今回は「測定器を組合わせて測定する」についての記事です。
機械装置の組立作業には精度の測定が欠かせませんが、「測定するモノの状態」や「測定する作業エリア」によって簡単に測定ができないことがあります。
そんな時には、直角定規やストレートエッジを使用することで測定方法の選択肢が増えるので有効です。
そこで今回の記事では、直角スコヤとストレートエッジに水準器やダイヤルゲージを組合わせた測定方法をまとめておこうと思います。
記事の目次
直角定規やストレートエッジの活用
組立には測定器が必要
皆さんは、なにかを取り付けたり組立てる時に「寸法を測る」「精度を測定する」をしていますか?
実は、寸法を測ったり精度を測定することはもの凄く重要なことなのですが、それには基準となる測定器が欠かせません。
基準となる測定器が必要な理由
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部品やユニットが水平、平行、垂直であるか?の確認と調整
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図面通りの寸法や位置関係になっているのか?の確認と調整
メモ JISで定義されている測定器について
JIS Z 8103では測定にいて下記のように定義されています。
測定
- ある量を,基準として用いる量と比較し数値又は符号を用いて表すこと。
測定器
- 測定を行うための器具装置など。
このような作業には測定器は欠かせませんし、測定器を使用して組立をおこなうことは機械装置の品質や能力を保証ために必要なのでとても重要な作業となります。
*組立作業で使用する精度測定器の紹介はこちらから ⇒ 「精度測定器」
直角定規とストレートエッジの活用
機械装置の寸法を測ったり精度を測定することは、部品単体で測定するのとは違い「測定するモノの状態」や「測定する作業エリア」などの関係で、安定した測定方法ができない場合が多くあります。
このような作業性の悪い環境では、誤差を最小限におさえた確実な測定を行おうとしても、なかなかいいアイデアが思いつかないものです。
そんな時には、測定作業で使用頻度が高い測定器である、角度を測定する「水準器」や変位量を測定する「ダイヤルゲージ」に別の測定器を組合わせると、測定方法の選択肢が増えるのでお勧めです。
水準器とダイヤルゲージと組合せて測定できる測定器はコレです。
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直角定規
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ストレートエッジ
そして、この測定器を使用するポイントは2つあります。
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測定するモノを直角定規やストレートエッジに置き換える
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測定の基準側を直角定規やストレートエッジに置き換える
まとめますと、「測定するモノの状態」や「測定する作業エリア」の都合上うまく測定ができない時は、「測定するモノ」や「測定の基準側」を「精密直角スコヤ」や「ストレートエッジ」に置き換えることで「水準器」や「ダイヤルゲージ」での測定がやり易くなる、と言うことです。
*詳しい測定の例は記事の後半で紹介します。
直角定規とストレートエッジとは
直角定規
直角定規とは、「検査」「測定」「罫書き」に使用できる直角の基準となる測定器で JIS B 7526で規格化されています。呼び名はJISでは直角定規ですが、製造メーカーによっては精密直角スコヤと呼ばれることもあります。
直角定規には使用用途に応じて形状に種類がありますが、私が実際に使用していて皆さんにおすすめしたいのが「I型直角定規」です。
I型直角定規の特徴はコレです
- 剛性が高く信頼性が高い
- 断面がI型なので、自重変形や経年変形が少ない
- 面接触で使用できるので、水準器やダイヤルゲージの併用に向いている
直角定規に重要な直角の狂いの精度は等級によって違いがあります。等級は特級、1級、2級があり等級が高いほど誤差が少なく価格も高くなります。
JIS B 7526の直角からの狂いの規格表
JIS B 7526の直角からの狂いの規格表
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ストレートエッジ
ストレートエッジとは、「検査」「測定」「罫書き」に使用できる真直精度や平面精度の基準となる測定器です。JIS B 7514で規格化されており、JISでの呼び名は「直定規」です。
ストレートエッジには使用用途に応じて形状に種類がありますが、私が実際に使用していて皆さんにおすすめしたいのが「I型ストレートエッジ」です。
I型ストレートエッジの特徴はコレです
- 剛性が高く信頼性が高い
- 断面がI型なので、自重変形や経年変形が少ない
- 面接触で使用できるので、水準器やダイヤルゲージの併用に向いている
ストレートエッジに重要な真直度と高さの精度は等級によって違いがあります。等級は特級、B級、A級があり等級が高いほど誤差が少なく価格も高くなります。
JIS B 7514の真直度と高さ不同の規格表
JIS B 7514の真直度と高さ不同の規格表
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直角定規とストレートエッジの測定注意点
直角定規とストレートエッジは直角や真直の基準として使用する測定器ですが、その使用方法には注意点があります。
直角定規とストレートエッジの注意点
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縦方向で使用することが基本。縦方向はたわみや変形に強い。
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横方向で使用する場合は、たわみと変形を考慮すること。I型は剛性が強いので横でも使用できるが絶対ではない。
直角定規とストレートエッジの注意点
いくら精度が良い測定器であっても、使用方向を間違えるとたわみや変形が発生してしまうので測定値は測定の不確かさが大きく表れます。私がおすすめするI型直角定規やI形ストレートエッジは剛性が高いので、横方向でも変形しにくいと言えますが信用することはできません。この点をしっかりと考慮して使用するようにしましょう。
測定器を組合わせて測定する方法
それでは、水準器とダイヤルゲージに直角定規とストレートエッジを組合せて精度を測定する方法例を紹介します。
測定器の組合せパターンは4通りです。
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直角定規×水準器
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ストレートエッジ×水準器
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直角定規×ダイヤルゲージ
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ストレートエッジ×ダイヤルゲージ
今回紹介する測定方法は基本となる測定方法です。実際の測定状況は様々なので、応用して測定に生かしてください。
直角定規×水準器
これは、2本のスライドシャフトが垂直に取付てある場合です。
2本のシャフトの垂直を測定するために、シャフトに直角定規を当てて水準器で測定することで垂直の具合を水平に置換えて測定することができます。
直角定規×水準器
ストレートエッジ×水準器
これは、2本のシャフトが水平に取り付けられている場合です。
2本のシャフトの水平を測定するために、ストレートエッジをシャフトに渡して水準器で傾きを測定できます。
ストレートエッジ×水準器
直角定規×ダイヤルゲージ
これは、2台の横行ユニットが直角に取り付けられている場合です。
横行ユニットAと直角定規の一面をダイヤルゲージで平行とすると、直角定規のもう一方の一面は横行ユニットAと直角になります。これによって、横行ユニットBと直角定規をダイヤルゲージで測定すると、2台の横行ユニットの直角の度合いが測定できます。
直角定規×ダイヤルゲージ
ストレートエッジ×ダイヤルゲージ
これは、LMガイドを平行ピンと平行に取付る場合です。
平行ピン2本をストレートエッジを当てることで、点を線にすることができます。ストレートエッジにスライド治具とダイヤルゲージをセットしスライドさせながらLMガイドを測定すると変位量を測定することができます。
ストレートエッジ×ダイヤルゲージ
直角定規とストレートエッジのポイントまとめ
それでは、直角定規とストレートエッジについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 直角定規とは直角の基準となる測定器で JIS B 7526で規格化されている
- ストレートエッジとは真直精度や平面精度の基準となる測定器でJIS B 7514で規格化されている
- 水準器とダイヤルゲージに直角定規とストレートエッジを組合せると、測定方法の選択肢が増える
- 直角定規とストレートエッジは縦方向で使用することが基本
以上4つのポイントが大切です。参考にしてください。
参考
*I型ストレートエッジの購入はこちらから
*I型直角定規の購入はこちらから
関連記事:【精度測定/精度調整】
以上です。