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装置の条件出しは、地道に一つ一つの条件を実験して測定データを記録し、そして測定データを分析して条件の絞り込みをする作業です。
この作業は、労力が半端ないので「できればやりたくない」と思っている方は多いと思います。
ということで今回は、最小限の実験で条件出しをおこなう方法を紹介しようと思います。
装置の条件出しは直交表を使えば効率的
装置の条件出しの方法
たとえば、加工装置、加熱装置、研磨装置など、製品(ワーク)に何かしらの影響を与える装置があったとき、その装置には温度・圧力・時間などの設定条件があり、これらの条件の組み合わせによって、製品に与える影響が変化します。
その条件は、「要因(設定項目)と水準(設定値)の組合せの数」だけあるため、どの条件が最適なのか?を「条件出し」と呼ばれる作業で導き出さなければなりません。
製品に与える影響はいろいろ
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装置の設定(パラメータ)
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工場の環境(外乱)
このような要因によって、何十通り・何百通りの条件が考えられますが、そのすべてを試すことは、途方もない労力と時間を要するので現実的ではありません。
そこで、装置の条件出しを時短する方法をご紹介しようと思います。
装置の条件出しをする方法
- 準備
データ取りの「目的」と「条件」を決める - データ取り
条件は直交表での組合せで実行しデータ取りする - 要因の影響度を計算
得られたデータの平均値を比べて要因の影響度を調べる
この方法の中で、重要なポイントは、「直交表」です。
参考
装置の評価は下記の記事が参考になります
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機械装置の評価と分析【標準偏差と正規分布で確率を求める】
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直交表でデータ取りする条件組合せを決定する
直交表とは、統計学にもとづいた「偏りなくバランスの取れた実験パターン」の一覧表のことで、装置の条件の組合せが多数あった場合に、できるだけ少ない実験回数で、要因ごとの影響を独立して評価できるようになります。
別の言い方をすると、全ての条件で実験する必要はなく、直交表で指定された条件の実験だけをすれば、どの条件がどの程度結果に影響を与えているのか?を評価できる、ということです。
注意点としては、本来は全数の条件を実験したほうがいいので、直交表を使う場合は実験の労力が増加する、例えば16通り以上の場合から使うのがいいと思います。
*「直交」とは「お互いが独立して影響し合わない関係=独立している」という意味があります。
L9の直交表
このように各条件で実験したら、その結果を「データ取り」し、各要因の水準別のデータの平均を計算し、要因の影響度を調べます。
参考
直交表は要因の数と水準の数によって、多数のパターン表がありますので、自分の実験に適合する直交表は、下記のサイトで探してみてください。
測定データの平均から影響度を調べる
測定データが揃ったら、どの実験(条件)が最適なのか?を調べていきます。
要因の影響度を調べる
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各要因の測定データの平均値を求めて比較する
*この方法は詳細な分析はできませんが、私のように「難しい計算はできない」「そもそも分析する知識がない」といった方におすすめです。
例えばこんな方法
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各要因の平均値同士を比べる
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各要因の平均値と目標値を比べる
これにより、各要因(設定項目)の水準(設定値)を「いくつ」にしたら「結果」がどうなるのか?が見えてきます。
測定データと影響度
この分析方法は、難しい計算方法が必要ないので、手軽に条件の絞り込みが可能なのですが、その反面、この方法から見えてくることが「本当にただしいのか?」「矛盾が生じていないか」「そもそも、まったく見えてこない」といったことになることがあります。
その場合は、SN比と分散分析法を使うと、詳細な「ばらつきの度合い」と「影響の度合い」を計算によって分析ができます。*SN比の計算式は目的に応じて数種類あり、例えば≪SN比=10log₁₀(μ²÷σ²)≫があります。
興味がある方は「品質工学」を勉強してみてください。
参考
測定表は下記の記事が参考になります
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【測定表】測定と調査の結果をエクセルでデータ化するポイント【機械組立の基本】
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ポイントまとめ
それでは、装置の条件出しについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 装置の条件出しは直交表をつかえば最小限の実験数でOK
- 要因(設定項目)と水準(設定値)の組合せに適合した直交表をつかう
- 測定データを各要因の水準ごとに平均値を計算し、比較することで影響度が見えてくる
以上3つのポイントです。
*品質工学の勉強に最適な本はこちら
関連記事:【精度測定/精度調整】
以上です。