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スラストベアリングは、一般的な深溝玉軸受と違い軸方向の力を負荷するベアリングです。例えば、ボールねじの軸受けや自転車/バイクのフロントフォークのステムに使用されています。
一般的にはあまり馴染のないベアリングなので、組間違いによるトラブルが起きてしまうこともあるようです。
そこで今回の記事では、スラストベアリングの組付け注意点について解説しておこうと思います。
スラストベアリングの組付け注意点
スラストベアリングとは
スラストベアリング(スラスト玉軸受)とは、アキシアル荷重(軸方向の力)を負荷できる軸受です。
スラストベアリング

組付け注意点
スラストベアリング(スラスト玉軸受)は一般的なボールベアリング(深溝玉軸受)と違い、特有の組付け注意点があります。
注意点は以下の3つです
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組付け方向
軸軌道盤は軸とはめ合い固定、ハウジング軌道盤はハウジング(ベアリングホルダー)とはめ合い固定します
- グリース封入
組付け直前にリチウムグリースを封入(塗布)します - 予圧
組付け時にスラストベアリングへ適切な予圧を与えます
この中でも特に注意したいのは「組付け方向」です。
組付け間違いをすると、軸とベアリング(軌道盤)がカジってしまい、回転不能(過負荷)となります。
それではそれぞれの注意点を解説します。
組付け方向
スラストベアリングには組付け方向があるので注意が必要です。
組付け方向とは、スラストベアリングの軸軌道盤(内輪)とハウジング軌道盤(外輪)を区別して組付けなければならない、という点です。
スラストベアリング
見た目では分からないので要注意です

軸軌道盤(内輪)とハウジング軌道盤(外輪)の区別は、見た目では判断できないので思い込みで間違えないようにしましょう。
簡単で確実に区別する方法はコレ
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2つの軌道盤を重ねたときに内輪が小さい方が軸軌道盤
これは、測定しなくても手で触ればわります。
*外輪の大きさは軸軌道盤とハウジング軌道盤に違はなく、同じ大きさです。
スラストベアリング

区別ができたら、次に組付ける部品の相性を判断します。スラストベアリングの軌道盤に種類があると言うことは、ベアリングに取付ける部品に相性があると言うことです。
下記のイメージ図をご覧ください。
イメージ図
深溝玉軸受けとスラストベアリングを組合わせたハウジング(ベアリングホルダー)のユニット

取付けの状態を説明しますと、、、
軸軌道盤は、内輪が軸とはめ合い状態で、外輪はハウジング(ベアリングホルダー)にはめ合っていない(未固定)状態です。
逆にハウジング軌道盤は、内輪と軸がはめ合っておらず(未固定)、外輪はハウジングにはめ合い状態です。
| 軸軌道盤 | ハウジング軌道盤 | |
| 軸 | はめ合い固定 | 未固定 |
| ハウジング | 未固定 | はめ合い固定 |
この組付け方向を厳守して取り扱うようにしてください。
グリース塗布
スラストベアリングは分割式で、一体型のベアリングではないので、潤滑のグリースが封入されてないので要注意です。
組付ける前におこなうこと
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グリースの塗布を組付ける直前におこないます
*グリースは特別な指定がない限り「リチウムグリース」を使用すればOKです。
スラストベアリング
分解状態でグリースを詰め込みます。

ベアリングを組合わせて内輪と外輪のすき間にグリースを詰めて完成です。

予圧
スラストベアリングにグリスを塗布し、方向を確認し、ハウジングに組付けたら、固定して完了です。
固定するときの注意点
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スラストベアリングは予圧を与えて組付ける
予圧の目的については下記の引用をご覧ください。
引用抜粋:koyo 予圧
多くのベアリングは、運転時にわずかな「すきま」を与えて使います。しかし、用途によっては、あらかじめアキシアル荷重を与えて、ベアリングの組付け時にマイナスのすきまにして使う場合があります。このような使い方を予圧といいます。
11-4-2 スラスト玉軸受に加える予圧量
スラスト玉軸受を高速で回転させると、遠心力とジャイロモーメントによって玉と軌道面との間で滑りが生じ、軌道面にスミアリングなどの損傷を起こすことがある。
この滑りを防ぐためには、すきまなしで取付け、次式で求められる必要最小アキシアル荷重より大きいアキシアル荷重(予圧)をかける必要がある。
下記のイメージ図を例とすると、ナットを締付けることでアキシアル荷重(軸方向の荷重)が発生し予圧を与えることができます。
予圧イメージ
ナット締付けるとベアリングに予圧が発生する

スラストベアリングに与える予圧はどの程度か?
以前、組立てたスラストベアリングはナットを締付けて予圧を与える構造だったのですが、設計に計算してもらった締付けトルクの値が意外と小さく、また構造上測定できなかったので締付けトルクの測定を断念したことがありました。
その時は測定ができなかったので、ナットを締付けてすき間ゼロ(トン当て)から45度締めとして組立てました。
ただ注意点として、上記のイメージ図の構造ですと、ナットを締めすぎると上側の深溝玉軸受けの内輪(インナーレース)に許容以上の負荷がかかり、破損したり回転抵抗が著しく増加するので、その点も考慮して予圧をあたえる必要があります。
引用抜粋:NSK 軸受の予圧
組付け間違いによるトラブル事例
ここでは、実際に起きた組付け間違いによるトラブル事例を紹介します。
トラブル状況
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スラストベアリング交換後、試運転をしたらボールねじのサーボモーターが過負荷で停止した。
調査
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スラストベアリングを分解したところ、軸軌道盤が軸とハウジングにかじっていてボールねじが回転不能になっていた。
原因
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軸軌道盤とハウジング軌道盤を組み間違えていた。
トラブル事例

上記のイメージ図のように間違った組付けをおこなうと、かじりがおきて回転不能になります。注意しましょう。
ポイントまとめ
それでは、スラストベアリングの組付けについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- スラストベアリングとは、アキシアル荷重(軸方向の力)を負荷できる軸受
- 軸軌道盤(内輪)とハウジング軌道盤(外輪)の違いによって、組付ける部品を区別すること
- 組付け直前にリチウムグリースを塗布すること
- 組付け時にスラストベアリングに予圧を与えること
以上4つのポイントです。
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関連記事:【回転運動の要素】
以上です。
