今回は「平行ピンの抜け対策は貫通穴かエアベントです」についての記事です。
皆さんはこんな経験はありませんか?
「平行ピンを止め穴に挿入したらピンが抜けてきた」
実は私は今まで何度もピン抜けを経験してきたのですが、その原因は「空気の逃げ」がないことでした。
そこで今回の記事では、止め穴に平行ピンを挿入したときにピンが抜けてこないようにする方法について紹介しようと思います。
記事の目次
平行ピンの抜け対策は貫通穴かエアベントです
機械装置の部品に必要な位置決め
機械装置の部品は「精度の保持」や「再現性」を目的として「位置決め」と呼ばれる、部品の位置を確定させる構造を採用することがあります。
穴に挿入された平行ピン
例えばこんな位置決めがあります。
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調整ねじ
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当て止めブロック
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段差加工(段付き)
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平行ピン(位置決めピン)
いかがでしょうか?皆さんの身近な機械装置にもこのような位置決めが採用されているのではないでしょうか?
この中でも位置決めの定番とされているのが「平行ピン」を使用した方法です。
平行ピンを挿入すると問題が起きる
平行ピンは円形の穴に挿入して使用するのですが、それには「貫通穴に挿入する」か「止め穴に挿入する」の2つのパターンがあります。
このうち「止め穴に挿入する」場合は挿入作業において問題が起きることがあります。
平行ピンを穴に挿入すると起きる問題はコレです。
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止め穴に平行ピンを挿入すると平行ピンが抜けてくる
なぜ平行ピンが抜けてくるのか?それにはこんな原因があります。
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空気の逃げ道がないので圧縮された空気が平行ピンを押し返す
ピンが抜けてくる
このような現象は、止め穴に挿入することに加え、より発生し易い条件があります。
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はめ合いが「中間ばめ」の場合
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はめ合い接着剤を使用した場合
ピンと穴が「しまりばめ」のようにキツイはめ合いの場合は、はめ合いの力が大きいのでピンは抜けづらいのですが、中間ばめのような「適度なはめ合い」の場合は空気の反発力の方が勝ってピンが抜けてくることが多いです。もし挿入時にピンが抜けてこなくても、圧縮された空気が閉じ込められていれば時間差で後になって抜けてくるようなこともあります。
また、ピンと穴のはめ合いが緩い場合は僅かなすき間から空気が逃げるのでピン抜けてくることはありませんが、嫌気性接着剤の「はめ合い接着剤」を塗布してピンを固定すると、ピンと穴のすき間に接着材(液体)が入り込むので空気の逃げ道がなくなりピンが抜けてきます。
止め穴に平行ピンを挿入する改善
止め穴に平行ピンを挿入して、押し戻されるのようなことが起きないためにはいくつかの改善案があります。
止め穴にピンを挿入する改善方法
- ピン穴よりも小さな貫通穴を開ける
- エアベント付きの平行ピンを使用する
小さな貫通穴を開ける方法は、止め穴の底面に小さな貫通穴を開けることで、平行ピンを挿入したときに入り込み深さを確定しつつ空気を逃がすことができます。
この方法は、材料の厚みによっては深い穴を開けなければならなかったり、加工に手間がかかるのでコストと納期が問題となることがあります。
貫通穴で空気を逃がす
エアベント付きの平行ピンとは、エアーベントと呼ばれる圧縮された空気の逃げ道となる流路があるピンのことで、エアーベントの仕組みは2種類あります。
エアベント付き平行ピンの種類
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ピンの中心に貫通穴
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ピンの外径がD形状
このうちD形状が一般的ですが、D形状のピンに部品の面を当てて位置決めとする場合は、D形状の部分が当て面にならないように、D形状の面を当て面から180度ずらして使用します。
この方法は加工のコストアップはありませんが、ピンのコストが上がってしまうデメリットがあります。
エアベント付きピン
*エアベント付きピンとはこのようなピンです。
出典:MISUMI 位置決めピン -エアベント付めねじタイプ-
平行ピンの中間固定は禁止です
平行ピンの抜け対策として、「ピン穴よりも小さな貫通穴を開ける」「エアベント付きのピンを使用する」方法を紹介しましたが、どの方法も「空気の逃がし」があることがポイントです。
ところが、空気の逃がしがあれば良いからといって「貫通穴にピンを中間固定すればいいでしょ」なんて考える人もいますがこれはお勧めできません。
貫通穴に中間固定
お勧めできない理由はコレです
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少し負荷を与えると深さがズレる
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部品を組み合わせたときに深さがズレる
これは今までの私の経験からも言えることで、いくらはめ合いがキツくても高強度の接着剤で固めてもこのような方法は高確率で深さがズレます。
なので、貫通穴に平行ピンを中間固定するような設計は禁止なのです。
裏技!エアが抜けない時の対処方法
止め穴に平行ピンを挿入ときに、エア抜きがなくて平行ピンが抜けてくる場合の裏技を紹介しておきます。
平行ピンが抜けてくるときの裏技
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はめ合い接着剤を多めに塗布して万力やハンドプレスで押し込む
はめ合い接着剤を多めに塗布して挿入する
止め穴にはめ合い接着剤を多めに塗布して万力で押し込んだ状態です。
この方法のポイントは「多めに塗布して強力な力で押し込む」ことです。
多めの接着剤と塗布すると、止め穴にほとんど空気が残存しておらず、圧縮性のない液体の接着剤が詰まっています。その状態で、平行ピンを強めの力で押し込むと、接着剤が「ブチュー」っとはめ合いのすき間から抜けて平行ピンを挿入することができます。
少々荒業ですが、エア抜きの対策ができないときには有効です。
平行ピンの抜け対策のポイントまとめ
それでは、平行ピンの抜け対策について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 止め穴に平行ピンを挿入すると平行ピンが抜けてくることがある
- 止め穴に「中間ばめ」や「はめ合い接着剤」の場合は抜ける確率が高い
- 平行ピンの抜け対策は「ピン穴よりも小さな貫通穴を開ける」や「エアベント付きの平行ピンを使用する」がある
- 「貫通穴にピンを中間固定」の抜け対策は禁止
以上4つのポイントです。参考にしてください。
参考
平行ピンの接着剤について紹介しています。
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平行ピンにはめ合い接着剤を塗布する注意点【塗布のポイント】
続きを見る
*平行ピンの購入はこちらから
関連記事:【締結要素】
以上です。