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普段、何気なく測定しているが、、、、使用している測定器は、その測定に最適な測定器なのか、、、
もしも、「なぜ、その測定器で測定したのか?」と問われて、答えられるだろうか、、、
測定は奥が深い。最近は3Dスキャナー測定が浸透してきているから、もはや測定の知識や技術なんて必要ない。
そう思いつつ、、、今回は、原点に立ち返り、測定器を選ぶ方法をまとめてみました。
深すぎて、記事にするのを避けていましたが、なんとかまとめました。
記事の目次
4対1理論で部品の要求精度に応じた測定器を選ぶ
4対1の法則で測定機を選定する
初めに、結論から言います。
測定器は、「4対1理論」に基づいて選定することで、誤差の影響を最小限に抑え、信頼できる測定結果が得られます。
この理論は、測定対象の要求精度(公差)に対して、4倍の精度を持つ測定器(不確かさを考慮する場合もある)を使用すれば、測定結果に対して95%の信頼水準が確保できる、ことに基づいています。
*「95%の信頼水準」とは、同じ測定を何度も繰り返したとき、そのうち約95%の結果が、真の値を含む範囲に収まると期待できる、という意味です。
重要ポイント
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4対1理論に適合する測定器を選定する
4対1理論で測定器を選定するためには、
①測定する部品やモノの要求精度(公差)を確認 ⇒ ②その要求精度から、測定器に必要な精度を計算 ⇒ ③計算結果に適合する測定器を選定する
このフローで進めます。
4対1理論は比率で計算します
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対象物の要求精度(公差): 測定器の精度(誤差) = 4 : 1
実際に計算してみた
例題、長さ350mm±0.5mmの部品を測定する場合に、測定器に必要な精度はいくらか?
計算式は
±0.5mm(要求精度) : 𝒙(測定器の精度) = 4 : 1
𝒙 × 4 = 0.5 × 1
4 𝒙 = 0.5
𝒙 = ±0.125mm
以上の計算結果から、測定に使用する測定器の精度は「±0.125mm以下」であれば、要求精度に対して十分な信頼性を確保できると言えます。単位はmm、m/s、db、%など、そのような単位でも同じ計算です。
注意点としては、「測定器の精度」とは、カタログなどに記載されている、最大許容誤差や分解能などの測定器の能力のことですが、実際の測定結果の信頼性を示す「不確かさ」には、測定器の精度とそれ以外の誤差要素である「測定者起因の誤差」「測定環境(温度、振動、湿度など)の影響による誤差」なども含まれます。そのため、測定器の精度は不確かさの一部である、という認識が重要です。
測定器の精度を計算する方法
4対1理論で計算した結果、測定器に必要な精度がわかったら、それに適合する測定器を選定します。しかし、どの測定器が適合するのか?が分からない場合は測定器の不確かさを計算する必要があります。
その前に、まずは「測定器の不確かさとは何か?」を再確認しておきます。
測定器の不確かさとは
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測定器で得られる測定値が、真の値からどれだけばらつくか(誤差の幅)の指標
*私にはこの説明が一番しっくりくるのですが、いろいろな表現があります。
簡単にいうと、測定器の誤差の幅がいくつなのか?となりますが、実は測定器のカタログや取扱説明書を見てもイマイチ分かりません。
それは、測定器の誤差を生む要因は複数あるため、各要因の誤差についての記載があっても、全部の誤差をひっくるめて「この測定器の不確かさはいくつなのか?」の記載がないからです。
そのため、測定器の不確かさは自分で計算して求めるしかありません。
測定機の精度の求めかた
- 測定の誤差要素を洗い出す
測定器:繰返し精度、分解能、指示精度、最大許容誤差など
測定器以外の誤差:測定者の誤差、環境の誤差(温度・湿度)など - 各誤差の標準不確かさを求める
計算式 u(標準不確かさ) = 誤差要素の値 ÷ √3
真の値から測定値がどれくらいばらついているか?を一様分布の標準偏差で表したもの - 合成標準不確かさを求める
計算式 uc(合成不確かさ) = √(誤差Aの標準不確かさ² + 誤差Bの標準不確かさ² ・・・・)
各誤差の標準不確かさを合成した値を求めます - 拡張不確かさを求める
計算式 U = 2(95%信頼水準を得たいときに用いる数値) × uc(合成不確かさ)
*測定の誤差要素に関して、測定器の誤差要素のみを抽出して計算すれば「測定器の精度」を算出できます。測定器の誤差とそれ以外の誤差を加味して計算する場合は、測定器+人+環境+方法=「不確かさ」を算出できます。どちらで計算するによって、結果の意味が違うので注意してください。
実際に計算してみた
例題、ノギスの不確かさを求める
①ノギスの誤差要素を洗い出す
分解能(最小読取り値)= 0.05mm(カタログ値)
最大許容誤差 = ±0.07mm(カタログ値)
作業者の測定誤差 = ±0.05mm(私の感覚) ⇐ これを入れると不確かさを求めることになる
②各誤差の標準不確かさを求める
計算式: u(標準不確かさ) = 誤差要素の値 ÷ √3 です。
分解能の標準不確かさ = (0.05÷2) ÷ √3
分解能の標準不確かさ = ±0.025 ÷ √3
分解能の標準不確かさ ≒ 0.014
最大許容誤差の標準不確かさ = ±0.07 ÷ √3
最大許容誤差の標準不確かさ ≒ 0.040
作業者の測定誤差の標準不確かさ = ±0.05 ÷ √3
作業者の測定誤差の標準不確かさ ≒ 0.029
③合成標準不確かさを求める
計算式: uc(合成不確かさ) = √(誤差Aの標準不確かさ² + 誤差Bの標準不確かさ² ・・・・) です
uc = √(0.014² + 0.040² + 0.029²)
uc ≒ 0.051
④拡張不確かさを求める
計算式: U = 2 × uc(合成不確かさ)
U = 2 × 0.051
U ≒ 0.102
⑤ノギスを用いて測定した結果は、約95%の信頼度で真の値から ±0.102mm 以内にあると考えられる
*注意点として、今回の測定結果は「ノギスを使った測定の不確かさ」です。「ノギスの精度」を計算する場合は、測定器以外の誤差要因を含めないで計算してください。
この計算から、下記のことが分かります。
わかること
4対1理論で計算した結果、ノギスを使った測定の不確かさは、±0.125mmとなり、ノギスで測定すれば、信頼性がある測定値を得ることができます。
その理由は、測定器に必要な精度 ±0.125 > ノギスの不確かさ ±0.102mm であるからです。
今回は、ノギスを例として計算してみましたが、その他の測定器については、同様の方法で計算してみてください。
その際には、測定器の精度と不確かさを混同しないように、自分でコントロールして計算してください。
なぜ「4対1理論」が使われるのか?
なぜ「4対1理論」が使われるのか?
「4対1理論」は、「測定対象の要求精度(公差)」に対して、「4倍の精度を持つ測定器」を使用すれば、95%の信頼水準で測定結果の信頼性が確保できるという考え方です。
この理論が適している理由は、測定器の誤差が最終的な測定結果のばらつきに与える影響を、実用的に許容できるレベル(無視できる)に抑えられる、とされているからです。
その根拠は、「影響度(最終的な測定結果のばらつきの幅が、元の要求精度に対して何倍になったか?の値)」を計算することで、数値で判断ができます。
【 影響度 = √(対象物の要求精度² + 測定器の精度²) ÷ 対象物の要求精度 】
この影響度の値は「1.00」に近いほど、測定器の誤差が測定結果に与える影響が少ないことを意味しています。実際に4対1理論で計算すると、「影響度=約1.03」となるのですが、この「1.03」の「0.03」という値は、測定器の誤差を含んだ最終的な測定結果のばらつきの幅が、もともと設定された対象物の要求精度の幅と比較して、約3%大きくなることを指しています。
つまり、測定器の誤差によって生じる影響は、全体のばらつきの幅の中で非常に小さく、この約3%の広がりであれば、95%の信頼水準(同じ測定を何度も繰り返したとき、そのうち約95%の結果が、真の値を含む範囲に収まると期待できる)をみたしていると言えます。
もし、これより高い精度を求めて例えば「10対1理論」を適用すると、より高精度な測定器が必要になり、その分導入コストや維持コストが大幅に増加してしまうので、4対1理論の方がコストと信頼性のバランスがとれた考え方となりますね。
影響度を計算して比較してみた
それでは実際に、4対1理論と、その他の2対1理論、10対1理論の影響度を計算して比べてみましょう。
おさらい、、、理論の計算方法(測定器に必要な精度)
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対象物の要求精度(公差): 測定器の精度(誤差) = ? : 1
測定器の誤差を含んだ、最終的な測定結果のばらつきが、もともとの要求精度(公差)に対してどのくらい広がるかを「影響度」として算出します。
影響度の計算式
- 測定の精度(合成誤差) = √(対象物の要求精度² + 測定器の精度²)
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影響度 = 測定の精度 ÷ 対象物の要求精度(公差)
影響度を計算してみた
例題、対象物の要求精度を±0.5のときの測定器の精度は?
*初めに測定器の精度を計算 → 対象物の要求精度(公差): 測定器の精度(誤差) = ? : 1
①-① 2対1のとき
±0.5mm(要求精度) : 𝒙(測定器の精度) = 2 : 1
測定器の精度は±0.250mm
②-① 4対1のとき
±0.5mm(要求精度) : 𝒙(測定器の精度) = 4 : 1
測定器の精度は±0.125mm
③-① 10対1のとき
±0.5mm(要求精度) : 𝒙(測定器の精度) = 10 : 1
測定器の精度は±0.050mm
*次に測定の精度を計算 → 測定の精度 = √(対象物の要求精度² + 測定器の精度²)
①ー② 2対1のとき
測定の精度 = √(0.5² + 0.250²)
測定の精度 ≒ 0.559
②ー② 4対1のとき
測定の精度 = √(0,5² + 0.125²)
測定の精度 ≒ 0.515
③ー② 10対1のとき
測定の精度 = √(0.5² + 0.05²)
測定の精度 ≒ 0.502
*最後に影響度を計算 → 影響度 = 測定の精度 ÷ 対象物の要求精度(公差)
①-③ 2対1のとき
影響度 = 0.559 ÷ 0.5
影響度 ≒ 1.118
②-③ 4対1のとき
影響度 = 0.515 ÷ 0.5
影響度 = 1.030
③-③ 10対1のとき
影響度 = 0.502 ÷ 0.5
影響度 = 1.004
上記の結果を一覧にします
| 理論 | 対象物の要求精度(mm) | 測定器の精度(mm) | 測定の精度(mm) | 影響度 |
| 2対1 | ±0.5 | ±0.250 | 0.559 | 1.118 |
| 4対1 | ±0.5 | ±0.125 | 0.515 | 1.030 |
| 10対1 | ±0.5 | ±0.050 | 0.502 | 1.004 |
この表をみると、2対1、4対1、10対1では、影響度(最終的な測定結果のばらつきの幅が、元の要求精度に対して何倍になったかの値)の数値が異なることが分かります。
では、各理論で測定した場合に、最終的な測定結果のばらつきの幅が、もともとの要求精度(公差)に対してどのくらい広がるかを数値化(mm)してみます。
| 理論 | 影響度 | 測定器の誤差が加わったことで、どれだけの「ばらつきの幅」が増加したか(mm) |
| 2対1 | 1.118 | ±0.059(0.559-0.5=0.059) |
| 4対1 | 1.030 | ±0.015(0.515-0.5=0.015) |
| 10対1 | 1.004 | ±0.002(0.502-0.5=0.002) |
*対象物の要求精度(公差)= ±0.5mmの場合です
結果のまとめ
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2対1理論
測定器の誤差が大きく(±0.059増加)、測定結果のばらつきが要求精度に対して大きくなり、95%の信頼水準の確保が難しくなる可能性があります。
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4対1理論
測定器誤差の影響は少なく(±0.015増加)、95%の信頼水準を確保でき、コストの負担も低く抑えられるので、一般的な品質管理で推奨できます。
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10対1理論
測定器誤差の影響は小さい(±0.002増)ため、非常に高い信頼性を確保でき、理想的です。しかし、高精度な測定器と、それに伴う測定技術と環境が必要となり、コストの負担が大きくなります。
参考
*測定値のばらつきや測定の不確かさを考慮して測定する方法に「10対1理論」があります。
下記の記事で簡単にふれています。
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測定値のばらつきや矛盾は測定の不確かさにある【10対1理論の考え】
続きを見る
ポイントまとめ
それでは、要求精度に応じた測定器を選ぶ方法について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 測定器は「4対1理論」に基づいて選定
- 計算方法は【 対象物の要求精度(公差): 測定器の精度(誤差) = 4 : 1 】
- 「4対1理論」に適合する測定器は、別途計算する必要があります
- 精度と測定器不確かさの違いを理解したうえで、計算すること
以上4つのポイントです。
*測定に関する勉強におすすめの本を紹介します
関連記事:【精度測定/精度調整】
以上です。