0.030%以下 | 0.030%以下 |
Ni(ニッケル) | 8.00~11.00% | 10.00~14.00% |
Cr(クロム) | 18.00~20.00% | 16.00~18.00% |
Mo(モリブデン) | なし | 2.00~3.00% |
*参照 日鋼ステンレス株式会社 ステンレス化学成分表
両者を比べてみますと下記の違いがわかります。
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SUS316のほうがNi(ニッケル)の添加量が多い
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SUS316にだけMo(モリブデン)が添加されている
これにより両者の特徴に違いがあります。
SUS304の特徴
- 海水や塩酸の環境では腐食しやすい
- 金属組織はオーステナイト系ステンレスとなり耐食性に優れている
- ステンレスの中でも「耐食性」「加工性」「溶接性」のバランスが良い
SUS316の特徴
- SUS304より高価
- 海水や塩酸に強い
- SUS304よりも耐食性が高い
- ステンレス特有の孔食に強い
*海水と塩酸に強いと言っても、状況によっては腐食することがあります。SUS316以上の耐食性を求める場合は【チタン(Ti)】をお勧めします。
Ni(ニッケル)とMo(モリブデン)の添加量の違いによって、SUS316のほうが耐食性に優れていて、価格も高いと言うことなのです。
参考
*腐食についてはこちらの記事をご覧ください
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腐食のカギは金属の安定【腐食と錆びの形態と種類】
続きを見る
それでは、SUS316にモリブデンが含有していることが分かったところで、モリブデンチェッカーでSUS304とSUS316の判別する方法を紹介します。
モリブデンチェッカーでモリブデンを検出する方法
検出の概要説明
モリブデンチェッカーでモリブデンを検出する方法を簡単にまとめますとこのようになります。
検出方法
- 赤キャップの発色試験液に粉末の試験薬を入れ、瓶を振って混ぜる
- 電解紙に白キャップの電解液を2液染み込ませる
- 電解紙をステンレスに当てて、乾電池のマイナスを電解紙、プラスをステンレスに接触させて電解反応させる
*詳しくは説明書をご覧ください。
モリブデンチェッカー
検出によってわかること
この方法によってわかることは下記の2つです
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クロムの含有・・・電解紙が黄色の発色があればクロムが含有している金属である
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モリブデンの含有・・・電解紙に赤キャップの液を1~2液染み込ませて、チョコレート色の発色があればモリブデンが含有している金属
*発色の判別は、付属の色見本表と見比べておこないます。
ステンレスにはクロムが含有しているので、クロムの発色があればステンレスと分かります。そして、クロムが含有していてモリブデンの発色もあればステンレスの316と判断ができるのです。
検出の色見本
判別がうまくいくポイント
実際にモリブデンチェックをやってみて感じたことは下記の2点です
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赤キャップの発色試験薬は1液がよい。多く液を染み込ませると、色がにじんでしまい判別が難しくなる
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発色具合が明確ではないので、「数回検出する」「304と316の両方をモリブデンチェックをして色の違いを見比べる」の2点を行う
この2つのポイントのように検査すると迷いなく判別ができます。
モリブデンチェッカーを使用した結果
それでは、実際にモリブデンチェッカーを使用してSUS304とSUS316の判別を行ってみましたので紹介します。
画像で順を追って確認してみてください。
モリブデンチェッカーを使用した結果
準備段階
クロムの含有の確認。どちらもクロムを含有しているのでステンレスと判別できる
モリブデンの含有の確認。チョコレート色に発色したほうがモリブデンを含有しているのでSUS316となる
何度か試験を繰り返すと間違いなく判断できます。
SUS304とSUS316の見分け方のポイントのまとめ
それでは、SUS304とSUS316の見分け方について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- ステンレスは見分けがつかないが、SUS316にはモリブデンが含有している
- モリブデンチェッカーで試験すればモリブデンが含有しているかは判別できる
- 発色の判別間違いの対策として、何度か試験を繰り返すと間違いなく判別できる
- 304と316の両方をモリブデンチェックをして色の違いを見比べると判別しやすい
以上4つのポイントが大切です。
今回はステンレスの見分け方についてモリブデンチェッカーを使用した方法を紹介しました。SUS304もSUS316も磁石には付かないので判断するためにはモリブデンの含有を検査するしかありません。SUS316を使用する場合は特別な環境化が想定されますので、SUS304を混ぜて使用することがないように注意しましょう。参考にしてください。
*モリブデンチェッカーの購入はこちらから
関連記事:【材料/溶接/加工/表面処理】
以上です。