世の中に機械/装置を製造しているメーカーは無数にあります。そしてそこに携わっている職種も多数で業務内容もスタイルも様々です。
私はこの業界に従事して15年ほどになりますが今までの私の経験から、偏った考えになると思いますが「転職や独立に優位な職種」について考えてみたいと思います。
まずはどのような職種があるか?ですが大きく分けて下記の4種だと思います。
職種
- 設計
- 加工
- 組立
- 電気
今回はこの中で私に身近な「設計」「組立」「電気」の3種の職種を比べてみます。
記事の目次
転職や独立に優位な職種
私が思う優位な職種は「設計」と「電気」です。この場合の設計とは「機械設計」の事で、電気とは「ソフト屋」または「制御設計」のことを指します。
なぜそう思うのか?、、、その理由は?
- 単価が高い
- 需要が多い
- 在宅でも作業が出来るので時間の制約がなく自由度がある
- 肉体の負担が少ない
- 独立している人が多い
単価 | 需要 | 在宅作業 | 肉体労働 | 独立の多さ | |
機械設計 | 高い | 多い | 可 | 少ない | 多い |
組立 | 低い | 少ない | ほぼ不可 | 多い | 少ない |
電気(ソフト屋) | 高い | 多い | 可 | 少ない | 多い |
電気(ハード屋) | 低い | 少ない | ほぼ不可 | 多い | 多い |
- 統計ではなく私の経験によるデータです。
- 電気ソフトのスキルはハード設計もできる事を前提にしています。
- 電気ハードとは配線工事専門の方を指します。
それではこの一覧に基づきもう少し掘り下げてみましょう。
単価について
単価が高いのは機械設計と電気ソフトです。それはやはり「特別感」があるからでしょう。設計と電気ソフトは仕様書はあるにせよ白紙からスタートし機械装置を生み出す側となりますが、組立や電気ハードは図面が無ければ作業出来ないし裏を返せば図面があればだれでもできると少し極端ですがそう言えると思います。
この差が単価の差となるのでしょう。
需要について
このご時世人手不足はどの分野でも深刻なのですが、その中でもやはり機械設計と電気ソフトの需要はかなり高いと思います。図面があれば作業が出来る組立や電気ハードは物件毎に作業者が変わっても大きな影響はないかもしれませんが、設計や電気ソフトは会社のスタイルと仕様に合わせて仕事を進めるので人材を固定したい思惑があります。
そうなると人の流動はなくなり「人材の争奪戦」が起きます。特別な存在なのか?誰でもできる作業なのか?そう言ったところで需要に差が出ているように感じます。
在宅作業
在宅で作業できる職種と言えば機械設計でしょう。PCとCADがあればどこでも図面を書くことが出来ます。電気ソフトは最終的には現場作業が付きまといますがソフト制作や電気設計はPCがあれば在宅で可能です。在宅で仕事が出来ると言うことは時間の自由度が高く、ライフスタイルの選択肢は広がります。現実的ではありませんが24時間働くこともできますね。
その逆に組立と電気ハードは在宅作業はほぼ不可です。機械装置が無ければ仕事が出来ませんので自宅でその作業は難しいでしょう。そうなると独立したとしても出張や遠出が多くなる可能性があり時間の自由度は少なくなると思われます。
肉体労働
機械設計と電気ソフトはPCを使った作業ですから肉体の負担は少ないのですが、椅子に座り続けて腰痛になったり現場に行ったら全身筋肉痛なんて事もあります。ですが現場メインの作業に比べたら年齢を重ねても続けられる職種である事は間違いないです。
組立と電気ハードは肉体労働がメインの作業となります。体を動かして作業する事がメインですから作業の内容によっては相当辛い時もあり熱中症で倒れたり腰を痛めてしまう人もいます。私も椎間板ヘルニアになってしまった一人です。これが若いうちなら良いのでしょうが、例えば65歳以上になってもその肉体労働が続けられるのか?と不安にもなる面もあります。
独立の多さ(個人事業主)
断トツで独立が多い職種は電気ハードです。電気ハードを生業としている個人事業主はものすごく多いと感じています。それには手軽さがこの4種の職種の中で一番高いのでしょう。図面があれば作業が出来るし道工具の初期投資も少なく、クレームや手直しで作業が長期化する事もあまりないので手離れの良い面もあります。おおよそ独立までの経験は10年以下と比較的少ないです。ただ一人で工事を請け負う事は難しい場合が多く、個人事業主間のネットワークで協力し合うか元請けの下に入り込むなどしなければなりません。
次に多いのが機械設計と電気ソフトです。独立までの実務経験は10年以上の方が多く技術/知識/経験とあらゆる面で成熟していないと厳しいと思われます。白紙から生み出す側なので後に問題が起きたり後戻りが起きたりと手離れが悪いのですが、こういった場合にさらに成長できる考え方でいないとメンタルの負担が大きく潰れてしまうかもしれません。また一人で完結する業務内容が多いので孤独で責任も重いと思います。設備投資としてはPC以外にCADやPLCのソフトを購入しないといけませんが、特定の顧客と取引する場合にはソフトの貸し出し(客先のライセンス)で仕事をしている方もいます。
そして独立している人が少ないのが組立です。私は数名しか知りません。独立までの実務経験は10年以下です。組立で独立する場合は、ただ部品の取付や交換作業をするのではなく「それ以上のなにか」が必要です。例えば精度出しの技術や電気ハードの知識、部品の加工、またはロボットティーチングなどオールマイティなスキルがあると強みになります。また機械装置の組立後の試運転まで作業を請負う場合には長期化する傾向があるので次の仕事の予定が立てづらくなり、1社の客先に入り込む傾向が強いです。道工具はある程度揃えておかないと仕事になりませんがおおよそ15万ほどで満足する道工具が揃えられると思います。
優位性まとめ
いかがでしょうか?職種により特徴に違いがありますのでこのような結果となっています。どの職種でも生涯の仕事としてやっていけますが、自分が何をやりたいのか?どうしたいのか?稼ぎたいのか?時間の自由も必要なのか?いろいろな要因を当てはめて検討するのも良いと思います。
もし私がこの業界でやり直せるのなら、迷いなく「機械設計」か「電気ソフト」を目指すと思います。将来の独立も視野に入れればなおさらの選択です。
それでは次に年収や単価について事例を踏まえて話をします。
独立した個人事業主の年収
どの職種も「時間単価」が基本で「労働時間=収入」となります。ただ請負って仕事をする場合には「一物件いくら」と言う事が来ますのでリスクはありますが上手くいけば利益も大きいと思います。
どのようなスタイルか良いのか?は人それぞれですが、私の周囲の個人事業主の方は職種問わず「時間」で請求しています。話を聞くとやはり請負ではリスクが大きく、新規の機械装置の場合には不具合や修正、変更が多発して長期化する可能性が高く「先が読めない」との理由から請負いスタイルは倦厭されがちです。
年収の実例
下記に機械設計と電気設計/ソフトと電気ハードで独立した場合の年収実例を記載します。*2019年実績
年齢 | 独立までの実務経験 | 独立後の年数 | 年収 | |
機械設計 | 50代 | 28年 | 5年 | 900~1200 |
電気設計/ソフト | 50代 | 18年 | 4年 | 800~900 |
電気ハード | 50代 | 20年 | 5年 | 1000 |
- このデータは知人の例です。独立した場合の仕事はきちんと確保できる前提で独立をしています。
- 電気ハードは数名のアルバイトや個人の方を遣っての場合です。
独立された方の多くは職種や年齢問わず会社員の時より年収アップしています。全ての方がそうとも限りませんが、技量と人間性、コネクションなど様々な要因が揃わないと仕事に結びつかないと思います。
また会社員と違い個人事業主となると健康保険、年金、労働保険などの違いや責任の重さなど、兎に角自分にのしかかる負担は大きくなります。実務以外の業務であったりメンタル負荷など誰も助けてはくれません。ですから独立を目指すならそれなりの覚悟と準備は必要です。
単価の目安
私の取引先や周囲の相場からおおよその単価(個人事業相手の場合)を記載します。*2019年実績
時間単価 | |
設計/電気ソフト | 3000~4000円 |
組立/電気ハード | 2500~3000円 |
設計と電気ソフトは在宅作業ができますので仕事さえあれば働きたいだけ働けます。つまり収入はコントロール可能で高収入は自分次第となりそうです。ただし客先からは「在宅だから夜でも休日でも出来るでしょ」みたいなスタンスで考えられる場合もあり、在宅なので時間の自由度がありそうですが結局仕事中心の生活となる辛い面が有ります。ですが「仕事が好きで熱中するタイプ」や「稼ぎたい」などの割り切れる目標があれば良いと思います。
組立と電気ハードは現場作業が基本なので現場の作業時間は客先に合わせないといけないし、もっと働きたくても在宅では挽回はできません。しかも近年の労働時間(時間外労働)の社会問題があるように客先で一日に働ける時間や休日出勤は減少傾向です。いろいろと制約があるので収入には限界がありそうです。
まとめ
今回は転職や独立に優位な職種と年収について私の主観でまとめてみました。これを言っては元もこうもないですが、私が思うのはどのような職種も「やってみないと分からない」と言う事です。入社した会社にも大きく左右されるし景気も影響します。ですからその時その時の最善を尽くしてチャンスを手に入れられる可能性を高める努力をしなければいけません。その一つの指標として今回の記事を参考にして頂ければと思います。
参考
関連記事:【社会の仕組み/本紹介/雑記】
以上です。