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【仕事と思考】

働き方改革の弊害で業務命令に従わなくなる【労働契約と権利】

2022年7月26日

 

今回は「働き方改革の弊害で業務命令に従わなくなる」についての記事です。

最近私の身の回りで、気になることが増えてきました。それは、仕事を断ったり、選んだりする人がいるってことです。つまり「業務命令」に従わないのです。

その人に言わせると「休日出勤も残業もしたくない」「キツイ仕事やリスクがある仕事はやりたくない」、そして、「稼ぎたい欲求はない」ので、そこそこの生活が出来れば十分ってことなのです。

私にもその気持ちは十分わかるし、後十年で引退して自由に好きなように生きたいと思っているくらいです。

ですが、本当にその働き方は「あり」なのでしょうか?

そこで今回の記事では、会社と従業員の関係と業務命令の効力についてまとめてみようと思います。

 

働き方改革の弊害で業務命令に従わなくなる

自分の都合が通りやすくなると勘違いする

会社のために早起きするのが辛い、、、残業はせずに早く帰りたい、、、汚くて辛い仕事はやりたくないので「あの現場」は嫌だ、、、

こんなこと、一度でも思ったことありませんか?

自分の思うがままに働きたい、、、そう思っても実際には自分に都合のいい仕事なんて中々ないですし、辛いことは沢山あるのが当たり前で、しかも働いてお金を稼がなきゃ生きていけないので、言葉にできない程のストレスを抱えて働いている人は沢山いることでしょう。

 

1人だけみんなと違う行動

 

会社の命令には絶対に従わなければならない、、、そんな結果、行き過ぎた時間外労働やパワハラが原因で「自殺」してしまう事件が社会問題となり、労働環境の改善のため法改正が進んできました。

 

労働環境の改善をざっくりまとめるとこんな感じです。

  • 育児・介護休業法の改正によって休暇の取得が拡大
  • 働き方改革によって時間外労働の上限規制と有給休暇の年5日取得の義務化

 

このような法令以外にも、企業独自の「子育てに関わる福利厚生」「パワハラの撲滅」「積極的なリモートワーク」などの取り組みもかなり進んでいます。

このように、多くの会社さんは法令を守り従業員に配慮した労働環境に相当力を入れています。

私も昔は最大、月に180時間残業していたし、少ないときでも月に60時間以上は残業していましたが、今では繁忙期に一時的に80時間、その他の月は20時間以下です。フレックスタイム制を活用して残業0時間の月すらあります。

 

海外の働き方事情

10年以上前の話しですが、、、、私はフランスに出張することが多かったのですが、当時のフランスでは「お昼の時間は飲食以外のお店は休み」「日曜日は全てのお店が休み」「夏休みは1か月しっかりとる」「金曜日は一週間働きすぎたって理由で午前中に帰る」ってことにかなりの衝撃を受けたのを覚えています。なので、日曜日に客先の会社に行って仕事してたら、フランス人に「日本人が日曜日に働いているぞ」って監督署に通報されて大騒ぎになったことがありました。あれから10年以上たって、やっと日本も追いついてきた感じですね。

 

さて近年の労働環境の改善によって、昔に比べて自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能になってきています。つまり、会社に対して「自分の都合が通りやすくなる」ってことです。

これは普通に考えたら「いいこと」ですよね。ところが、これには弊害があって予想外の主張をする人が出てくる場合があります。

 

予想外の主張をする人

  • 働き手の権利を拡大解釈して何でもかんでも自分都合の主張をする

 

これは「かなりの少数」なのですが、一定数存在してしまうと思った方が良いようです。現に私の職場では、働き方改革が浸透してきた最近になって徐々に見受けられるようになりました。割合で言えば50人中1人くらいの割合です。

 

具体的にどのような主張をするのか?をまとめてみると、、、

  • 仕事を選ぶ、拒否する
  • 残業や休日出勤は絶対にしない

 

これってどう思われますか?

確かに、自分のやりたいように、好きなように、働くことが出来れば最高ですよね。でも何か忘れていないでしょうか?

それは、私たちは会社に雇われていて「労働契約」を結んでいるってことです。つまり、自分の都合が通りやすくなって「勘違い」しているんです。

 

労働契約によって業務命令は断れない

何気なく就職して、特に疑問を感じずに会社勤めしている人は多いのかもしれませんね。

私もその一人で、社会人としてのルールや義務みたいなものは先輩方のふるまいや発言からなんとなく空気で覚えました。

 

契約成立

 

ですが、冷静に考えると会社に勤めているってことは、従業員は会社と労働契約を結んでいることになります。

といっても、「いやいや、入社したときに労働契約なんて結んだつもりないし、そんな話しなかったよ」って言いたくなりますよね。

私も労働契約を結んだつもりはなかったし、そんな意識なかったのですが、実は会社に勤めて「労働して賃金を受け取る」行為をしていると、自動的に労働契約を結んでいることになるんです。

 

引用:平成十九年法律第百二十八号 労働契約法

(前略)

第二章 労働契約の成立及び変更
(労働契約の成立)
第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
第七条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

 

契約を結ぶってことは、お互いに契約に基づいて「義務」を果たさないといけなくなります。超簡単に言ってしまえば、従業員は「会社の命令=業務命令」に従って働く、会社は労働の対価として従業員に「賃金」を支払う、ってことです。

掘り下げると、業務とはその会社が継続して行う仕事のことなので、業務をおこなわないと会社は成り立ちませんし破綻してしまいます。なので、従業員は労働契約している以上は業務命令には従わなければなりません。やりたくないと言っても、その会社にとっては必要な仕事なので断ることができませんし、もし会社を訴えても勝ち目はありません。つまり、自分がやりたくない仕事をやっている会社に就職した自分が悪いってことです。

勿論これも会社が法令を守っていることが前提です。例えば「法定労働時間」を超えた時間外労働(残業)や休日出勤をするためには会社と従業員は「36協定」を結ぶ必要があるのですが、36協定を結んでいなければ法定労働時間を超えた残業は断ることが出来るし違法にもなります。

 

引用:厚生労働省  36(サブロク)協定とは

労働基準法では、労働時間は原則、1日8時間・1週40時間以内とされています。これを「法定労働時間」と言います。

「法定労働時間」を超えて、従業員に時間外労働(残業)をさせる場合には、
・労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)の締結、
・労働基準監督署への届出
が必要です。

*因みに、この36協定は労働組合と結ぶ、または労働組合がない場合は社員の代表者と結ぶことで締結されるので、「え?36協定ってなに?自分は結んだ記憶はない」って思われる人も多いのではないでしょうか。

 

業務命令を断れる条件とは?

ここまでは「業務命令が絶対」と言うような話しで進めてきましたが、実は業務命令を断ることも可能です。

 

業務命令を断れる条件はコレ

  • 業務命令に「正当な理由」があるか?
  • 重要度が高い個人的理由(就業規則に記載がある)

 

言い合いをする男女

 

つまり、正当な理由がある業務命令は労働契約を結んでいる以上、基本的には断ることが出来ませんが、業務命令に正当な理由がない場合は「断る」ことが出来ますし、就業規則に記載があるような個人的な理由でも断ることが出来ます。

 

例えば、業務命令に正当な理由がない場合はこんなこと

  • 法令違反にあたる行為
  • 仕事終わり(時間外)の飲み会の強制参加
  • 業務に無関係であったり、成果につながらない行為
  • ハラスメントの被害者や加害者になってしまう命令

 

このような命令は正当な理由がないですし意味不明なので従う必要はなく、断ることができます。もし、断ったことで、解雇されても裁判で争えば勝訴の可能性が高いので、迷わず弁護士に相談しましょう。

 

判決する

 

正当な理由がある業務命令だけど、一般的に断れる個人的な理由

  • 身体的、精神的な疾患があるため
  • 家族の人命にかかわることがある、危篤や葬儀など
  • 有給休暇の取得のため(繁忙期は拒否される可能性あり)

 

このような事例は、就業規則に記述がある場合がほとんどで、一般的には断ったり、会社を休むことが出来ます。ですが、調べてみると事情は複雑で絶対断れなかったり、有給扱いにならないこともあるようです。

 

引用:弁護士法人デイライト法律事務所 有給休暇の拒否は違法?【弁護士が解説】

有給休暇を拒否した場合の罰則
有給休暇を合理的な理由もなく拒否すると、労働基準法第39条の違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となります(労基法119条)。

有給休暇について、上記の内容を逆に考えると、会社は合理的な理由があれば有給休暇を断れる、、、となりますね。

 

引用:弁護士費用保険の教科書 忌引きで休ませてくれない!労働基準法ではどんな扱いなの?

忌引きについては労基法に何の規定もされていません。

(中略)

労働者に対する福利厚生の一環として慶弔休暇や病気休暇などの制度を設けている、というのがよくあるパターンです。

(中略)

会社が就業規則に忌引きの規定を設けた場合には、会社は労働者からの忌引きの申し出を拒むことはできません。

しかし、忌引きの規定があるからといって、それが必ずしも有給で休めることとはイコールではないことに注意が必要です。

私の会社では忌引きは出勤扱いで休むことができますが、これは会社それぞれの就業規則によって違いがあるようです。就業規則に記載がないと、休ませてくれないかもしれませんね。

 

結局は基本的には業務命令に従うことになる

嫌な業務命令だけど従わなければならない

ではここからは、正当な理由がある業務命令だけど、みんなが嫌がりがちな業務命令について考えてみます。

 

例えば、みんな嫌がる業務命令にはこんなものがあります

  • 出張や転勤
  • 残業や休日出勤
  • 草むしり、草刈り
  • メンタルや体力的にキツイ仕事

 

このような業務命令はよくあることですが、人によっては嫌がることでもありますね。でも、会社にとっては必要なことで正当な理由があるわけなんです。

では今回はこの中で、「残業や休日出勤」と「草むしり、草刈り」について取り上げてみます。

 

現場作業する男

 

まず、「残業や休日出勤」はどこの会社でも日常的にあることかもしれません。嫌がらせ的な理由で残業や休日出勤を命令するのは断れますが、「納期に間に合わせるため」や「客先での作業が日曜日にしかできない」と言った理由の場合は、「正当な理由」になるので断れません。とは言え、法令を守った時間外労働の範囲での話しです。

次に、一番意味なさそうな「草むしり、草刈り」について考えると、普段の業務と全然関係ないし、早起きして出社することもあるので、不満しかないブラック企業って思われるかもしれません。

でも、草が伸びていたら会社の出入口が見えにくくて安全上の問題があるかもしれませんし、景観維持(保全)によって健全な会社アピールの意味もありますし、草刈りを業者に依頼する予算がないかもしれません。となると、業務上必要な作業と言えるかもしれません。もし断るとしたら、就業規則に記載がある個人的な理由を持ち出すしかないでしょう。

 

実際問題、業務命令は普通に断れることが多い

労働契約なんて意識したことないし、普通に仕事をしていれば「業務命令」について深く考えることもないのですが、よくよく調べてみると「業務命令の効力はかなり強い」ことが分かりました。

だから、「基本的には業務命令は断れない」って説明してきたのですが、実際のところはどうでしょうか?

 

実際の業務命令はこんな感じです

  • 会社側の配慮によって、ささいな理由でも断れるケースが多い

 

勿論、「全然融通が利かない、断れない」って会社もあるかもですが、働き方改革の効果とハラスメントの社会問題の影響で、会社側(上司など)は「従業員と揉めたくない」って気持ちがあるので、大した理由がなくても業務命令を断れる会社が増えてきています。

私の勤め先でもそうですし、Twitterのフォロワーさんや友人に聞いてみても、断れる会社さんが多いです。

 

折から飛び出す男

 

とは言え、冒頭でも言いましたが、会社に対して「自分の都合が通りやすくなる」ことによって「働き手の権利を拡大解釈して何でもかんでも自分都合の主張をする」ってことは間違っています。まずは会社から与えられた仕事であったり、自ら率先して会社に貢献して労働契約の義務を果たしてから「権利」を主張しましょう。

だって結局、調子に乗りすぎたら自分の都合が悪くなるだけですから。

 

調子に乗りすぎるとこうなります

  • 同僚とギクシャクする
  • 客先の評価が下がる
  • なんとなく待遇が悪くなる
  • 昇給しない、賞与が少ない

 

過度な自分都合の主張によって、自分の居場所は無くなってい行きますし、業務命令を断り続ければ、解雇の理由になるので会社をクビになる可能性があります。

なので、もしどうしても「会社の仕事が嫌」な場合は、業務命令を断るのではなく、別の方法を考えた方が良さそうです。

 

無理なら転職、独立、生活保護がある

会社が嫌ならこんな方法があります。

  • 転職する
  • 独立や起業する
  • 生活保護を受ける

 

今の会社よりも、もっと自分のやりたいこと、自分に合っている仕事、の会社に転職する。

自分のやりたいように働くために、独立してフリーランスになる、起業して自分の理想の会社を作る

もし、なにもかもうまく行かず働くことが困難であれば、生活保護を受けることも可能なので、とりあえず目の前の嫌なことから逃げるだけでなく、前に進む行動を選択することで未来は開けます。

 

助け合って山を登る男女

 

生きていくことは辛いことばかりです。楽しいことや達成感よりも辛いことの方が圧倒的に多いです。でも、前向きな行動をしなければ、一生辛いだけです。

結局、生き方は人それぞれです。どうなるかわかりませんし、結果は全て自己責任です。誰も助けてくれないし、人のせいにしても過去を取り戻すことはできません。

だから、やれることはやる、何かに挑戦してみる、によって自分の可能性にかけてみる方が良いに決まっています。

 

*もしまだモヤモヤしているようでしたら、こちらに参考になる記事があります。 ⇒ 【前向き思考/悩み/メンタル】

 

ポイントまとめ

それでは、業務命令について重要なポイントをまとめておきます。

 

ポイント

  • 会社と従業員は労働契約を結んでいるので業務命令は断れない
  • 正当な理由がない業務命令や、就業規則に記載がある個人的理由があれば断れる
  • 自分都合の主張をしすぎると自分の居場所がなくなり、解雇されるリスクがある
  • 会社が嫌なら、転職する、独立や起業する、生活保護を受ける、の選択があります

 

以上4つのポイントです。

 

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以上です。

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