今回は、金属の腐食のイメージを掴むために「金属の安定と腐食と錆びの形態」について簡単にまとめておこうと思います。
今後、腐食の事例を腐食の形態ごとに記事にしていきます。
記事の目次
腐食のカギは金属の安定
金属とは、本来自然界で鉱石に含まれているのものです。
私たちが普段目にする金属は材料として塊となっていますが、それは鉱石から人為的に金属だけを取り出して塊にしたものです。
鉱石に含まれている状態の金属は、様々な元素と結合して化合物となっていて科学的に安定しています。そのため、鉱石から金属を取出し塊とすると不安定となってしまいます。
不安定と言うことは、何かと結びついて安定状態になろうとするので、その現象が「腐食(錆び)」と言うことなのです。
腐食とは
腐食とは、金属が周囲の「金属」「気体」「液体」と化学反応して、溶けたり金属以外の物質に変わり損なわれていくことです。
この場合、金属の化学反応とは酸化還元反応のことです。
酸化還元反応とは、酸化と還元が必ず同時に起きる現象で、電子のやり取りがある反応のことです。
酸化反応
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酸素と化合する反応
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水素を失う反応
還元反応
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酸素を失う反応
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水素と結びつく反応
このような現象が起きることを酸化還元反応といます。
錆とは
錆(さび、サビ)とは、一般的に腐食によって生成される腐食生成物が層になっている「赤錆」を差しますが、錆は赤錆以外にも種類があります。
代表的な錆の種類
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赤錆・・・鉄が酸化した状態。赤錆の被膜は外部の環境と遮断できないので、腐食が進み続きます。
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黒錆・・・鉄が高温状況(水がない状況)で化学反応してできる。黒錆の被膜は外部の環境を遮断するので腐食が進行しづらい。
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白錆・・・アルミニウムまたは亜鉛が酸化してできる。アルミニウムの白錆は大気中以外では腐食が進行する。亜鉛の白錆は腐食に強い。
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青錆・・・銅が酸化した状態。青錆の被膜は外部の環境を遮断するので内部の腐食を防ぐ。
この様な種類があります。
錆の種類
赤錆
黒錆
白錆・・白く斑点になっている部分が白錆
腐食と錆びの形態と種類
腐食と一口に言っても、腐食には様々な形態があるため腐食の現象は細かく分類されています。
*下記に代表的な腐食形態を示します。
腐食の形態
それでは、腐食の分類をそれぞれ簡単にまとめておきます。
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乾食と湿食
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高温酸化と高温腐食(乾食)
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全面腐食と局部腐食(湿食)
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異種金属接触腐食(局部腐食)
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孔食(局部腐食)
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すきま腐食(局部腐食)
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粒界腐食(局部腐食)
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エコロージョン・コロージョン(局部腐食)
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腐食疲労(局部腐食)
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微生物腐食(局部腐食)
乾食と湿食
腐食は大きくは乾食と湿食に分類されます。
乾食とは、水がない高温状況下でおきる現象で、酸素や高温ガス、その他の周囲の雰囲気(物質)と反応して腐食することです。身近なものにはフライパンの黒錆があります。
湿食とは、水がある状況下でおきる現象で、金属が酸素や水素イオンと電気化学反応することで腐食します。
高温酸化と高温腐食(乾食)
高温酸化と高温腐食は乾食の分類で、水がない高温状況下で起きます。
高温酸化とは、300度を超えるような高温で起きる腐食で、酸化によって腐食し酸化物の被膜に覆われます。フライパンの黒錆が身近なもので、黒錆の被膜は周囲の環境を遮断するので腐食が進行しにくいのですが、高温酸化し続けると被膜が厚くなり剥がれ落ちます。剥がれ落ちた酸化物はスケールと呼ばれます。
高温腐食とは、400度を超えるような高温で起きる腐食で、一般的な環境ではなくプラントや工場、焼却炉などの環境で起きます。高温環境で発生する高温ガスによって金属の酸化/窒化や、燃焼で発生した物質(灰)が金属の保護被膜を侵したり、金属を酸化させます。
全面腐食と局部腐食(湿食)
全面腐食と局部腐食は湿食の分類です。
全面腐食とは、金属が単体の状態でほぼ均一に腐食する現象で、単体金属の結晶や原子に電位差が生じて電位の低い結晶や原子が腐食していきます。
局部腐食とは、金属の一部分が集中して腐食する現象で、金属の電位差によって電位の低い金属(アノードとなった部分)が腐食していきます。
腐食の進行には違いがあり、全面腐食の方が穏やかで局部腐食は進行が早いようです。
異種金属接触腐食(局部腐食)
異種金属接触腐食とは、水溶液中で異種金属を接触させると、電位の低い金属が腐食していく現象です。
詳しくはこちらをご覧ください ⇒ 「異種金属接触腐食とイオン化傾向/金属の腐食」
鉄とステンレス
孔食(局部腐食)
孔食とは、孔の腐食が起きる現象で、局部腐食です。耐食性の高いステンレスやアルミニウムなどの不動態被膜の一部の被膜がなくなったり不安定になることで、その部分に孔の腐食がおきる現象です。
すきま腐食(局部腐食)
すきま腐食とは、同金属、金属と非金属の0.01mm単位のわずかな隙間から0.1mm単位の隙間で起きる局部腐食で、主にステンレスやアルミニウムで発生します。すきまに水や液体が入り込み停滞すると酸素濃度が低くなり、金属の被膜が不安定になったり、外部(すきまの外の水)の酸素濃度よりも、すきまの酸素濃度が低くなるので酸素濃度の差が生じて電池が形成されて腐食が起きます。
粒界腐食(局部腐食)
粒界腐食とは、金属結晶の結晶粒子と結晶粒子の隙間である粒界が腐食する現象です。金属に溶接や熱処理を加えると、化合物が粒界に析出し耐食性が維持できないため腐食しやすくなります。(溶接の場合は、溶接ビートではなく、その周囲に腐食が起きます)
エコロージョン・コロージョン(局部腐食)
エコロージョンとは、機械的に起きる金属の摩耗のことで、コロージョンとは、機械的摩耗と同時に起きる局部腐食のことです。エコロージョン・コロージョンは配管に起きる現象で、配管の曲がりが関わる流速が速い箇所の金属が流体によって保護被膜が削られて腐食が進行します。
腐食疲労(局部腐食)
腐食疲労とは、金属が腐食環境下にあると金属が金属疲労で破壊されやすくなる現象です。金属疲労は応力を繰り返し与えると起きますが、腐食環境では腐食と金属疲労が同時に起きるため破壊されやすくなります。
微生物腐食(局部腐食)
微生物腐食とは、微生物(バクテリア、細菌)が金属やコンクリートに直接的または間接的に影響して腐食する現象です。微生物は土壌環境や水に存在していて、酸素の有無で繁殖する嫌気性細菌と好気性細菌に区別されます。
まとめ
今回は、金属の腐食についてまとめてみました。腐食の分類は数多く一概に原因や対策は言い切れない部分があるので難しい分野です。今後、腐食の事例を追記できればと思います。
参考文献:書籍【錆・腐食・防食の全てが分かる事典】 サイト【イプロス 金属の腐食と防錆(せい)・防食法:金属表面処理の基礎知識2】 【ミスミ 技術情報 腐食・防食】
*腐食の勉強におすすめの本はこちらです
関連記事:【材料/溶接/加工/表面処理】
以上です。