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エアシリンダの状態維持の方法として、まず初めに考えるのがエアー機器による対策です。
代表的な機器には、5ポート3位置オールポートブロック(クローズドセンタ)の電磁弁、パーフェクトブロック、パイロットチェック弁付きスピードコントローラーがあります。
今回の記事では、これら3つの機器が「回路のどこでエアーを止めるのか」という構造的な違いから、それぞれの特徴、そして選定基準までを解説していきます。
記事の目次
クローズドセンタとパーフェクトブロックとパイロットチェック弁付きスピコンの違い
エアシリンダの残圧保持は難しい
機械装置の可動部には、エアーを動力としたシリンダ(アクチュエータ)が採用されることが多いのですが、エアシリンダには独特の注意点があります。
エアーシリンダの欠点
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「エアーの経路からの漏れ」が発生しやすくシリンダの状態維持が難しい
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何らかの理由で「供給元圧の低下・遮断」が発生すると状態維持が難しい
つまり、エアー圧を消失するリスクがあるため、状態維持が難しく、結果、シリンダが意図しない方向に動いてしまう可能性がある、ということです。
例えば、「上下動作では自重で落下する」「チャック機構では、把持力を失いワークが落下する」「位置決め機構では、停止位置がずれてしまう」です。
これらはすべて、エアー圧によって状態維持している構造に共通するリスクです。
エアシリンダ

エアシリンダの保持圧力が失われる要因は、大きく分けて「経路内からの漏れ」と「供給元圧の低下・遮断」の2種類があります。
「エアーの経路からの漏れ」によって、徐々に圧力が消失する要因
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エアー配管や継手からの漏れ
エアーホースの亀裂と差込み不良・継手のねじ込みのシール不良
- 電磁弁内部のスプールでの漏れ
スプールパッキンの摩耗・中立位置でのわずかな内部リークによる排気ポートへ漏れ - シリンダのロッドパッキンからの漏れ
シリンダのロッドパッキンの摩耗・芯出し不良によるパッキンの損傷
「供給元圧の低下・遮断」によって、圧力が消失する要因
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エアーの供給停止
コンプレッサーの故障や運転停止による供給元の消失
- 装置の元圧エアーのバルブを開放
人為的にバルブを開放・制御によって元圧バルブを開放 - エアフィルターの目詰まりで圧力低下
エアフィルターやミストセパレーターの目詰まりによる流量不足(実効圧力の低下) - 別装置のエアー大量消費による圧力低下
同一系統内にある別装置がエアを大量消費するため、一時的に圧力低下する(ドロップ現象)
このようなリスクに対して、シリンダの状態維持(位置の保持・落下の防止)をする必要がある場合は、3つの代表的な対策があります。
参考
*パーフェクトブロックについてはこちらの記事で紹介しています
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パーフェクトブロックとは気密を保つ機器【特徴と仕組みと注意点】
続きを見る
*パイロットチェック弁付きスピードコントローラーについてはこちらの記事で紹介しています
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パイロットチェック弁付きスピードコントローラーの特徴・仕組み・注意点【エアシリンダ落下防止対策】
続きを見る
シリンダの状態維持の方法と特徴
代表的なシリンダの状態維持(位置の保持・落下の防止)の方法はコレ!
- パーフェクトブロックを回路に組込む
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パイロットチェック弁付きスピードコントローラーをシリンダに取付ける
- 5ポート3位置オールポートブロック(クローズドセンタ)の電磁弁を使用する
パーフェクトブロック

これらはすべて動作停止中に「シリンダ内の残圧エアーを閉じ込める」という目的で使用する機器ですが、その違いは「エアー回路の、どこで止めるか」という点にあります。
まず、パーフェクトブロックは、電磁弁とエアシリンダを接続するエア配管の「途中」に設置する機器です。元圧(パイロット圧)が消失した際には、パーフェクトブロックからシリンダまでのエアーを閉じ込めることで、シリンダ内部の残圧を保持し、シリンダの状態を維持します。
次に、パイロットチェック弁付きスピードコントローラーは、エアシリンダのポートに「直接」取付けるため、シリンダ内部のエアーをダイレクトに閉じ込めることで、シリンダの状態を維持します。その反面、シリンダから電磁弁のまでの残圧は開放されます。
最後に、5ポート3位置オールポートブロック(クローズドセンタ)は、「電磁弁本体のスプールバルブ」によってすべてのポートを閉じ、エアーの流れを遮断するため、電磁弁からシリンダまでの広範囲のエアーを閉じ込めることができます。
*ざっくりまとめると、こんな感じなります。(シリンダが停止している時に発生した場合にどうなるか?を示しています)
| 使用する電磁弁 | エアー配管や継手からの漏れ | 電磁弁内部のスプールでの漏れ | シリンダのロッドパッキンからの漏れ | エアーの供給停止 | 装置の元圧エアーのバルブを開放 | エアフィルターの目詰まりで圧力低下 | 別装置のエアー大量消費による圧力低下 | |
| パーフェクトブロック | 5ポート3位置ABR接続(エキゾーストセンタ) | 残圧保持できない | 残圧保持する | 残圧保持できない | 残圧保持する | 残圧保持する | 残圧保持する | 残圧保持する |
| パイロットチェック弁付のスピードコントローラ | 5ポート3位置ABR接続(エキゾーストセンタ) | 残圧保持できない | 残圧保持する | 残圧保持できない | 残圧保持する | 残圧保持する | 残圧保持する | 残圧保持する |
| 5ポート3位置オールポートブロック(クローズドセンタ) | 残圧保持できない | 残圧保持できない | 残圧保持できない | 残圧保持する | 残圧保持する | 残圧保持する | 残圧保持する |
残圧エアーの保持時間の違いと選定の考え方
前章では、各機器が「エアー回路の、どこで止めるか」の違いについて解説しましたが、、、
各機器が「どこで止めるか」が異なるということは、「どこからの漏れなら耐えられるか(保持し続けられるか)」というリスクの許容範囲が変わると言うことになります。
*保持時間の違いはこんな感じです
| 保持時間 | 漏れリスク | |
| パーフェクトブロック | 〇 | パーフェクトブロックとシリンダまでのエア配管・継手の漏れがリスクとなる |
| パイロットチェック弁付のスピードコントローラ | ◎ | パイロットチェック弁付のスピードコントローラはシリンダに直接取付けるので、そのねじ込み部分の漏れのみがリスクとなる |
| 5ポート3位置オールポートブロック(クローズドセンタ) | △ | 電磁弁内部のスプール弁の弾性シールからの漏れと、シリンダまでのエア配管・継手の漏れがリスクとなる |
それでは、これら3つの特徴を私なりに選定の判断をしてみます。
どの機器を選定する場合であっても、エア漏れを嫌うのであれば、まず初めにやるべきことは「物理的なエアー漏れの徹底的な対策」です。具体的には、エア継手のねじ部からの漏れです。 一般的にエア継手のねじ部にはプレコートシールが施されていますが、実はシール性が低く微量に漏れが発生するので、ねじ部にシールテープを追加で巻くことで確実な漏れ対策おこないます。
参考
*プレコートシールの欠点についてはこちらの記事で紹介しています
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ワンタッチ管継手のねじからエアーが漏る【プレコート加工の欠点】
続きを見る
その上で、機器選定の基本的な考え方としては、コスパが良くて現場での施工時間がかからない「5ポート3位置クローズドセンタ(オールポートブロック)」の採用が現実的です。私の経験上、新品であれば数日間は残圧を保持することができます。
とは言え、5ポート3位置クローズドセンタ(オールポートブロック)よりも高い信頼性や安全性が求められるケースや、長期間にわたる確実な保持が必要な場面には、「パイロットチェック弁付スピードコントローラー」が次の候補となります。
ただ、スペースの都合でエアシリンダにスピコンが取り付けられなかったり、特殊なスピコンを使用したいケースでは、「パイロットチェック弁付スピードコントローラー」が使用できません。その場合には、エア配管のどこの位置でも取り付け可能な「パーフェクトブロック」を選ぶことになります。
出典:SMC カタログ SMCのパイロットチェック弁付きスピコン
エアー漏れのリスクをゼロにすることは不可能
さて、最後に大切な話しです。
ここまでは、「シリンダ内の残圧エアーを閉じ込める」方法を紹介してきましたが、実務において忘れてはいけないことがあります。
それは、「エアー漏れのリスクをゼロにすることは不可能」ということです。
空気圧機器はパッキンなどのゴム製品に依存しており、経年劣化や環境変化による微細な漏れを完全に防ぐことはできません。
そのため、ワークの重量が重い場合や、人命に関わるような箇所などで、「停止中に絶対にシリンダを落下させたくない(物理的な保持が必要)」という安全性を求めるのであれば、メカ的な方法が必要です。
エアーの圧力に頼らない方法
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メカロックシリンダ(ロック付シリンダ)を採用する
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シリンダの状態が維持できなくても、メカ的に安全な構造にしておく
メカロックシリンダ(ロック付シリンダ)は、シリンダが端であるときに、シリンダ内部の機械的なロック機構が作動するため、エアーを消失しても動作することがありません。
次に、「メカ的に安全な構造にしておく」についてですが、エアー圧が消失してシリンダが動作しても干渉しない、クラッシュしないように、「ストッパー・受け」を取付けておくこと、メンテナンス時には動作防止用の安全ピンを取付ける、などの設計をしておくことです。
このように、エアーの圧力に頼らないために、構造そのもので物理的に安全を担保する必要があります。
補足)残圧とシリンダの飛び出し現象について
今回紹介した、パーフェクトブロック、パイロットチェック弁付きスピードコントローラー、5ポート3位置オールポートブロック(クローズドセンタ)を使用するにあたり、運転再開後のシリンダの飛び出し現象のリスクについて、簡単にまとめておきます。
大前提として、シリンダ内部に残圧がなく大気圧となっている状態で運転を再開した場合には、背圧制御が効かないため、シリンダの飛び出し現象が顕著に発生します。
そのため、5ポート3位置ABR接続(エキゾーストセンタ)を使用した場合には、運転再開時にシリンダの飛び出し現象が発生しますが、ただし、「パーフェクトブロック」または「パイロットチェック弁付きスピードコントローラー」を組み合わせた回路においては、状況がことなります。シリンダ内または配管内に残圧が封じ込められている状態なので、わずかな飛び出し現象にとどまると予測されます。※実際には現物の状態で個体差あるので、状況に応じてメーターインを追加するなどしてください。
また、5ポート3位置オールポートブロック(クローズドセンタ)の場合は、基本的には電磁弁からシリンダまで残圧が保持されているので飛び出し現象の発生リスクは低いです。ただし、残圧を開放すれば飛び出し現象は発生しますので注意してください。
参考
*エアシリンダの飛び出し対策についてはこちらの記事で紹介しています
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メーターイン制御とメータアウト制御の調整方法【エアシリンダの飛び出し対策】
続きを見る
ポイントまとめ
それでは、クローズドセンタ・パーフェクトブロック・パイロットチェック弁について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 「パイロットチェック付スピコン」が最も漏れのリスクを抑えられます
- 継手のねじ部からの漏れを徹底的に防ぐために、シールテープを追加で巻くことが大切
- エアー漏れはゼロにできないので、落下防止にはメカロックやストッパーの検討も重要です
以上つ3のポイントです。
*エアーホースを直角にカットするために必要なカッターです
*シールテープの購入はこちらから
関連記事:【空気圧/油圧】
以上です。
