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【仕事と思考】

機械装置の試運転とデバックの適任者はだれ?【組立と電気と設計】

2020年6月11日

 

今回は機械装置の試運転/デバック作業について「どうすれば完成度の高い仕事ができるか」考えてみたいと思います。

まずはそれらを語るうえで前提にしておきたいことがありますので、そちらから説明していきます。

 

装置本体

 

それは「機械装置は何となくの状態や不安定さの中にあってもスイッチを押せば稼働するもの」だと言うことです。

ぎこちない動きでも、辛うじてかみ合っている状態でも、センサがチャタっていても、製品(ワーク)を損傷させても、、、動いてしまうのが機械装置です。

つまり、機械装置の完成度を高めるためには「動くからいいや」などと言う感覚では困るのです。

 

そして私には理想的な試運転/デバックのやり方があります。

それは、設計と制御の不安要素を是正し、メカ調整によって調律。加えて自己満足ではなく「作業者目線で仕上げる」です。

 

今回はこの考えを前提として試運転デバック作業について解説しようと思います。

 

機械装置の試運転とデバックの適任者はだれ?

試運転/デバック作業の完成度

機械装置を新規で組立てたり改造した場合に、通常は試運転とデバックをおこないます。

 

この試運転/デバック作業は組立、ソフト(電気)、メカ設計の3者が協力しなければ完成度の高い機械装置が出来上がりません。

しかし、現実には試運転/デバックが「上手くいかない」「上手くいっていない」場合が多くあり、そのようなことを相談されたり、耳にしたり、私が直面したりします。

 

では、その上手くいかない理由な何なのでしょうか?

その答えは、試運転/デバック作業を「組立が主導権を握っていない」ことが原因です。

つまり「ソフトや設計が主導権を握っている」場合は上手くいっていないことがあるのです。

 

*私が「上手くいっている」と「上手くいっていない」を判断する基準は下記の3項目です。

  • メカ精度の高さ
  • チョコ停/バグの少なさ
  • 試運転/デバックにかかった工数

 

ソフトや設計が主導権を握っていると上記項目の評価が悪いことが多いのです。

そして、試運転/デバック作業の過程では「上手くいっているのか?いっていないのか?」の判断が難しく、当事者も気が付いていないので最終的に取り返しのつかない事体を招くことがあります。

 

取り返しのつかない事体とは?

試運転/デバックの完成度が低いとどのようなことが起きるのでしょうか?

 

孤独に悩む人

 

私の経験を抜粋しますと、、、こんなことが発生します。

  • ねじの締め忘れ
  • ダマ停で稼働不能に陥る
  • メカ調整不足でチョコ停が頻発する
  • 可動部にエアー、電線が干渉して損傷し故障
  • センサの検出が不安定で異常停止する(センサの調整不足)
  • 予期せぬ操作によってクラッシュする(インターロックが不十分)
  • 品種違い(段替え)による製品の品質低下(すべての品種の確認と検証をしていない)

 

このようなことがおきますと、客先納入後に信用問題に発展し、会社の運命を左右する事態になりかねないのです。

 

試運転/デバックは組立が主導権をにぎる

前述でも言っていますが、私は試運転/デバック作業は「組立」が主導権を握ってやるべきだと思っています。

 

その理由はコレです。

  • 組立は現場目線

 

ワークショップ

 

それは、自分で組み立てたので機構構造や精度を理解しているため異変に気が付きやすいく、客先での立上を組立が担うことが多いので経験豊富で動くモノの良い状態と悪い状態を直感的に判断でき、使用する側(客先)の使い勝手を考慮できると言うことです。

それ以外にも、試運転をしている状況は、組立作業が完了している状態なのでの組立の負荷が少なく全体に目が行き届くので、試運転デバック作業をまとめる役割を担うことができるでしょう。

そういったことで、組立が主導権を握ることで制御(ソフト)とメカ的構造(設計)を是正したり改善することがスムーズに進むと思うのです。

ただ、組立はソフト制作や設計はできないので、「気づき」や「案」はありますが、そこから先はソフトと設計と協力して進むしかありません。

 

組立と電気と設計を比べてみる

向き不向きを整理してみましょう

ここで一度整理しておきたいと思います。

組立/ソフト/設計の3者の特徴を比べておきましょう。

試運転/デバック作業の主導権を握ってまとめることができる最適な役割の人は誰でしょうか?

 

*私の独断で評価しています。

組立 ソフト(電気) メカ設計
試運転/デバック作業の負荷 少ない 多い 少ない
得意な事 メカ調整 デバック 設計が関わる対応
構造の熟知度
組付け精度の把握
ソフト制作/変更 × ×
制御管轄の動作や安全性の改善案
メカ調整
設計対応 × ×
設計の問題解決案
部品の追加工
精度測定/能力測定
動作中の異変に気が付く
装置の制御方法の把握
作業者(客先)目線

 

それぞれの役割に特徴がありますね。

では組立以外のソフトと設計について考えてみましょう。

 

ソフトが主導権を握る

ソフトの心情としては「機械装置の動きを最優先で確認したい」思惑があります。

 

プログラミングする人

 

機械装置の「動き」は制御によって生まれるわけで至極当然なことでしょう。ですが、その思いが先走りすぎると「動くか、動かないか」の視点でしか捉えることができなくなり、例えば干渉に気が付かなかったり、可動部の「繊細な調整」に意識が向かなかったりします。これは私が見てきたソフト屋さんの8割はこのタイプでした。

参考

繊細な調整とは、制御によってコントロール可能なモーター関係の加減速、メカ的調整によって可能な部品の位置関係やスピコン調整のことです。

 

この他にも、作業環境が悪くてソフトが否応なし作業の中心となって進めなければいけない状況もあります。

 

ソフトが直面する作業環境

  • 試運転/デバックを誰も手伝ってくれない
  • 組立がメカ調整をソフトに押し付ける
  • 設計ミスをソフトで挽回するように強要する

 

これは結構あるあるです。こんな会社さんや作業環境は良くあります。最高に最悪と言わざるを得ません。

こんな状況では、ソフトは自分中心で作業を進めるしかなく、結果「完成度が低い機械装置」が出来上がってしまいます。

つまり私が言いたいことは、「ソフト屋さんにはデバックに専念してもらい、作業の指示やまとめ役は組立がおこなうこと」が必要ってことです。

 

設計が主導権を握る

メカ設計の視点はオールマイティです。メカと制御の両方に理解がなければ、そもそも設計することはできません。

 

図面とノギス

 

では、オールマイティの視点を持っている設計が試運転/デバックの主導権を握るとどうなるでしょうか?

私が見てきた設計の方たちの多くは「自分が設計した気になる特定の部分に注目」し、機械装置の仕上がりについて隅々まで気にかけることがありません。それは、現場経験が少ないがゆえに感性が不足していることも関係しているかもしれません。

 

例えば、「この部分はこの程度でいいんで」などと言った発言良く耳にします。機械を熟知しているために「この部分はこの程度でも大丈夫」などと言う感覚があるのでしょうか、、、。そういった油断が後にトラブルの原因に繋がることもあります。

組立からすると「この部分はこの程度でいい」と言う感覚はあまりなく、新規で組立てる場合は全てを完璧にしたいと思っています。それは、組立段階で「手抜き」をしたとして、試運転した時に設計通りに動くか予測が立たないからです。

 

ですから、設計が主導権を握るとオールマイティな視点の持ち主なのに、全体を評価することは得意ではないのです。

 

試運転/デバックの最適任者

ここまでで組立/ソフト/設計の3者について試運転デバック作業の主導権を握ってまとめるのはどの役割の人が最適なのか考えてきましたが、私の考えは一貫して「組立」が最適だと述べてきました。

しかし、裏を返せば「現場目線」であればどの役割の人であっても良いとも言えるかもしれません。

 

機械の写真

 

現場目線、、、これはどれほど多くの現場を経験し、苦労してきたか。

上手くいかなかった現場の数だけ「現場目線」が鍛えられる。

 

古く遅れた考えなのかもしれませんが、、、今のところの私の答えはこれでしょう。

 

ポイントまとめ

それでは、機械装置の試運転とデバックの適任者について重要なポイントをまとめておきます。

 

ポイント

  • 理想的なやり方は、設計と制御の不安要素を是正し、メカ調整によって調律。加えて自己満足ではなく「作業者目線で仕上げる」ことです
  • 試運転/デバック作業は組立(メカ)が主導権を握っておこなうことがベターです
  • 設計でも電気でも、「現場目線を持った人」であれば、主導権を握ってもOKです

 

以上3つのポイントです。

 

 

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以上です。

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