今回は「市販のローラーコンベヤの特徴と精度と種類と搬送方式」についての記事です。
ローラーコンベヤはコンベヤの定番中の定番のコンベヤです。皆さんも一度はどこかで目にしたことがあろうかと思います。
私の場合も装置の一部に市販のローラーコンベヤを使用することが多々あり、「精度が低いが安価でお手軽に搬送するのには最適」といった印象です。
そこで今回の記事では、コンベアの定番の市販のローラーコンベアについて基礎情報をまとめておこうと思います。
記事の目次
市販のローラーコンベヤの特徴と精度と種類と搬送方式
ローラーコンベヤとは
市販されているローラーコンベヤは、通称コロコンやホイールコンベヤと呼ばれているパイプの両端にベアリングを内臓した金属や樹脂のローラーを使用したコンベヤです。
なんとなくの精度で簡単に、そして安い設備投資で搬送したい場面に使用されていることが多いと思います。
特徴
ローラーコンベヤの特徴には多くのメリットがありますが、デメリットも理解しておく必要があります。
メリット
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安価
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組立が簡単
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構造が単純
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改造や変更が容易
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モーターが無くても使用可能
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抵抗が少ないので人手で簡単に搬送できる
- 搬送物は軽量(おおよそ200Kg以下)の搬送に向いている
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搬送物のサイズは比較的大きめのサイズ(ローラーが3本以上接している大きさ)に向いている
デメリット
- 搬送精度が低いので精密な搬送には向いていない
- 重量級の搬送物(おおよそ200Kg以上)には向いていない
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摩擦係数が高い搬送物に使用すると、摩耗してローラーに穴が開く
- 搬送物がスリップしやすく、ローラの遊びが大きいので停止精度が低い
- 搬送レベル(搬送の安定性)が低く、1/10mm~1mm単位の不安定さがある
- 小さいサイズの搬送物はローラー間のすき間に搬送物が落ちてしまったり、巻き込まれてしまう
精度
市販のローラーコンベヤには多くのメリットがありますが、その反面精度は高くありません。
3つの精度で考えてみますとこうなります。*私の経験に基づく見解です
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外径の精度・・・ローラー外径は研磨で仕上げられていないので1/100mm~1/10mmの誤差があります
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回転の精度・・・外径の精度が低いので、回転すると1/10mmの振れとして現れます。
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搬送の精度・・・ローラーとローラーにはすき間があるので、搬送物が乗り継ぐときに上下にレベル変化します
これらを総合的に判断すると1/10mm~1mm程度の精度となるので、精密な搬送や制御が必要な搬送物には不向きでしょう。もし、1/100mm以下の精度が必要であればベルトコンベヤを使用することをお勧めします。
逆に、精度が必要なくパレットや段ボールのような取り合えず搬送できれば良いものにはローラーコンベアは最適です。
材質の種類
ローラーコンベヤの材質は、アルミやスチールやステンレスのタイプと、金属ローラーの表面にゴムライニングやコーティングしてあるタイプがあります。
出典:オークラ輸送機株式会社 カタログ KR型 スチール製ローラーコンベヤ
材質の種類と特徴
- スチール・・・安価なスタンダード
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アルミ・・・耐摩耗性は低い、クリーンルームなど
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ステンレス・・・耐腐食性が高い、クリーンルームなど
- 樹脂ローラ(PVCやABS樹脂)・・・食品関係など
- 金属ローラ×コーティング・・・コーティングの素材によって違いがあるが、低摩擦で剥離性が高いものが多い
- 金属ローラ×ゴムライニング・・・ゴムの素材によって特徴に違いがあり、耐摩耗、耐薬品性、耐油性など様々な特徴がある
補足ですが、コーティングとライニングの違いについて説明しておきます。
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コーティング・・・母材の表面におおよそ厚さ1mm以下の膜厚のもの
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ライニング・・・母材の表面におおよそ厚さ1mm以上の膜厚のもの
実はこれには明確な基準値がなく、おおよそこのような区別とされているだけでなので、特に気にする必要はありません。
ゴムライニングの種類
ゴムライニングには、多くの種類があるので使用用途によって使い分けましょう。
代表的なゴムライニングの種類を紹介
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天然ゴム・・・安価で耐摩耗性に優れている
- クロロプレンゴム(CR)・・・加工性、耐油性、耐薬品性、耐熱性、耐疲労性などに優れていてバランスが良い
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ウレタンゴム・・・機械的強度が高く耐摩耗性に優れているが、耐水性、耐薬品性、耐熱性に劣る
- エチレンプロピレンゴム(EPDM)・・・耐薬品性に非常に優れているが耐油性に劣る
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ニトリルゴム(NBR)・・・耐油性に非常に優れているが耐候性、耐オゾン性に劣る
- シリコンゴム・・・耐熱性、耐寒性、耐候性、電気絶縁性、難燃性、無毒性に優れているが、機械的強度が低い
搬送方式の種類
市販のローラーコンベヤの搬送方式にはグラビティコンベヤ(フリーローラタイプ)と駆動式コンベヤの2種類があります。
出典:オークラ輸送機株式会社 カタログ チェーン駆動ローラ
搬送方式は下記の2種類です
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グラビティコンベヤ・・・モーターがないコンベヤ。搬送物を「人が押す」「自重落下させる」「シリンダなどで押す」などの力によって搬送させる
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駆動式コンベヤ・・・モーターの回転力を「チェーン」「タイミングベルト」「丸ベルト」などでローラに伝動させることでローラー自体を回転させて搬送させる
市販のローラーコンベヤのポイントのまとめ
それでは、市販のローラーコンベヤについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 市販のローラーコンベヤとは、パイプの両端にベアリングを内臓した金属や樹脂のローラーを使用したコンベヤです
- 安価で構造が単純なので導入のハードルが低い
- 搬送精度は1/10mm~1mm程度
- ローラーの材質はスチール、アルミ、ステンレス、樹脂があり、さらに金属ローラにコーティングやライニングしたタイプもある
- 搬送方式はグラビティコンベヤと駆動コンベアの2種類がある
以上5つのポイントが大切です。
ローラーコンベアはコンベアの定番であり、基本となる形態です。参考にしてください。
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この記事は下記のメーカー情報を参考にしています。
- オークラ輸送機株式会社
関連記事:【搬送要素】
以上です。