今回は「LMガイドやリニアガイドの交換方法/位置決めの有無とスライドテーブルの脱着で判断する」についての記事です。
LMガイドの交換はメンテナンスでおこなわれますが、交換の作業は新規の組立とは違い簡単に交換ができないことが多くあります。例えば、LMガイドの本数、位置決めの有無、スライドテーブルをバラスのバラさないのか?などの状況により交換方法を検討しなければなりません。
今回の記事では、そう言った状況の中で「どのような交換パターンが考えられるか」を検討して紹介しようと思います。
記事の目次
LMガイドやリニアガイドの交換方法
LMガイドを使用する機構には「ガイド1本使用」「ガイド2本使用」問わず、通常は「位置決め(基準面)」があります。ですが中には「位置決め機構がない」LMガイドも存在しそれによって交換の手法を検討しなければなりません。
イメージ図
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また、LMガイドの交換にはスライドテーブルを「バラス」「バラさない」のどちらなのか?もポイントになります。スライドテーブルをバラスとLMガイドのみの状態となるので交換の作業性が良いのですが、バラさないと作業性が悪いだけでなくダイヤルゲージなどの測定器が使用できない可能性が大きいです。
例えばスライドテーブルをバラさない理由には以下の状況が考えられます。
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重量が重くバラせない
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バラスと時間が掛かりすぎる
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作業エリアの都合上、バラススペースがない
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エアー/センサ/電線などが繋がっておりバラしたくない
スライドテーブルには様々な部品や機器が搭載されている事が当然ありえますから、このような理由で「バラさない」ままLMガイドを交換する状況が大いにあります。
スライドテーブルをバラさない場合
スライドテーブルをバラさない場合には「スライドテーブルを支えておく」必要があります。
支えておく理由
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手や工具を挟む
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LMガイドが抜けない
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新品のLMガイドが入らない
などの理由があります。支えには「盤木」「ブロック」「ジャッキ」など状況により使い分けます。
水平の場合
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垂直の場合
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LMガイドの交換パターン
それではLMガイドの交換パターンを考えましょう。
LMガイドの交換1本ずつ交換パターン
1本ずつ交換のパターンではスライドテーブルをバラさない状況が考えられますがそれ以外にも「位置決めがある」「位置決めがない」で方法が変わってきます。
位置決めありの場合
位置決めありの場合には位置決めを使った交換方法となります。
位置決めありの方法
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LMガイドを1本ずつ交換します(2本とも交換する)
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2本のLMガイドとスライドテーブルのねじは仮固定(遊びがある状態)としておきます。
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基準側のLMガイドのLMレールを位置決めに接触させてねじを締付け固定します。
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スライドテーブのねじを全て締付け固定します。
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スライドテーブルをスライドさせながら従動側のねじを順番に締付てLMガイドを平行とします。
LMガイドの交換
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平行出し
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位置決め無しの場合
この方法は中古の既存LMガイドの1本を基準として基準を移しながら交換する手法です。LMガイドの「基準がとれない」「基準がない」場合に有効ですが、中古のLMガイド基準となるので交換後の精度の再現性に疑問が残ります。
位置決めなしの方法
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LMガイドを1本交換します
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交換した1本のLMガイドとスライドテーブルを固定しスライドさせながらLMレールを締付けて固定し平行を移す
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2本目のLMガイドを交換する
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2本目のLMガイドとスライドテーブルを固定しスライドさせながらLMレールを締付けて固定し平行とする
LMガイドの交換
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LMガイドの交換
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既存のLMガイドの精度を1本目のLMガイドへ移す
1本目のLMガイドを基準とし2本目を平行にする
LMガイドの交換 2本同時交換パターン
2本同時交換の場合にはスライドテーブルを「バラス」事が多いと思いますのでスライドテーブル無しでの状況で考えます。
位置決めありの場合
位置決めありの方法
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スライドテーブルをバラス
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LMガイドを2本交換します
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基準側のLMガイドのLMレールを位置決めに接触させてねじを締付け固定します。
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基準側と平行となるようにダイヤルゲージまたはスライドテーブを使用して従動側のねじを締付け平行とします。
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スライドテーブルを復旧して完了です。
平行出し
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スライドテーブルでの平行出し
ダイヤルゲージでの平行出し
位置決め無しの場合
この場合は非常に厄介です。「何に対して平行なのか」が不透明です。もし何も基準が無い場合には自分で基準を決定する必要があります。
例えばストレートエッジを使用し、既存のLMガイドと平行な位置にストレートエッジを固定します。次に新品のLMガイドをに交換してストレートエッジと平行となるように固定する方法があります。≪一例ですので状況に応じ考えましょう≫
位置決めなしの方法
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スライドテーブルをバラス
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LMガイドを2本交換します
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基準側とするLMガイドを基準となるような部品からダイヤルゲージを使用し固定して基準側LMガイドを決める
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基準側と平行となるようにダイヤルゲージまたはスライドテーブを使用して従動側のねじを締付け平行とします。
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スライドテーブルを復旧して完了です。
平行出し
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位置決めが無い場合は「何か」を基準としてLMガイドの位置を決定する必要があります。
基準側の固定が出来ればスライドテーブルかダイヤルゲージで従動側のLMガイドを平行とします。
LMガイド交換まとめ
以上が今回考えたLMガイドの交換パターンですが、方法よりも一番大切なことは精度です。「交換前と比べてどうか」「新品の時と比べてどうか」などを考えると慎重な判断で作業をおこなう必要があります。特にLMガイドに基準面が無い場合には方法を吟味して精度が担保できるような方法を状況に応じて考えましょう。
参考
LMガイドについてはこちらの記事も参考になります
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LMガイドの高さ平行度を測定する方法【忘れがちな精度】
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LMガイドの平行出しを素早く行う方法【ダイヤルゲージの測定ポイント】
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関連記事:【直線運動の要素】
以上です。