今回は「タクトタイムとスピードの必要性」についてに記事です。
機械装置のタクトタイムの改善には、可動部のスピードアップが欠かせません。
スピードアップの方法について、今回はエアシリンダを例に改善案を紹介しようと思います。
記事の目次
タクトタイムとスピードの必要性
タクトタイムとは「1つの製品を生産する為に必要な時間」です。
タクトタイムが短ければ、製品を生産する能力が高いと言う事になります。
このタクトタイムは、基本的には客先の仕様で決められています。装置メーカーは、このタクトタイム以下で稼働できる装置を造らなけではいけません。
ですが、いくら設計で検討しても出来上がった装置がタクトタイムより遅くなってしまう事があります。
組立目線のタクトタイム短縮
タクトタイムの短縮には、急所となる部分の見極めが必要です。
見極めには、装置内の各ユニット(各工程)を観察することが重要です。
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待ち時間が多いユニット(工程)はどこか?
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遅れているユニット(工程)はどこか?
装置全体としてではなく、ユニット毎に観察する事で遅い原因を発見します。
原因が分かったら、次はどのようにしてタクトアップするか(速くするか?)を考えます。
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可動するモノの速度を上げる(メカ、ソフト)
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動きのフローを変える。効率の良い動作方法(ソフト)
組立目線でできる事はこの2点だと思います。
漠然とした「遅い」ではなく、なぜ遅いのか?は装置内を分割して分けて考えるといいです。
原因追及の考え方の基本は、全体として捉えるのではなく状況の細分化で個々に調査することだと思います。
それでは、タクトが遅い原因が「エアシリンダの速度」とした場合に、どのような改善方法があるのか?を考えてみましょう。
エアシリンダ(アクチュエータ)の動作速度を上げる方法
エアシリンダは設計が計算して選定しています。
基本的には想定していた状態となるはずですが、「計算上より速度が遅い」「計算上より、もう少し速くしたい」となった時に、どのような方法があるでしょうか?
速度を上げる方法
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圧力を強くする
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流量を増やす
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排気効率を上げる
このような3つの方法が思いつきました。それでは、それぞれの方法について検討してみましょう。
圧力を強くする
圧力を上げれば単位時間当たりの流量は増えますから速度は速くなります。圧力を上げる方法として、増圧弁やレギュレータ(エア供給の元圧)調整が考えられます。
しかし、圧力を上げる事で起きる問題点があります。
圧力を上げる問題点
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増圧弁を増設しなければいけない
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シリンダの出力が強くなってしまう
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シリンダは最高使用圧力以下でしか使用できない(圧力には限界がある)
この問題点を考えると、目的から大きく反れてしまいそうです。
シリンダの速度を速くしたいのに、出力や使用圧力の問題は目的が変わってしまいます。
そうなると、基本的には適正値(設計、仕様などで決められた)以上に圧力を上げる事は選択できません。
出典:SMC カタログ レギュレータ AR-D
流量を増やす
流量を上げると、シリンダの速度は速くなります。
流量を増やす方法
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エアー配管の口径を大きいものにする
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スピードコントローラー(速度制御弁)の開度を調整
スピードコントローラー(速度制御弁)の開度を調整
スピードコントローラー(速度調整弁)はエアー配管(空気の通り道)の断面積をニードル弁で小さく/大きくして(開度調整)流量を変化させますので、ニードル弁を全開方向へ調整するほど流量が増え速度が速くなります。
ただし、全開で使用する事に破損などの問題はありませんが、全開=調整幅が無いので全開で使用する事を想定して設計してはいけません。
*補足
どんなモノでも言えることですが、調整機能がある場合は調整幅(調整シロ)を残した状態(余力がある)で客先に納入する事が基本です。
装置を使用していく中で、予期せぬ事態が起きた時の調整幅は残しておくべきだと思います。
出典:SMC カタログ スピードコントローラー
エアー配管の口径を大きいものにする
配管径を大きくすると(断面積増大)、給気/排気の流量が増え速度が速くなります。
例えば、シリンダ~電磁弁までを8mmのエアーチューブを使用していたら、12mmのエアチューブに変更する事です。
難点としては、一度配管したエアチューブを撤去して再度配管し直さなければいけませんので、多少の時間を要する事になります。
排気効率を上げる
急速排気弁やクイックエキゾーストバルブと呼ばれる、素早くエアーを排気する製品は排気効率が上がるので、シリンダの速度が速くなります。
シリンダの配管接続口の近い位置で取り付けると、給気はシリンダへ供給され、排気は電磁弁まで戻ることなくその場で排気(大気開放)されます。
排気抵抗が少ないと言うことは、給気側がストレスなく動作すると言う事になりますので速度が速くなります。
自動車のマフラー(排気)の配管径が小さい/大きいでイメージすると分かりやすいかもしれません。
出典:SMC カタログ クイックエキゾーストバルブ
急速排気弁の効果は下記の動画でイメージしてください。
私のやり方
いくつかの方法を検討してみましたので、それらの情報を踏まえて私のやり方を紹介します。
私のやり方は下記の番号順で実行します。
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エアーの元圧が設定した時よりも低下していないかの確認をする。上げられるのならば調整する。
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スピードコントローラーで調整する。
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エアーチューブか急速排気弁(クイックエキゾースト)のどちらかを検討する(両方実行する事もある)
上記の3番目の項目を実行する場合には設計変更(図面変更)の関係がありますので、他部署への相談と報告は忘れずに行います。
それでも解決しな場合には
それでも解決しな場合には、設計変更が必要です
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エアシリンダのサイズアップ
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電磁弁とマニホールドのサイズアップ
上記のようなことを検討する必要があります。ただ、これらは設計範疇であり組立だけでは対応しきれませんので設計と相談して対策します。
タクトアップとエアシリンダのポイントまとめ
それでは、タクトアップとエアシリンダついて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- タクトアップは装置内を分割して急所を見極める
- エアシリンダの速度アップは、圧力と流量と排気効率を上げる
- アクトアップが望めないときは、大幅な変更や改造が必要になるので設計に相談する
以上3つのポイントを覚えておきましょう。
私は今までシリンダ(アクチュエータ)の速度が遅くタクトが間に合わない事例を多く体験してきました。
解決の方法は様々あり、今回紹介した方法は一例にすぎません。現場で問題に直面するのは組立ですので、こうした情報を参考にして頂ければと思います。
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関連記事:【空気圧/油圧】
以上です。