今回は「アンカーボルトの種類/ケミカルアンカーとオールアンカーとメスアンカーの使分けと特徴」についての記事です。
アンカーボルトは機械装置を床に固定するために使用される定番の固定ボルトで、アンカーボルトには種類があり状況に応じた使い分けと施工方法に注意が必要です。
そこで今回の記事では、私の実体験を元に使分けや施工方法などを解説しようと思います。
記事の目次
アンカーボルトの種類
機械装置の分野でアンカーボルトと言えば、コンクリートに打ち込んで固定するボルトの事です。主に機械装置を床(フロア)に固定する為に使用されます。
参考
アンカーボルトの下穴についてはこちらの記事をご覧ください
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アンカーボルトの下穴一覧表【ケミカルとオールとメス】
続きを見る
私が使用しているアンカーボルトは下記の3種類で、機械装置の分野では一般的だと思います。
一般的なアンカーボルト
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オールアンカー(Cタイプ)
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メスアンカー
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ケミカルアンカー
補足 呼び名
アンカーボルトはメーカーによって呼び名に違いがありますので下記を参考にしてください。
私の呼び名 | 別名 |
オールアンカー | 芯棒打ち込み式アンカー |
メスアンカー | 本体打ち込み式アンカー |
ケミカルアンカー | 接着アンカー |
ケミカルアンカーとオールアンカーとメスアンカーの使分けと特徴
前述で紹介した3種類のアンカーボルトの使分けや特徴について下記の一覧をご覧ください。
強度 | 施工難易度 | 必要なモノ | 入手 | 価格 | |
オールアンカー | 普通 | 簡単 | アンカーのみ | ホームセンターに売っている | 安価 |
メスアンカー | 普通 | 難しい | アンカーと固定ボルト | ホームセンターに売っていないかもしれない | 安価 |
ケミカルアンカー | 強い | 難しい | 寸切りボルトと溶剤 | 専門業者から購入 | 高価 |
簡単にまとめますとこのような違いがあります。
それでは、次項から3種類のアンカーボルトについて詳しく解説することにします。
オールアンカー(芯棒打ち込み式アンカー)
オールアンカーはピンをハンマーで打ち込んで施工するタイプで「アンカーボルト」=「オールアンカー」と言われるほどスタンダードなタイプです。
実際にアンカー固定されている機械装置を見渡せば、大半はオールアンカーで固定されていると思います。
*下記に私が感じた特徴を示します。
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施工がスピーディーで簡単
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固定強度が必要な場合には使用ない方が良い
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コンクリートに開ける穴が多少深すぎても施工可能
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施工する穴は神経質に清掃する必要は無い(取説には穴を清掃するように記載あります)
この中でもオールアンカーの使い勝手の良さを象徴しているのは「穴が多少深すぎても施工可能」でしょう。
その理由は、穴の深さが深すぎてもアンカーボルトのナットの座面が、オールアンカー本体をそれ以上穴に入ってしまう事を防ぐ、と言う事が上げられます。
つまり、オールアンカーは穴に底突きする訳では無く、穴の途中で固定されると言う事です。ですから穴が多少深すぎても何ら問題はありません。
引用抜粋:サンコーインダストリー株式会社 アンカー総合カタログ
メスアンカー(本体打ち込み式アンカー)
メスアンカーはアンカー本体を穴に打ち込むタイプで、表面に飛び出ないアンカーボルトです。通常はオールアンカーを使用するが、表面にアンカーを飛び出させたくない場合に使用します。例えば固定する機械装置を定期的に移動させる場合などです。
*下記に私が感じた特徴を示します。
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施工は深さに注意すれば簡単である
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固定強度が必要な場合には使用ない方が良い
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コンクリートに開ける穴の深さは非常に重要で、深すぎたり浅すぎたりしてはいけない
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施工する穴は神経質に清掃する必要は無い(取説には穴を清掃するように記載あります)
この中でも特に注意したい事は「穴の深さ」です。
メスアンカーはオールアンカーと違い雌ネジタイプで、穴に底突きするところまで入ってしまいます。
つまりオールアンカーのようにナットの座面で穴に入りすぎてしまう事を防いではくれません。
*穴が浅い場合と深い場合に起きる事を比べてみました。
穴が浅い場合・・・アンカーボルトが表面から飛び出てしまうので、メスアンカーの意味がありません。表面と「ツラ」か「数ミリ沈んでいる」状態がベストです。
穴が深い場合・・・アンカーボルトが穴の中に入り込んでしまいます。深ければ深いほど本体は穴の中に入ります。そうなるとメスアンカーに固定するボルトも無駄に長くなり、ねじ山にかかっていない部分が長くなるので負荷にも弱くなります。
出典:サンコーインダストリー株式会社 アンカー総合カタログ
ケミカルアンカー
ケミカルアンカーは機械装置を確実に固定したい場合に使用します。例えば重量級で振動や衝撃のある機械装置や、ロボットの架台などのアンカーに高負荷やゆるみが起きると想定される場合です。
このアンカーはエポキシ樹脂のカプセルをコンクリートの穴に入れ、寸切りボルトをカプセルを破壊するように上から打ち込んで固めるタイプです。
*下記に私が感じた特徴を示します。
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コンクリートに開ける穴が多少深すぎても施工可能
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施工する穴は確実に清掃する。掃除機やエアーブローが必ず必要
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施工に時間がかかる。溶剤が固まるまで数時間~一晩放置する
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打ち込んだ寸切りボルトが長すぎる場合にはグラインダーで切断する
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固定は最強だが、穴の清掃を怠ると寸切りボルトが空回りして失敗する
この中で最も重要なことは2点あります。
まず1点目は「施工する穴は確実に清掃する。掃除機やエアーブローが必ず必要」と言う事です。
ケミカルアンカーはエポキシ樹脂と硬化剤が穴の中で寸切りボルトとコンクリートを接着するのですが、清掃不足だとコンクリート屑やゴミなどがだと寸切りボルトとコンクリートの間に入り込み、エポキシ樹脂が硬化しても接着不良となります。
そうなると、いくらナットを締めこんでも寸切りボルトが供回りしてしまい、締付ける事は出来ません。
そして2点目は「施工に時間がかかる。溶剤が固まるまで数時間~一晩放置する」です。
エポキシ樹脂は寸切りボルトでカプセルを破壊後、硬化剤と混ざり合って硬化しますが、それには数時間かかります。詳しくは使用するケミカルアンカーの取説で確認しますが、大体の場合は一晩放置して翌朝に寸切りボルトのナットを締付けて完了となります。
*補足ですがケミカルアンカーの種類について下記の資料を引用します。
ケミカルアンカーのカプセルを寸切りボルトで破壊後する作業はケミカルアンカーの種類によって方法が違いますので注意が必要です。
その違いとは、「カプセルを破壊後、寸切りボルトを回転させて溶剤を撹拌(混ぜる)する」方法と「カプセルを破壊後、寸切りボルトを回転させない。打ち込んで終わり」の2つの種類/方法があります。
出典:サンコーインダストリー株式会社 アンカー総合カタログ (打ち込んで撹拌するタイプ)
出典:サンコーインダストリー株式会社 アンカー総合カタログ (打ち込んで撹拌しないタイプ)
アンカーボルトの使分けと特徴のポイントまとめ
それでは、アンカーボルトの使い分けと特徴について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- アンカー固定のスタンダードはオールアンカー。施工が簡単で入手しやすい
- 表面に飛び出したくないときはメスアンカーを使用する。ドリルの深さが重要
- 確実な固定をしたいときはケミカルアンカーを使用する。穴の清掃を怠らないように注意する
以上3つのポイントが大切です。参考にしてください。
*アンカーボルトの購入はこちらから
*アンカーの穴あけにはハンマードリルが必要です。
*アンカードリルの購入はこちらから
参考
関連記事:【作業/工事/ユーティリティ】
以上です。