今回は「2ピースローターのジャダーの原因は摩耗とクラックと歪み」についての記事です。
先日サーキット走行中にフロントブレーキからジャダーが発生しました。
その原因は何なのか?
私のS2000のフロントローターを例に紹介しようと思います。
記事の目次
2ピースローターと1ピースローター
今回は2ピースローターについての記事ですが、参考のために1ピースローターについても触れておきます。
参考
*2ピースローターの交換方法についてはこちらの記事をご覧ください
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2ピースローターの交換方法【締付けトルクと組付け精度】
今回は「2ピースローターの交換方法」についての記事です。 2ピースローターは1ピースローターと違い、ベルハ ...
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2ピースローターとは
2ピースローターとは、ベルハウジングとローターが分離していて別部品となっているタイプのローターです。
2ピースローター
2ピースローターの特徴
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高価
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ローターの大きさは制限がないので、大径のローターに有利
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ベルハウジングはアルミ材なのでローター全体の重量は軽量化となる
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ローターは平面に近い形状なので、加工が容易で冷却フィンの形状が自在
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ハブへローターの熱が伝わりにくくなり、ハブベアリングの熱対策となる
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形状が平面で単純であり、ハブ部分と分離されているのでローター全体の熱変形が少ない
このような特徴があります。
1ピースローターとは
1ピースローターとはベルハウジングとローターが一体型のタイプです。
1ピースローター
1ピースローターの特徴
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大径ローターとなると重量が重い
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安価。一般車には1ピースローターがスタンダード
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一体形成なので大径のローターは作られていない
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形状が複雑なので、冷却フィンの難しい加工ができない
このような特徴があります。
ジャダーや摩耗やクラック
私のフロントローターは「Biot フロントオフセットキット S2000 AP1/AP2 330φ」と言う製品で、5年ほど使用しておりサーキット走行は20回程度です。
先日のサーキット走行で、フロントブレーキからジャダーが発生したので原因を調査することにしました。
ジャダーの発生には下記の原因が考えられました。
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ローター表面のクラック
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ローターの歪み/変形
この原因にたいして現状がどのようになっているのか観察してみました。
摩耗
ローターの厚さをミツトヨのデジタルノギスで測定してみました。
測定結果
右フロント(mm) | 左フロント(mm) | |
新品ローター | 25.05 | 25.04 |
使用していたローター | 24.70 | 24.63 |
ローターの摩耗は0.3~0.4mmでした。
クラック
新品と比べると一目瞭然ですが、使用していたローターの表面には小さなクラックが無数にあります。
このようなクラックは最終的にローター割れの原因にもなりかねないので注意が必要ですが、中古ローターの全体を目視確認したところ、クラックは表面だけで外側までは走っていませんでした。
歪み/変形
ローターの歪みや変形を判断するために、今回は定盤の上で6面体加工したブロックにベルハウジング/ローターを乗せて、ダイヤルゲージで測定してみました。
参考
*フライスによる6面体加工についてはこちらの記事をご覧ください
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6面体加工のやり方【フライスの基本は6F加工】
今回は「6面体加工のやり方」についての記事です。 6面体の加工はフライス加工の基礎とされていて、部品製作の ...
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測定結果(新品ローターは交換時に測定しました)
右フロント(mm) | 左フロント(mm) | |
新品ローターの表側 | 0.01 | 0.04 |
新品ローターの裏側 | 0.01 | 0.03 |
中古ローターの表側 | 0.09 | 0.12 |
中古ローターの裏側 | 0.07 | 0.15 |
左右ともに0.1mm前後の振れが確認できました。
新品ローターの振れと比べると、左側に関してはベルハウジングの変形も考えられそうです。
ジャダーの原因
ここまでの測定や観察の結果をもとに、BIOTの説明書に記載されているデータと比べて判断してみます。
BIOTの基準 | 中古ローター | |
摩耗 | -1.5mm | -0.3mm~-0.4mm |
クラック | 記載なし | 外側までは走っていない。表面だけ |
振れ | 0.07mm以下 | 0.07mm~0.15mm |
この結果を踏まえて考えてみますと、ジャダーの原因はローターの歪み/変形が濃厚そうです。
摩耗は限界値に達していないので、ローター研磨で振れ量を修正できれば使用可能ですね。
と言うことで、このローターは研磨して予備として保管しておくことにします。
補足 歪みや変形の原因はサイドブレーキ
ローターが歪み/変形する原因は「熱」によるものですので、走行後はクーリングをおこなって、ローター全体が均一に冷却できるように心がけると良いと思います。
ただ、ここで注意したいことがあります。
それは、、、走行後に車を停車したら「サイドブレーキはかけない方が良い」と言うことです。
皆さん何気なくやっている行為ですし、安全上当たり前のことなのですが、、、サイドブレーキをかけることでリアのローターに歪み/変形が起きることがあります。
それは、高温状態のローターをブレーキパッドで一か所を押さえ続けると「発熱できず熱がこもる」のです。そうなると、ローター全体の温度差が発生し歪みが起きます。
ですから、停車したらサイドブレーキをかけずに、「盤木をタイヤに入れておく」「ギアを入れておく」「サイドを軽めにかける」などの対策をすると良いと思います。
まとめ
今回は2ピースローターのジャダーの原因について調べてみました。
おそらくジャダーの原因はローターの歪みであると思われます。ひとまず新品のローターに交換して、このローターは研磨することにします。
参考
*2ピースローターの研磨についてはこちらの記事をご覧ください
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2ピースローターの研磨は研削盤で高精度研磨
今回は「2ピースローターの研磨は研削盤で高精度研磨」についての記事です。 2ピースローターは1ピースロータ ...
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*私が使用しているBiot フロントオフセットキット S2000 AP1/AP2 330φはこちらで購入できます。
関連記事:【S2000/メンテ/セッティング】
以上です。