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【制御/プログラム/PLC】

機械装置のデバックのポイント【試運転のバグ出しは3段階】

2021年7月5日

 

今回は「機械装置のデバックのポイント/試運転のバグだし方法」についての記事です。

新規で機械装置を製作する場合、試運転でデバックと呼ばれるプログラムのバグを修正する作業が必要となります。

このデバックは世界に一つだけの一品の機械装置を製作する場合は「前例のないプログラム」を作ることになるのでバグは当然発生しますし、それは修正しなければならないことです。

ところが、デバックは人のスキルによってプログラムの完成度が大きく違ってくることがあり結構難しい作業です。

そこで今回の記事では、私が今まで数多くの機械装置のデバックを組立工として行ってきた経験をもとに、どのような方法でデバックを行えばよいのか?を紹介しようと思います。

 

機械装置のデバックのポイント

デバックとは

機械装置におけるデバックとは、PLCやロボットのプログラムのバグと呼ばれる不具合や欠陥を修正して正しい状態にすることで、この作業は機械装置の最終段階である試運転において欠かせない作業です。

 

仕事を悩む

 

一口にデバックと言っても、機械装置に「どんなバグが発生している状態なのか?」「バグってどんな状態のこと?」なんて思うかもしれませんが、、、

 

機械装置のバグとはこんな状態のことです。

  • 動かない
  • 間違った順序で動く
  • 異常や警報がでない
  • タッチパネル(TP)の操作や設定ができない

 

おおよそこの4つ事象が起きている状態が、「バグ」が発生している状態と言えます。

そもそも機械装置は、安定した品質の製品を大量に生産するために正しく動き続けなければいけませんが、実際には「人」が機械装置を作る訳なので「バグ」や「メカの不具合」が発生してしまいます。

そこで必要となるのが「デバック」であり、デバックは必ずやるべきことなのです。

 

時々ですが「デバックはソフト屋さん、ロボット屋さんの仕事でしょ?」なんて思われている方がいるようですが、これは大きな間違いです。

バグを修正するのはソフト屋さん、ロボット屋さんの仕事ですが、バグを発見し指摘するのは機械組立工のようにメカに精通した第三者が行うべきなので、もしそのような考えの人がいたら改めて欲しいですね。

 

参考

*試運転とデバックの適任者については、こちらの記事で解説しています。

要チェック
試運転とデバックの適任者
機械装置の試運転とデバックの適任者はだれ?【組立と電気と設計】

続きを見る

 

デバックのポイントと進め方

デバックの作業は通称「バグ出し」と呼ばれますが、単に「バグ出し」と言っても「どうやってやればいいの?」なんて思ってしまうかもしれませんね。

 

データを分析する

 

でも、安心してください。バグ出しはある程度「やり方」が決まっています。

 

バグ出しの心構えと視点

まず初めに「バグ出し」作業を進めるに当たって心構えがあるので確認しておきましょう。

  • 悪意を持って機械装置を扱ってみる
  • イレギュラーな状態を意図的に引き起こす

 

ポイントは「悪意」と「意図的」です。言い方を変えれば「わざと悪いことをする」

普段の生活ではそのような考えはダメですが、機械装置のデバック作業においてはもの凄く重要なことになってきます。

 

タッチパネル

 

そしてこの心構えを前提にして、こんな視点で作業に当たります。

  • バグが存在することを前提にして疑る
  • どのような状態でバグが発生するのか追求し確定させる

 

はっきり言って、生まれたての機械装置には必ずバグは存在します。だから「バグありき」でバグ出しをします。

絶対に「大丈夫」などと安心した感覚でバグ出しを行ってはいけません。バグは無限に存在すると思った方が良いです。

なぜか?と言えば私の過去の経験で、バグ出しを3週間毎日行った機械装置を自信満々に納入したら客先から「1週間に一度ダマ停する」と指摘され、現地でソフト修正したことがあったからです。このようなことは実は何度も経験しています。だから最後の最後まで絶対に安心したり妥協してはいけないのです。

 

バグ出しの前段階にやっておくこと

バグ出しは機械装置に電源投入すれば「いきなり始められる」訳ではなく、実はバグ出しを始める前にやっておくことがあります。

 

バグ出しの前段階にやっておくこと

  • 手動動作のインターロック

 

手動動作とは、作業者がTP(タッチパネル)を操作して機械装置の可動部を動かすことですが、この時にクラッシュしたり問題が起きないようにインターロックを設定しておく必要があります。

なぜか?と言いますと、いくつか理由があります。

 

理由はコレ

  • 手動動作でのインターロック(動きの制限)が自動運転や原点復帰のインターロックの基本となるため
  • 試運転中にトラブルが起きたら手動動作が必要になるため、手動動作でクラッシュしたり問題が起きないようにしておく

 

もう少し付け加えると、手動のインターロックを設定すると言うことは「手動で動作確認をする」ことですから、それによってメカ調整を同時に行うことができるしメカ的問題点の抽出も可能です。

このような下準備を行っておけば、無駄なことで足止めされないので試運転(デバック)がスムーズに進むのです。

 

メモ インターロックとは?

*インターロックとは、クラッシュしたり想定外の動きがおきたり人命にかかわる事態が発生しないようにする「安全回路」や「安全機構」のことです。現場では「インターロックが取れていない」「インターロックの確認OK」なんて使います。

 

バグ出しの進め方

手動動作のインターロックの確認ができれば、いよいよバグ出しをおこないデバック作業を始めることができます。

 

工場の機械

 

バグ出しはこの状態でおこないます。

  • バグ出しは試運転(自動運転)の状態でおこなう

 

そして、試運転中(自動運転)にこんなことをします。

  • 稼働状態を突然止める
  • 間違った使い方をする
  • 部品やセンサが壊れること想定して意図的に「動かない」「検出しない」ようにする

 

これは「バグ出しの心構えと視点」で言ったことを意識して、納得できるまで根気よくやり続けることが大切になります。*具体的な方法は記事の後半で紹介します。

 

バグ出しの方法

バグ出しの方法を掘り下げて説明すると大きく分けて「初期段階」「中期段階」「最終段階」の3つ段階に分けることができます。

 

初期段階

バグ出し初期段階にすることはコレです。

  • ただ自動運転するだけ
  • ワークは1つしか入れない
  • 工程のブロックごとに運転させる

 

チェーン

 

初期段階ではプログラムがまだまだ未完成なので、ただ自動運転をしているだけでダマ停止したり間違った動作をしたり、そもそも運転できない事がよくあります。

そのような状態では、一度にたくさんのワークをいれたり、機内のすべての工程を起動させることはとても危険です。

「どこで、なにか起きているか?」「いったい何が起こったのか?」これが把握できないようではデバックのしようがないので「ワークは1つしか入れない」ことでしっかりと目視確認ができる状態とします。

また、機械装置の規模が大きくなると機内の工程も多くなりますが、プログラムが未完成の状態で全ての工程を稼働状態にすることは、ワークを1つしか入れなくても危険を伴います。

なので「稼働させるところ」と「稼働させない」を工程のブロックごとにプログラムを仮設定して試運転することをお勧めします。

このようなやり方である程度安心して運転ができるような状態になったら、中期段階のデバックに移行するか、引き続きの流れでワークの数量を徐々に増やし稼働させる工程を増やしてデバックを進めることになります。どちらが良いかは機械装置の特性によって判断するか、ソフト屋さんロボット屋さんと相談して決めると良いでしょう。

 

中期段階

バグ出し中期段階にすることはコレです。

  • 自動運転中に「手動モードに切り替える」「非常停止を押す」などをおこない稼働状態を突然止める

 

この作業のポイントはコレです。

  • 突然止めるタイミングは「ワークが次工程に移動する瞬間」や「データの移行が行われる瞬間」です

 

綺麗な工具

 

デバック初期段階によってある程度自動運転ができるようになったら、中期段階では運転中の状態を突然止めて「原点復帰」と「運転再開」ができるか?を確認していきます。

この作業はやみくもに突然止めれば良いわけではなく、「何かの切り替わり」がある部分がポイントとなります。その理由は、おおくのプログラムは1工程ごとのプログラムを組合わせて「動き」をプログラミングするので、1工程と1工程の移り変わりはプログラムの境目となり信号の認識やデータの移行がうまくできないことが多いのです。

また、原点復帰は手動動作のインターロックの条件をもとに事前にある程度作りこまれている状態ですが、実際には「動いたらクラッシュしてしまった」なんてことが中期段階では結構な頻度で起こりえますので、ワークが関係する可動部には十分に注意しましょう

 

最終段階

バグ出し最終段階にすることはコレです。

  • ワークの向きを間違えて投入したり、TPの設定を間違える ⇒ 本来とは違う使い方をする
  • センサを遮ったり、センサが反応しないようにしたり、シリンダが動かないようにする ⇒ 破損や誤作動を想定

 

6軸ロボット

 

機械装置のプログラムはデバックが進み完成度が高くなるにつれてバグが発生しなくなってきます。

そこで最終段階として「悪意を持って機械装置を扱ってみる」「イレギュラーな状態を意図的に引き起こす」と言うことが必要になってきます。

普通は「人は悪いことはしない」と言った性善説を前提にして物事を考えますが、私が今まで経験してきた機械装置のトラブル事例ではそのような甘い考えは通用しないと思っています。

作業者に悪気はないのかもしれませんが、「ありえない使い方」「ありえない故障」が発生してしまうのが現場なのです。だから、デバックの最終段階では機械装置にわざと悪いことをして、徹底的にデバックをします。

そして、長期間機械装置を動かし続ければ当然センサやシリンダなどの電子機器や可動部品が故障することが予想されますから、そういったことが発生した場合は「異常の発砲&停止をする」や「誤作動したら停止または安全方向に働くようにする」といったこともデバックでしっかり煮詰めておく必要があります。

 

機械装置のデバックのポイントまとめ

それでは、機械装置のデバックについて重要なポイントをまとめておきます。

 

ポイント

  • デバックとは、PLCやロボットのプログラムのバグと呼ばれる不具合や欠陥を修正して正しい状態にすること
  • バグ出し初期段階の方法は「ただ自動運転するだけ」「ワークは1つしか入れない」「工程のブロックごとに運転させる」の3つ
  • バグ出し中期段階の方法は、自動運転中に「手動モードに切り替える」「非常停止を押す」などをおこない稼働状態を突然止めてデバックすること
  • バグ出し最終段階の方法は、「本来とは違う使い方をする」「破損が誤作動を想定」してデバックを行うこと

 

以上4つのポイントです。参考にしてください。

 

 

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以上です。

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